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第12話

「分かりました」

「リリアが1体、悠真が1体だ。俺は見守る」

レオンが作戦を立てた。

リリアが杖を向けた。

「ファイアボール」

人の頭ほどの火球が飛んでいく。1体のゴブリンに直撃した。

もう一体が慌てて逃げようとする。

「悠真、行け!」

俺は走り出した。ゴブリンが棍棒を振り上げる。

(落ち着け。敵の動きを見ろ)

横に避けて、ゴブリンの懐に入った。介護で培ったバランス感覚が、ゴブリンの重心を教えてくれる。

相手の脇の下に手を入れ、軽く持ち上げるようにして重心を崩した。

ゴブリンが慌てる。そのまま回転させるように誘導すると、自分の勢いで前のめりに倒れた。

「今だ」

剣を振り下ろす。

初めての討伐。手が震えている。

「見事だ」レオンが感心したように言う。

「あの動き、昨日の大男にやったのと同じか」

「はい。重心を崩して、相手の力を利用しました」


 北東に移動。3体のゴブリンが、街道から奪ったらしい荷物を漁っていた。

今度は3人で同時に攻撃した。あっという間に片付く。

「これで5体討伐完了だな」

「でも、おかしいですね」リリアが首を傾げた。

「ゴブリン、痩せていませんか?」

言われてみれば、確かに肋骨が浮き出ている。

「餓えているのか」レオンも気づいた。

「でも、なぜ?森には食料があるはずだ」


 その時、森の奥から異臭が漂ってきた。腐敗臭だ。

慎重に匂いの元を辿ると、小さな空き地に出た。

そこには、大量のゴブリンの死体があった。少なくとも30体はある。

「これは……」

「ゴブリン同士の争い?」リリアが杖を構える。

「いや、違う」レオンが死体を調べた。

「焼け焦げている。それに、石化した個体もある」

「複数の魔法攻撃?」

「いや、これは……」レオンの顔が青ざめた。

「息だ。炎のブレスと、石化のブレス」

突然、森が静まり返った。

鳥の声が止み、風さえも止まったような静寂。

「まずい」レオンが剣を構えた。

「逃げるぞ。今すぐ」

上空から羽ばたきの音が聞こえた。巨大な影が木々の上を覆う。

そして、空き地に降り立った。

体長は5メートルはある。灰色の鱗、コウモリのような翼、そして蛇のような長い首。

「バジリスク……」リリアが震え声で呟いた。

バジリスク。Aランクの魔物。石化のブレスと猛毒を持つ、ドラゴンの亜種。

「なぜこんなところに」

「縄張り争いか。ゴブリンを追い払って、この辺りを支配しようと」レオンが冷静に分析するが、額には汗が滲んでいる。

「Bランクの俺たちでは無理だ」

バジリスクがこちらに気づいた。縦に裂けた瞳孔が、俺たちを捉える。

「散開しろ!」

レオンが叫んだ瞬間、バジリスクが口を開いた。

灰色の霧が吐き出される。石化のブレスだ。


 俺たちは必死で横に飛んだ。灰色の霧が通り過ぎた場所の木々が、瞬時に石と化した。

「近づけない」

レオンが歯噛みする。

「リリア、牽制しろ」

「はい。『フレイムランス』」

炎の槍が3本形成される。これがBランク魔法使いの実力か。

槍が飛ぶが、バジリスクは翼で防いだ。鱗は炎を弾く。

「効かない……」

その時、俺は『ケアビジョン』を発動させた。


【バジリスク Aランク魔物】

【弱点 左目(視界不良)】

【攻撃パターン 石化ブレス→炎ブレス→尾撃】


(左目が白く濁っている。古い傷跡だ)

「レオン、リリア!」俺は叫んだ。

「左側が死角です!左目が見えてない!」

「よくわかったな」レオンが頷く。

「でも、近づけなければ意味がない」

バジリスクが再び口を開く。今度は炎のブレスだ。

「散開!」

炎が地面を焼く。熱風が頬を撫でた。

「このままじゃジリ貧だ」レオンが焦りを見せる。

「俺が囮になります」俺は前に出た。

「何を言っているの!」リリアが止めようとする。

「俺は、攻撃が読めます。信じてください」

リリアが決意を込めた表情で頷いた。

「分かったわ。悠真さんを信じる」

俺は走り出した。バジリスクの注意が俺に向く。

石化のブレスが来る。右に跳んで回避。

続いて炎のブレス。地面を転がって熱風をやり過ごす。服が焦げる臭いがした。

そして尾撃。巨大な尾が横薙ぎに振られる。俺は滑り込むように地面に伏せた。尾が頭上を通過していく。

「今だ!」俺は叫んだ。

レオンが左側から突進する。バジリスクが気づいて首を振るが、左目が見えないため反応が遅れた。

レオンの剣が左足の腱を切り裂く。

「ギャアアア!」バジリスクが苦痛の叫びを上げた。

「悠真、魔法を!」俺は全魔力を込めた。

「ファイアー!」小さな火球だが、傷口に撃ち込んだ。

バジリスクが激痛で暴れる。尾が振り回され、レオンが吹き飛ばされた。

「レオン!」

「大丈夫だ! 続けろ!」

リリアがさらに魔法を重ねる。

「『アイスランス』」

氷の槍が左目の傷跡に突き刺さった。

「今よ! みんなで!」

「ファイアランス!」リリアが叫ぶ。

俺は残った魔力を振り絞った。

「ファイアボール!」

レオンは剣を構えて突進した。

炎の槍と火球、そして剣撃が同時にバジリスクの左側面に叩き込まれた。

さすがのバジリスクも、この集中攻撃には耐えられなかった。

「グオォォォ……」巨体が倒れる。だが、まだ息がある。

「とどめを」レオンが剣を構えるが、バジリスクが最後の力で首をもたげた。

石化のブレスを吐こうとしている。

(まずい、避けられない)

その瞬間だった。

「『バリア』!」リリアが杖を掲げた。

透明な壁が現れ、灰色の霧が障壁に当たって霧散する。

「今です!」

レオンが跳躍し、剣を振り下ろした。刃がバジリスクの首に深く食い込む。

バジリスクが動かなくなった。

「やった……」俺は膝をついた。魔力を使い果たして、立っていられない。

「悠真さん!」リリアが支えてくれる。

「大丈夫です。ちょっと疲れただけ」

「無理もない」レオンが近づいてきた。

「初陣でAランクの魔物相手とは……正直、運が良かった」

「でも、倒せた」

「ああ。悠真がいなければ、やられていた」

レオンがバジリスクの牙を抜き取る。討伐の証拠だ。

「これは……ギルドが大騒ぎになるな」

「Fランクがバジリスク討伐なんて、前代未聞よ」

リリアが苦笑する。

「訂正する」レオンが真剣な表情で言った。

「悠真、お前は只者じゃない。その洞察力と勇気……冒険者の才能がある」

夕日が森を赤く染める中、俺たちは村への道を歩いた。

張り詰めていた気が緩んだのか、足元がふらつく。

レオンが俺の腕を肩に回して支えてくれた。

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