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馬鹿な男と幸福な女


「……何故ですか」

「美耶っ」

「……面白い?これ。しらねぇ人の経験談なんてつまんなくねぇか。少なくともハッピーエンドじゃあねぇぜ」

「さぁ、少なくとも私はその女性がなぜ亡くなったのかは興味がありますね」

「美耶、やめろ」

「お前らがいいなら構わねぇさ。そうさね…何で死んだか…。体が耐え切れなかったのさ。そいつはたくさんの男に抱かれてくるような女だった。世間も何にも知らねぇでな。ゴムもつけずにヤっては子供こさえておろしてた。堕胎は母体への負担がデッケェってのも知らなかった。そいつがとある馬鹿な男と出会ってな。初めて本気で愛したんだとよ。その男も女を愛したよ。初めて心から子供が欲しいと思えた。2人の結晶が欲しいなんて、言ってな。でも、その女の体は限界だった。母体も子供も無事でいられるかは分かんなかった。そしたら女が私はどうなってもいい、どうか子供をっつってな。……結果?2人とも死んだよ。母も子も、耐え切れなかったのさ。残されたのは馬鹿な男1人。それだけの話さ」

「……」

「……まるで、本人であるかのように語るんだね」


クソ重い話だってのに最後まで聞いた王子と夜百舌ちゃん。王子が噛みしめるように言う。ハハッなかなか鋭いな。将来有望ってのはこうゆうとこかね。


「本人のわけねぇだろ?俺は現に生きてるし。男でもない。ただの10代女子高生」


少し落ち込んだ感じの2人を見て喉の奥で笑う。


「ククッ、まっ兎にも角にも。何が言いてぇかっていうと、エロはいいぞ、ってな」


もう用はねぇ。エロの素晴らしさもおっぱいの素晴らしさも十分説いた。出口へ向かう。通り過ぎざまに2人の頭をぐしゃりと撫でる。王子に関しては身長差の問題でかなり下に引っ張って屈ませたが。


そういや、がに股なおさねぇとなぁ。ミニスカートでがに股ってのはヤベェや。


俺は振り返ることなく屋上を後にした。












朝日が昇り寮の生徒が起き始める。


ピーンポーン


俺の部屋のベルが鳴らされる。


「あ"あ"?うるっせぇなぁ……」


ダルッダルの部屋着にボッサボサの髪をモサモサと掻きながらベットから出る。が、なかなか起きられず「ぬぐぁぁああ」としばらく悶絶。


ピンポンピンポンピンポン


「だぁああ!うっせぇ!今行くっての!」


ベットからのっそりと起き上がりドアを開く。


「あ"いあ"い。どちらさん?」


するとそこにはキラキラと輝く王子様が。

廊下がざわめく。そりゃそうだ。女子寮に人気ナンバーワンの王子様が1人の部屋の前で待ってんだから。しかも相手は庶民。

王子はそっと片膝をつくと右手を差し出した。そして朝っぱらからいい笑顔&爽やかでデッケェ声で俺に向かって言う。


「弟子にしてください!!!!」

「……………あ"?」



おっさんは人の名前を覚えるのが苦手です

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