11 理解と独占
「実は私……。
とても香りの強い食べ物が好きで……。」
二人きりの部屋で、静かに語りはじめる。
「落ち込んだ時や、元気になりたい時に……どうしても、それを食べたくなるのです。」
ウィリアムの肩が、わずかに揺れた。
シャーロットの声が震える。
「お会いできなかったのは……そのせいで……。
……どうしても、嫌われたくなくて……」
言い終えた瞬間、ぎゅっと手を握りしめる。
(全部……終わったわ)
静寂が落ちる。
ウィリアムは何も言わない。
ただ、じっとシャーロットを見つめている。
その瞳は――もう“幻覚”を見るものではなかった。
(やっぱり……だめ……)
指先が、すっと冷えていく。
「あの……」
耐えきれず、背を向けかけたその瞬間。
ぐっ――
強く腕を引かれた。
(あ……)
気づけば、ウィリアムの腕の中だった。
逃がさないように、強く抱き寄せられる。
「ウィリアム様……?」
顔は見えない。
けれど――伝わってくる。
ドクン、ドクン、と。
彼の鼓動。
自分と同じくらい、速い。
「どうして……」
低く、押し殺した声。
「そんなことで、離れようとする」
ゆっくりと身体を離される。
目が合う。
息が触れそうな距離。
「私が――そんなことで、君を嫌うはずがないだろう」
その声は、かすかに震えていた。
「どれだけ……どれだけ君に会いたかったか……」
再び、強く抱きしめられる。
「避けられているのかと……そう思って……
どれだけ、堪えたか……」
その言葉に、胸が締めつけられる。
「ごめんなさい……私……怖くて……」
「……ああ……そうだったのか……」
ゆっくりと、腕の力が少しだけやわらぐ。
そして――
そっと顔が近づく。
視線が重なる。
逃げ場なんて、もうどこにもない。
「話してくれて、ありがとう」
低く、優しく。
「シャーロット。――もう、あなたを離さない」
次の瞬間。
唇が、そっと重なった。
触れるだけの、優しい口づけ。
シャーロットは、静かに目を閉じる。
――そして、もう一度。
今度は、少しだけ深く。
ぬくもりを確かめるような、キス。
怖かったはずなのに。
胸の奥から溢れてくるのは――
どうしようもないほどの、幸せだった。




