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5 甘い確信と求婚

公爵邸の応接室。


シャーロットは、そこへ招かれていた。


(大丈夫……今日は、お礼を伝えるだけ)

そう、自分に言い聞かせる。


だが。

屋敷に足を踏み入れた瞬間から――

一流のもてなしが始まっていた。


使用人たちの動きに無駄はなく、

空気さえ洗練されている。


「シャーロット伯爵令嬢。どうぞ」


扉が開かれる。

一歩、踏み入れたその先。


「……」


息をのんだ。


そこにいたのは。


国一番の美丈夫と名高い

ウィリアム・アヴェーヌ。


ただでさえ整った容姿に、さらに磨きがかかっている。


(……う)


思考が、一瞬止まる。


(ち、違うわ)


今日の目的は、そうではない。

焼き菓子の店を、教えてもらうこと。


それだけ。


「本日は、お招きいただき――」


「いや、こちらこそ来てくれて嬉しい」


言葉を遮るように、柔らかな笑み。


(近い……)


距離も、空気も、何もかもが近い。


「先日の焼き菓子は、本当に美味しくて……」

なんとか話を続ける。


だが。

視線が、熱い。


(な、なにかしら……?)


「シャーロット嬢」

「は、はい」

「気に入ってくれたかい?」


作り物ではない、安堵の笑み。


「安心した」

「……え?」

「婚約を打診した食事会に、来てくれなかっただろう」


静かに、言う。


(……あ)


そこでようやく。


“婚約の話が止まったまま”だったことを思い出す。


「体調に問題がないのならぜひ、

あの菓子を食べていってほしい」


「う……」


言葉が詰まる。


(だめよ)


ここで、また。


完食などしたら――


いつの間にか

テーブルには、ティーセットと焼き菓子が

用意されていた。


ぎゅっと、手に力が入る。


(どうするれはいいの…)


その時。


ふと、思い出す。

『食事とは、本来そうして楽しむものだろう』


あの言葉。


ゆっくりと、息を吸う。


「……いただきます」


ナイフを入れる。

小さく、一口。

「……ん」


ふわりと、表情がほどけた。


(やっぱり……)


その瞬間。


ウィリアムの目が、細く優しく微笑む。


「……やはり」

静かに、確信するように。


「君しかいない」


はっきりと、告げられた。


「シャーロット嬢」


まっすぐに、見つめられる。

逃げ場は、ない。


「私と、婚約してほしい」


甘く。

けれど、迷いのない声だった。

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