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食べる令嬢 貢ぐ公爵の溺愛事情  作者: シャルru


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14/16

14 妊娠編 何よりも君が大切

いつもの朝。


身支度を整え、仲良く二人で朝食へ向かう――

はずだった。


「…今日も…いい香り……」


そう言いかけた瞬間。

「……うっ」

シャーロットの顔色が、さっと青ざめた。


一歩、ふらつく。


「シャーロット!」 


次の瞬間には、ウィリアムが抱き上げていた。

そのまま、踵を返す。


「部屋へ戻る!」


完全に戦場の指揮官。


侍女たちは一斉に動く。

すぐにベッドを整え、カーテンを引き、空気を入れ替える。

完璧に整えられた寝台へ――


そおっとシャーロットをベッドにおろす。


「アリーナ、すぐに医者を」

そう言って、

自然にシャーロットの額に口付ける。

ウィリアムの手は、彼女の頬から離れない。


「シャーロット様、ただいまお飲み物を――」


アリーナは一瞬、固まった。


(温かいもの……?それとも、冷たいもの……?)

(吐き気なら冷たい?でも体調不良なら温める?)

(いや、これはもしや――もしや!)

思考が加速する。


その裏で。


有能な執事はすでに本邸に報告を飛ばしていた。


【シャーロット様、体調不良】


数分後。


「シャーロット!」


公爵夫妻、到着。


「気分はいかが!?大丈夫かしら…!?」


公爵夫人は、すぐさま見舞いの花を飾る。


その瞬間――


「……うっ……」

「撤去だ!!」

秒速で花瓶が部屋から消えた。


静寂。


全員の思考が一致する。


(これは。――間違いない)


そこへ。


「医師をお連れしました」


若い男性医師が入室。


シャーロットに一歩、近づこうとした

そのとき。


「この医者では駄目だ」

ウィリアムにより即却下。


「え?」


場が凍る。


「アリーナ。女医を呼べ」


「か、畏まりました!」

(私としたことが!何たる失態!)


アリーナ、前代未聞の全力疾走。


その間も。

「シャーロット……ああ…。心配だ。」

ウィリアムは、手を握ったまま離さない。

「私が代われるなら、いくらでも代わるのに」


甘い。重い。深い。甘い。重い。深い。


(確定ですわね)


甘いふたりの様子を眺めながら

公爵夫妻は手を取り合って確信。



その裏ではすでに――

・つわり対策食の研究

・オシャレマタニティウェアの開発

・ベビー用品の選定

・部屋割りの再編成

  そして乳母の面接…。


すべてが全力で始動していた。


そして女医の到着。

「…では診察を始めますので、男性の方は外へ…」


「却下だ」


即答。なぜ!?

皆の動きが止まる。


「苦しむシャーロットを残して部屋を出るなど、

       出来るわけがないだろう。」


(だめだこの方)


全員が思う。


「ウィリアム、それは――」

と、言いかけて


「母上」


ぴたりと遮る。


「我々は“普通の夫妻”ではないでしょう」


強い視線。


(知ってた)


その時。

「……ウィリアム様……っ」

シャーロットが、ふらりと揺れ――

「っ……」


その場で戻してしまった。


「すぐに湯あみの準備だ!」


再び抱き上げ、急ぎ浴室へ。

完全に一体化している。


その騒ぎの間に、別の女医が到着。

これまでの事情を聞き――


すっ。


メガネを直したかと思うと


「では先に確認をしましょう。」


冷静すぎる声。


「ご主人様が今まで、どれほど

奥様を愛し抜かれたかをお聞かせいただくか――

…診察か、どちらかお選びください。」


一同、凍る。


(う。…強い…)


この国一番の美丈夫に、夜の事情を自ら話せとは!


国最強の女医、ここに爆誕。


そこへ戻ったウィリアム。

シャーロットを、それはそれは丁寧に抱いている。


「……なるほど」

女医、全てを理解。


「…ではウィリアム様。…奥様をどれほど――」


「そんな大切な話を他人に話すわけがないだろう」


即、退室。


「……あ」


全員、悟る。


(この方、もしかして。気づいてなかった)


しばしの沈黙。

「……はぁ……」


公爵家一同、同時にため息。

その瞬間疲労、限界。


――その後。


正式に、妊娠が確認される。


「シャーロット……!」

「本当なのね……!」


歓喜と混乱が再び押し寄せる中。

ウィリアムはただ一人。

彼女の手を握り、静かに微笑んだ。


「……無理はするな。何よりも君が大切なんだ。」


その一言だけが、いつもと同じだった。


そして――


その日を境に、公爵邸はさらに騒がしく、

そして少しだけ、やさしくなったのだった

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