第18話 クリフォト コード"廃都東京メルトダウン" 2
二人は、休憩室を出て病院の中庭に出た。
空は天候とは別の理由で灰色だった。あのグロテスクな月は出ていない。敷地の様子は山北総合病院をそのまま廃墟に変えたかのようだった。
異なるのはむしろ、周囲の景色だった。
ひなたの知る限り、ここ一帯は山の上で、集合住宅やバス通勤をする人向けの団地があるだけだった。つまり自然と山と住宅しかないはずだ。
それが、まるで近代化された都市のように、いくつもの工場や建築物が遠方に立ち並んでいるのが見えた。
昼間なのに視界は薄暗くシルエット程度でしか分からないが、大小のパイプが付いた工場設備や、ガスタンクのような球体、煙突の群れ、並び立つ鉄塔が遠くの山並みを埋め尽くしている。
ここは廃墟だ、とひなたは思った。
見える景色、すべてに光が付いていない。とっくに稼働を終えて、何年も放置されたかのように、工場の群れは沈黙していた。
ひなたのスマホ、ずっと手に持っていたそれが、緑色の文字列を表示している。
『クリフォトに侵入成功。保護クリフォト コード"廃都東京メルトダウン"ID:u75np928dn8efrA75 位置座標:相模原工業地帯B-17 良き狩りを!』
「廃都東京?」うさぎが見せられたそれを読み上げた。
「ここ、神奈川だけど……」ひなたは言った。
マップを見ると、周辺の地形が表示されている。
緑色のピンがいま自分たちのいる所だろう。それを拡大すると、さらに青色のピンが立てられている。どうやら『協力』して侵入した魔法少女の現在位置も一緒に表示されるようだ。
「良かった。迷っても合流できそうだね。って、うさぎ、スマホは?」
「あ、あれ?」
うさぎのスマホは、変身した瞬間から消えていた。
ところが、うさぎが探す素振りを見せると、なんと虹色の光を伴ってスマホが目の前に出現した。うさぎは取り落しそうになりながらも、自分のスマホをキャッチした。
「く、空中から出てきた……!」
うさぎは目を白黒させながら、スマホが無事かを確認している。
ひなたはそれを見て、少し思案した。
「もしかして……」
ひなたは試しに自分のスマホを「空間に仕舞って」みた。自分の周囲にチャックのようなものがあり、それを開け閉めするイメージを頭に思い浮かべる。
ただそう考えるだけで、スマホはひなたの手元から虹色の光を伴って消失した。無事に仕舞えたようだ。
今度は逆に、「取り出そう」としてみた。スマホは虹色の光と共に、ひなたの掌に出現した。
「自分の持ち物は、出し入れできるみたい」
そして、ひなたは頭の中に、ぼんやりと自分の所持品が浮かんでくるのを感じた。スマホを見ると、『インベントリ』という画面が開かれている。
そこにはひなた自身の持ち物であるスマホがぽつん、と画面の左上にあった。
「ひなたちゃん、これ……」
と。うさぎが怯えながら、ひなたに自分の画面を見せてきた。
うさぎのインベントリにはスマホ以外にも、ファンタジーで敵役の山賊が使ってそうな無骨な武器が入っていた。
それは両側に刃の付いた銀色の巨大な斧――両刃斧。明らかに敵を両断し、屠るためのものだった。




