第11話
「では、最初の依頼を受けましょう」
リリアが提案した。
3人で依頼ボードに向かう。
ボードの前では、先に来ていた冒険者たちが話していた。
「討伐依頼、少なくなったな」
「最近は魔物が減っているんだ。この調子だと、依頼の取り合いになりそうだ」
「魔物が減っているんですか?」俺が思わず問いかけると、一人の男が振り返った。
「ああ、ここ最近パッタリだ。俺は隣の街に移るよ」
男は肩をすくめて立ち去った。
「ベテランの人が受けるような依頼は減っていますけど、Fランクの依頼なら結構ありますね」リリアがボードの下の方を指さした。
「薬草採取、ゴブリン討伐、護送……、最初は薬草採取がおすすめです」 リリアがアドバイスしてくれる。
「戦闘も少ないし、報酬もそこそこ」
「いや、ゴブリン討伐の方が」
レオンが口を挟む。
「戦闘経験を積むべきだ」
「でも、悠真さんはまだ」
「だからこそ、早めに慣れる必要がある」
二人が言い合いを始めた。
(仲が良いのか悪いのか。)
「悠真さんは、グレイウルフを素手で倒したんでしょう?ゴブリン相手なら大丈夫よ。Bランクの二人がついているんだし」
マーサがのんびりと提案した。
「当然だ」レオンが胸を張る。
「それは……そうですね」リリアが納得した。
「ゴブリン討伐は村の北の森だから、今日は村に戻って休んで、明日から始めたら?」
全員が納得した。俺たちはゴブリン討伐の依頼を受けることにした。
「次は準備を整えましょう」
リリアが提案した。
「悠真さんの装備を」
「そうだな。最低限の防具は必要だ」
レオンも同意する。
「さあ、買い物に行きましょう!」
リリアが嬉しそうに言った。
「悠真さんに似合う装備、一緒に選びますね」
「はい、ありがとうございます」
レオンが複雑な表情で俺たちを見ている。
とりあえず、装備を整えることが先決だ。俺たちは武具屋へと向かった。
道中、マーサが昔話を始めた。
「あの頃は、毎日が冒険だったわ」
「マーサ様の伝説は有名ですよ」
レオンが尊敬の眼差しで見つめる。
「ドラゴンを一人で倒したとか」
「あれは大げさよ。仲間がいたもの」
「でも、最後の一撃は」
「運が良かっただけ」
謙遜するマーサだが、その実力は本物だ。さっきの結界がその証拠だ。
武具屋に着くと、店主が驚いた顔で出迎えた。
「マーサ様!? お久しぶりです!」
「あら、ジョージ。元気そうね」
ここでも知り合いらしい。さすがは元Sランク冒険者だ。
「新人さんの装備を見繕って」
「承知しました!」
店主は張り切って、俺に合いそうな装備を次々と出してきた。
革の胸当て、腕甲、脚甲。どれも初心者向けだが、作りはしっかりしている。
「これなんてどうです?」
リリアが革の胸当てと腕当てを持ってきた。
「動きやすそうだし、悠真さんに似合いそう」
「確かに良さそうだ」
試着してみると、意外としっくりきた。元の世界では着たことのない装備だが、不思議と違和感がない。
「かっこいいです……」リリアが小声で呟いた。
レオンがむっとした顔になる。
「脛当ても必要だ」
「悠真さんは足を使って動くから、邪魔になるわ」
「安全が最優先だ」
「動けなくなったら意味がないでしょう」
また二人の議論が始まった。
(本当に元パートナーなんだな)
結局、リリアの意見が通った。革の胸当てと腕当て、それに剣。
「さあ、これで準備完了ね」
マーサが真剣な表情になった。
「悠真さん、リリアをよろしくお願いします」
「もちろんです」
レオンが割り込んできた。
「リリアは俺が守る」
「あら、頼もしいわね」
マーサがクスクスと笑った。
「でも、リリアも強いのよ?」
「知っています」
レオンは残念そうに答えた。
宿屋に戻ると、老人たちが興奮した様子で待っていた。
「悠真! 本当か!?」
「マーサが魔法を取り戻したって!」
「街に行った商人から聞いたぞ!」
「はい、本当です。ギルドで結界魔法と治癒魔法を使いました」
老人たちがどよめいた。
「やっぱり悠真のおかげだ」
「俺たちも元気になったしな」
「いえ、マーサさん自身の力です」
俺は冒険者になったことも報告した。
「悠真が冒険者か!」
「気をつけるんだぞ」
「怪我したら、すぐに帰ってこい」
まるで家族のような温かさだった。
夕食は宿でみんなで食べることにした。
料理が来るまでの時間、マーサが嬉しそうに魔法の練習をしていた。小さな光球を作っては消し、作っては消し。
「楽しそうですね」
「ええ、とても」
「悠真さん」
リリアが近づいてきた。
「明日、頑張りましょうね」
「はい、よろしくお願いします」
「私、悠真さんと冒険できて嬉しいです」
彼女の笑顔は、夕日に照らされて輝いていた。
(なんだか、照れくさいな)
「おい、作戦会議をするぞ」
レオンが割り込んできた。
「ゴブリンの習性について、教えてやる」
「ありがとうございます。お願いします」
翌朝、俺は緊張で早く目が覚めた。窓の外はまだ薄暗く、霧が村を包んでいる。
(ついに初めての冒険か)
革の防具を身に着ける。昨日買ったばかりでまだ硬いが、これが冒険者の証だ。剣を腰に差し、荷物を確認する。
階下に降りると、リリアがすでに待っていた。魔法使いのローブに杖を持ち、準備万端だ。
「おはようございます、悠真さん」
「早いですね」
「悠真さんこそ。緊張しています?」
「正直、少し」
「大丈夫ですよ。私たちがいますから」
扉が開いてレオンが入ってきた。銀色の鎧が朝の光を反射している。
「遅くなった」
「ちょうどいい時間よ」
村の老人たちが見送りに出てきてくれた。
「気をつけてな」
「無理はするなよ」
マーサが前に出てきた。
「みんな、頑張って」マーサが優しく微笑む。
「うん!」リリアが元気よく答えた。
「任せてください」レオンが胸を叩く。
「行ってきます」俺も頷いた。
霧の中を歩きながら、レオンがゴブリンについて説明してくれた。
「昨日も言ったが、ゴブリンは基本的に臆病だ。単体なら逃げることが多い」
「でも、群れると危険なんですよ」リリアが補足する。
「今回の依頼は、ゴブリンの討伐です。最近、隣の村への街道で商人や旅人を襲うようになったそうで」
俺は依頼書を確認した。討伐数は五体。報酬は銀貨三十枚。
「街道で襲撃?」
「ええ、森に潜んで待ち伏せするらしいわ」リリアが説明する。
「単独の旅人なら格好の獲物ですから」
「Fランクにしては報酬がいいな」レオンが意外そうに言う。
「商人組合からの追加報酬があるらしくて」
北の森まで一時間。霧が晴れ始めた。
「ここからは警戒して」
レオンが剣を抜いた。俺も短剣を構える。
「探知魔法をかけます。『サーチ』」
リリアの杖から薄い光の波が広がった。
「北東に3体、西に2体います」
「まずは西の2体から片付けよう」
森の中は薄暗く、朝の光も木々に遮られていた。
茂みの向こうに、緑色の小さな影が見えた。ゴブリンだ。身長の胸あたり。粗末な棍棒を持っている。
「2体だけだな」レオンが小声で確認する。
「はい」
「たった2体だぞ」
「……はい」
「……手本お願いします」
「いや、最初から参加しろ。Bランクの俺たちがついている。怖がることはない」
リリアも頷く。
「そうですね。私たちなら、いざとなれば簡単に片付けられます」
(えっ、いきなり)




