13 結婚編 目覚めたら国一番の美丈夫が眠っていました
目を覚ますと――
隣に、国一番の美丈夫が眠っている。
そんな日々にも、少しずつ慣れてきた頃。
「……結婚したら、君が美味しそうに食べる姿を、
毎日隣で見られると思っていたのに」
ウィリアムの低い声が、どこか拗ねたように響く。
彼は昇進し、月の半分を王城で過ごすようになっていた。
「……私も、淋しいですわ」
素直にそう返すと、胸の奥が少しだけ痛む。
食の話をするのは好き。
けれど、それを“わかってくれる人”でなければ、
どこか物足りない。
ウィリアムは、自身は少食ながら――
食への造詣は深い。
だからこそ、楽しいのだ。
昨夜は、久しぶりに帰宅して――
二人きりで、ゆっくりと過ごした。
新作のパイを分け合い、
珍しい果実を口に運び、
ただそれだけのことが、
どうしようもなく甘い時間だった。
「……毎日、昨夜のように過ごせたらいいのに」
気づけば、そんな言葉がこぼれていた。
その瞬間――
背後から、力強い腕が伸びてくる。
「シャーロット」
耳元で、低く囁かれる。
「淋しい思いをさせてすまない」
ぎゅっと抱き寄せられる。
「……私も、離れたくない」
その一言で、胸がいっぱいになる。
※※※※
そんな二人を…
侍女アリーナは
部屋の隅でずっと控えたまま、
【通常運転】として受け止めていた。
「ウィリアム様、シャーロット様。
今朝はどちらでお食事を?」
にこやかに問いかける。
仲睦まじい主に仕えることが、
どれほど恵まれているか――
彼女はよく知っていた。
「ガゼボでいただきたいですわ」
シャーロットの言葉に、
「いいね。奥様のお望みのままに」
そう言って、自然に頬へ口付けるウィリアム。
(本日も絶好調……現在の糖度は 【2】)
アリーナは心の中で静かに頷いた。
ガゼボには、やわらかな朝の光が差し込んでいる。
準備を整え終えた頃、
手を繋いだ二人が現れた。
「急な準備なのに、助かるよ。アリーナ。」
ウィリアムの一言に、疲れなど吹き飛ぶ。
(いえ、この特等席をいただけるなら……)
むしろ望むところである。
少し離れた位置で控えながら、
そっと視線を向ける。
隣り合って座る二人。
ナプキンをかけ、料理を切り分け、
お互いの口元へ運ぶ。
「ウィリアム様。あーん。ですわ。」
(あれは、久々の公での食べさせ合いっこ。)
そして――
「シャーロット。口を、あけてごらん。
あーん。」
「あ…あ。シャーロット…。」
その幸せそうな、可愛いらしい一口に、
ウィリアムの喜びが天上まで達したようだ。
「美味しいですわ」
きらきらとした瞳で微笑むシャーロット。
それを見つめるウィリアムの眼差しは、
これ以上ない宝物を愛でるようだった。
(……尊い…。糖度MAXいただきました。)
アリーナは静かに拳を握る。
この光景を見守る権利が与えられるなら、
どんな仕事でも完璧にこなしてみせる。
(どうか――)
心の中で祈る。
(旦那様の王城勤務が、減りますように。)
その願いは――
この場にいる三人、すべてに共通するものだった。




