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魔法少女コヴェナント  作者: さんどまん
第二章:チュートリアル
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第16話 キャラクタープロフィール

 二人は駅前のロータリーに戻り、そこから山北総合病院行きのバスに乗った。


 うさぎは満腹になったおなかが緊張で気持ち悪くなってくるのを感じた。


 こんなことになるなら、腹八文目にしておけば良かった。そして隣に座り、にこにこと期待に満ちた顔でいるひなたを見て、さらに気が重くなった。


 流れに乗せられて着いて来てしまったが、うさぎはまだ肝心なことをひなたに言えていなかった。


「魔法少女を辞めるつもりである」と。


 コヴェナントのアプリを、二人で手探りで調べている瞬間は確かに楽しかった。


 しかし、うさぎの興味は部外者のそれであって、当事者になるつもりはこれっぽっちもないのだ。


 ウルサから教えてもらった情報をなるべく共有し、さっさと引退するつもりだった。


 それなのに、今は二人でクリフォトとかいう灰と化け物の潜む恐ろしい場所に向かおうとしている。


 ウルサの言葉通りなら、引退するためには「まずはレベル5に上げる」必要がある。


 だから、この行動自体は間違いではない。間違いではないのだが、何も分からないまま流されてしまっているこの状況がひどく恐ろしかった。


 そして、スマホを両手で持ってわくわくしているひなたに、余計なことを言って水を差すのも怖かった。


 うさぎが引退すると分かったら、ひなたは何て言うだろう……?


 と、そんな心配をしているうさぎに、ひなたが身を乗り出してきた。


「うさぎ、見て見て」


 ひなたはキャラクタープロフィールを開いていた。


『サンライズハート/Lr.1/ニューエラ/炎・光・無』


 画面の中央には、ひなたの顔をした魔法少女が立っていた。


 赤光のようなカーマインレッドのジャケット、インナーは白のノースリーブに太陽のような紋章が浮かんでいる。


 下はショートスカートと黒いレギンスだ。全体的な色味はオレンジと赤と黒で統一され、活動的なひなたに合った動きやすそうな衣装だった。


 両手には金色のガントレットと黒い指ぬきのグローブを付け、足は厚底のブーツを履いていた。ソックスには金糸が刺繍され、文字が光輝いている。


 ひなたのショートヘアはウルフボブのように広がり、色も太陽を模した赤と金色の二色になっていた。頭の天辺には、宝冠のようなカチューシャが付けられている。


 うさぎは思わず叫んだ。


「か、かわいい!! いや、かっこいい!! いや世界一かわいいよ!!」


「えっへっへ……いやぁ、照れますなぁ。ムーニーバニーも見せてよ~」


 うさぎは気おくれしながらも、ムーニーバニーのプロフィール画面を開いた。


「え、可愛い! こっちが良かった!!!!」ひなたが叫んだ。「うわ~。私、自認はこっち寄りなんだけどなぁ……」


「こ、交換しますか……?」


「そんなこと、できるの……? いや、うん。止めとこう。ほら、せっかく契約の主(パトロン)が用意してくれた衣装だもの。きっと一晩で用意してくれたんだよ」


 うさぎは、ウルサが徹夜で衣装のアイデアを出している姿を想像して笑ってしまった。


「それに、ムーニーバニーはうさぎ専用って感じがする。私もサンライズハートっていう名前、けっこう気に入ってるし」ひなたはそう言って、画面に視線を落とした。


 プロフィールの名前の横に書かれた文字を指でなぞった。


「このニューエラとか、炎とか光は何なんだろうね」


「あ、本当。よく分かんないから気にしてなかったけど……私はポストモダンって書いてある。無……」


「なんだろね。ゲームなら、属性かな? 炎属性、光属性、無属性」


 うさぎはひなたの炎・光・無を羨ましそうに見た。


 3種類もある。


 対してムーニーバニーの属性は無だけ……。魔法少女になっても、自分が無個性でつまらない女だと言われているような気分だった。どこかであの黒いガキが笑っているような気すらした。


 バスが大きく揺れ、アナウンスが続いた。


「次は山北総合病院前、山北総合病院前……」


 乗客のほとんどが降車ボタンを押した。そのおかげで、二人はアナウンスに気付かなくとも乗り過ごすことはなかった。

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