表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/28

第17話 いざ、出陣ッ!!

 ――何も、戦場までついていかなくても。

 

 案の定、戦の話を聞いた伯母から心配顔で止められた。

 ――殿下のお子を身ごもれとはいいましたけど、戦争についていくことはないでしょう。

 戦場で、子を作ることも出来るかもしれないけど、それよりも、伯母として、姪を心配する気持ちが勝っているのだろう。

 その気持ちはありがたい。やっぱ、肉親なんだなって思う。

 けど。

 「私、殿下をお支えしたいんです」

 キッパリと伯母に告げた。


 一万の軍は、ほぼ騎兵で構成されていた。

 この戦は迅速な動きが求められる。糧食隊など、騎馬ではないものもいるけど、それはほんの一部。

 もちろん、私だって、愛馬アレアートに乗って、出陣っ!! なんだけど。

 (うう、お尻痛い…)

 出陣したことを後悔しそうなほど、痛い。

 シャキッと乗ることは難しい。

 幸い、辺境までは街道を行くわけで、難しい山越えとかはないから、なんとかなるけど。

 それでも、ウッカリすると置いていかれそうなほど遅れてしまう。

 「今からでも遅くない。王都に戻れ」

 そんなセリフを殿下に言われないためにも、必死でアレアートに乗る。アレアートは、私にはもったいないぐらいいい子で、下手な私をよくフォローしてくれた。兄である、殿下の馬がいるから、それについて行きたくて、フォローしてくれてるのかもしれないけど。

 国境までは、この行軍で二日はかかる。

 一日目の夜は、途中の草原で一泊ということになった。

 次々に天幕が張られ、糧食隊が食事の支度を始める。

 アレアートにタップリ揺られて、もうグッタリだけど、そういうことは言ってられない。  

 「今からでも~」と言われないためにも、殿下のためにもガンバラねば‼

 殿下の馬(アクイラという)と、アレアートに水と飼い葉を与えてブラッシング。

 糧食隊から食事を受け取って、殿下のいる天幕へ持っていく。

 「失礼します」

 私が天幕に入ると、そこにいたのは殿下だけだった。

 床に広げた地図を、難しそうな顔で見つめている。

 「殿下…⁉」

 「ああ、レオか。すまない、考え事をしていた」

 殿下が少し肩の力を抜いた。

 「ローレンシアがどこから攻めてきているのか。イロイロ考えておこうと思ってな」

 軍議はすでに、イリアーノさんたちと終えている。だけど、殿下はそれ以外にも考えたいと思ってるらしい。

 「ローレンシアが正攻法で攻めてくるのなら、この国境の橋を渡るだろう」

 パンッと地図の橋を叩かれる。橋は、砦の下流、街道に沿った場所に設けられている。

 「しかし、すでに、渡河(とか)は済ませてる可能性もある。橋を使わない可能性だって捨てきれない」

 だとすれば、どこから川を越えるのか。

 「あの中州も渡河の場所として最適だが、橋同様、隠密に行動するなら、村に近くて見つかりやすい」

 夜陰に乗じて。というなら、あの中州は村に近いので不適格だ。

 「だとしたら、この、上流はどうでしょう」

 砦から遠く、街道からも大きく外れ、それでいて川が蛇行していて流れが緩やかそうだ。

 ちょうど、そのあたりには両岸に森がある。姿をひそめるにも、うってつけそうだった。

 「そこも、候補だな」

 私の案に、殿下が頷いた。

 「どっちにしろ、渡河させないのが一番だが、今、敵がどこにいるかわからないからな。あらゆる場合の対応を考えておかなくてはいけない」 

 「はい」

 イリアーノさんの戦術授業でも聞いている。「想定外」という言葉は、戦場では許されないのだと。あらゆる場面を想定できずにいれば、必ず困ったことが起きる。起きてから、「考えてなかった」では、損害も大きく、取り返しがつかない。

 「それは、夕メシか⁉」

 不意に、殿下が口調を変えた。重くなった空気を変えたいらしい。

 「え!? あ、はい。糧食隊でいただいてきました」

 簡単なシチューと、パン、チーズ。リンゴ。

 今日はまだ、簡単でも炊事ができるから、温かいものが食べられる。

 「毒見…しますか⁉」

 「いや、いい。レオが全部食べてかまわない」

 え、でも…。

 「食欲があまりなくてな」

 困ったように、殿下がお腹をさすった。そして、再び地図に視線を落とす。

 おそらくだけど、襲撃されたかもしれない村や砦を心配しているのだろう。昨夜からずっと張り詰めた表情をしている。

 だけど、このまま何にも食べないでは、殿下の身体がもたない。

 (こうなったら…)

 えいっとばかりに、よそったシチューを殿下の目の前に突き出す。

 「おいっ、レ…、っん‼」

 半ば強引に開いた口に匙を押し込んだ。驚きながらも、殿下が口の中のものを嚥下(えんげ)する。

 「少し召し上がってください」

 怒ったようにお願いする。

 「今、殿下に倒れられたら、どうしようもないんですから」

 この国を守れるかどうかは、殿下の肩にかかっている。食べて、英気を養ってほしい。

 二口目をよそい、顔に近づける。

 「…わかった。わかったから、(さじ)を下ろせ」

 降参とばかりに、殿下が両手を上げた。それから、シチューに手を出す。

 「これで、いいか⁉」

 シチューを頬張った殿下が言った。

 「あと、このパンとチーズ、リンゴも召し上がってください。剥むいてあげますから」

 調子にのって追加注文する。

 「…レオが女だったら、かなりの世話焼き女房になりそうだな」

 モゴモゴと、シチューを口に運びながら殿下が不満をたれた。

 いや、「世話焼き女房」って。女だし。

 「従者は、主の身の回りの管理が仕事ですから」

 そうよ、そうだよ。世話焼きが仕事なんだもん、しょうがないじゃない。

 シチューを食べ終えた殿下に、剥きたてのリンゴを一かけら手渡す。

 シャクッと殿下がかじる。

 「レオ」

 次を用意しようとしてた手を止め、殿下を見る、が…。


 (――――――――っ!!)


 口に咥えたリンゴの先を、私の口に押し込まれた。

 一つのリンゴを、二人で食べてる状態。

 イヤイヤイヤイヤ。ナニコレ!?、ナニコレ!?状態。

 殿下、顔近いっ!! 焦点合わなくなるほど近くに、殿下の青い瞳っ!!

 こんなの、まるで、まるでっ!!

 

 「おい、アル、邪魔するぞ~」

 

 天幕の入り口が開くと同時に、バルトルトさんがノソッと入ってきた。


 「………お楽しみ中か⁉」


 ボソリと呟かれる。

 邪魔したな、とバルトルトさん。

 イヤ、どう見ても、そりゃ「キス‼」の場面に見えたかもしれないけど。

 違うっ!! 違うんだってばっ‼

 リンゴを(かじ)りとるとダッシュで、出ていこうとするバルトルトさんを追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ