第23話 反撃開始っ!!
私は、ローレンシア皇帝とともに、状況を殿下に説明した。
ローレンシア軍がここにいるのは、侵略のためではなく、ローレンシア国内のタカ派、造反者を捕らえるためだったこと。
造反者たちは、ルティアナの独立を快く思ってないこと。ルティアナを攻撃し、滅ぼすつもりだったこと。
砦にいる辺境村の人たちは、女性たちを人質にとられて、仕方なく将軍に従っていること。
そして、その造反者たちを国内に招き入れるための、協力者がいたこと。
「勝手に越境したことは、申し訳ないと思っている。だが、奴らを捕らえるため、どうしても渡河する必要があった」
ローレンシア皇帝は、そう言ってアッサリと頭を下げた。一瞬周囲にいた臣下がざわついたが、皇帝自身はあまり気にしてないようだった。
「いえ、こうしてルティアナの安全を守ろうと動いてくれたわけですから、こちらも感謝いたします」
殿下も頭を下げる。
これでおあいこだ。
「それより…。その越境した造反者たちは、すべて捕らえたのですか⁉」
「ああ。それは問題ない」
互いに顔を上げ、言葉を交わす。
「それより、問題なのは…」
二人で頷き合う。
――ルティアナを滅ぼしたいローレンシア人を、国内に招き入れた人物がいること。
おそらく、メリクリオス将軍はその一派なのだろう。ローレンシア軍と自分とで、殿下を挟み撃ちにするつもりだったみたいだし。そのあたりは簡単に予測がつく。
独立ばかりのルティアナを、ローレンシアに売り飛ばす人物がいる。
それが問題なのだ。
「まずは、あの将軍を捕らえて話を聞くしかなさそうだな」
ローレンシア皇帝の言葉に、殿下が頷く。二人とも、意見は一致しているらしい。
「砦攻略に、人手が必要なら助力は惜しまないが、どうする!?」
そう提案するローレンシア皇帝の目は笑っている。どっちかというと、この状況、楽しんでない⁉
「あの…」
なんとなく、昨夜から気になっていたことを訊ねる。
「どうして、そこまで手伝ってくれるんですか⁉」
造反者を捕らえるためって言ってたけど、せっかく越境したんだし、このままルティアナ王都を攻めても問題ないのに。
ルティアナが混乱してる今、そのチャンスはいっぱいあるのに。
殿下に手を貸してくれるっていうのは、どういうことなんだろう。
「ふむ。なかなか真っすぐにモノを訊ねる娘だな」
グイッと皇帝が身を乗り出す。ジッと見つめられると、どうにも恥ずかしい。
「疑問に思うのもわからないでもないが…。いいだろう、教えやる」
照れてると、皇帝が離れてくれた。そして、ちょっと身をそらして。
「金がない」
………は!?
何、その理由。
キョトンと目を丸くする。
金!? カネ!? かね!?
「今のローレンシアには、金がない。戦争をするだけの国庫のたくわえがないのだ」
いや、それ、ふんぞり返って言うこと!?
「長年の戦争で、金が尽きた。増税すればなんとかなるかもしれないが、それでは暴動に発展してしまう」
あけすけにモノ言う皇帝に、周囲が完全に慌てふためいてる。
「だから、隣国となったルティアナには、我らの財源が潤うまでは、安定していてもらいたいのだ」
つまり。
戦争するだけのお金が溜まるまでは、生き残っててね。お金溜まったら、戦争するからね…ってこと!? だから、今は戦争する気がないし、戦争をふっかけようと動いた連中を捕らえるってことですか⁉
「それに、戦うだけが戦争ではない。交易によってルティアナから奪うことも出来る」
それは、金でありモノであり。商売も一つの戦争なのだ。
「もちろん、その途中でルティアナが隙をみせれば、容赦なく攻め込ませてもらうが、殿下は、そうやすやすとみせてはくれないだろう!?」
当たり前だ。誰が、はいそうですかと、隙をみせて国を滅ぼさせるか。
「ということだ。理解できたか⁉」
「え、あ。はい。ありがとうございます」
頭を下げると、皇帝がカラカラと笑った。お付きの人たち、頭抱えてるよ。あーあ。
「殿下もご納得いただけたかな⁉」
皇帝が殿下にも視線をむける。
「はい」
殿下も微妙に固まっていた。まさか、そこまで内情を説明されるとは、思ってなかったみたい。
「では、早速、砦攻略の作戦会議を始めるとするか」
完全にローレンシア皇帝のペースに巻き込まれてる。
だけど、なんだろう。イヤな気分じゃない。
敵になるかもしれない人物だけど、不思議と嫌いにはなれなかった。
殿下と皇帝が立てた計画はこうだ。
1.砦の正面に軍を配置する。しかし、砦に攻撃はしかけない。軍はあくまで囮。
2.その間に、私の使った坑道から、砦内部に侵入。
3.人質にされた女性たちを助け、男たちを将軍から解放する。
4.中から跳ね橋を下ろし、門を開ける。
5.それを合図に、軍が突撃!! 首謀者である将軍を捕らえる。
「この作戦の要は、坑道を行き、門を開けることだ。女性たちを救出するのと、門を開けるのと。二つの人員が必要となるな」
書き起こされた図面に、殿下が唸うなる。
「女性たちの塔へは、ボクが案内します」
自分から立候補した。
「塔の入り口は覚えてますから。それに、坑道のなかも」
「レオ…」
殿下が目を見張る。
あ、また危険だって怒られちゃう⁉
でも、誰かが道案内しなくちゃいけないし。知ってるのは私だけだし。
「安心しろ、アル。俺がついていく」
グワシッと、背後からバルトルトさんに羽交い絞めにされた。
…うおうっ!!
「僕もついてくよ。レオくんは任せなよ、アル」
イリアーノさんに髪をクシャワシャッと撫でられた。
ちょっと、二人とも。私の扱い、ヒドくない!?
「バルトルト、イリアーノ…」
殿下が静かに目を伏せた。
「頼む」
再びこっちを見た殿下に迷いはない。短く告げられただけだ。
「うむ」
「お任せあれ」
二人らしい返答。
「あのっ、ボクもガンバリマスッ‼」
私もムンッと力こぶを作ってみせる。




