素直に言っても良いのかしら…
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自意識過剰……とかではなく、その笑顔は私だけに向けられる素の笑顔なんだろうなって分かるから私もつられて口元を緩ませると、レオはそのまま私の手を握った。いわゆる恋人繋ぎというやつだ。
「レオ……人目が…っ」
「大丈夫、大丈夫! 僕らは婚約者だし…忘れがちだけどまだ10歳だよ? 少しくらいは微笑ましく見てくれるしエスコートみたいなものだと思ってよ」
ね?と小首を傾げるレオはあざとい。顔の良さを分かってやってると思う……。
「それに……こうしてるとサラを独占してるみたいで嬉しいんだ」
少しはにかむレオに、私は不覚にもキュンとしてしまい顔が赤くなるのを感じる。いつも余裕そうな笑顔ばかりのレオがはにかむのは何ていうか……そう、ギャップ萌えだ。
「レオ……。その、私も悪い気持ちはしてないですよ…? ちょっと恥ずかしいだけで、そう思ってくれるのは嬉しい、です……」
少しでもレオに気持ちを返せないかと思って伝えてみるけど……なかなかこれは恥ずかしい……。
尻窄みになりながらも伝えると、隣のレオがピタリと足を止める。
「レオ……?」
「………推しからの唐突な供給ヤバいわ……鼻血出そう…」
「ちょっ、嘘、今ので…?!」
不思議に思って覗き込むと、鼻を摘んで何かに耐えている最中だった。
「我慢よ……我慢するのよ。大丈夫。サラが可愛いのは当たり前じゃない……」
久しぶりに女性らしさが表に出てるレオを見たかもしれないわ……。
「レオ、落ち着いて。鼻血は我慢出来てるけどお姉様になってるわ」
「え、やだ。本当? ありがとうサラ」
なんとか我慢しきったのか、鼻から手を離すレオ。………別に前世の性格を引き摺るのは良いんだけど……なんていうか、やっぱりどこか残念なのよね。レオって…。
「ふふ」
「笑わないでよ。僕だって無意識なんだから」
「あら、レオだって笑ってるじゃない」
まったく拗ねた様子さえ見せないレオにおかしくなって、更に笑ってしまう。
「サラが笑ってくれるから、僕もつい釣られちゃうんだよ」
「おや、可愛らしい笑い声が聞こえてくると思ったら……レオナルド殿下とサラじゃないか」
そうしてふたりでコロコロと笑っていると、進行方向の角から書類を持ったお父様が曲がってきた。
その目は優しく細められていて、なんだかこそばゆい気持ちになる。
「お父様! どこか向かわれるんですの?」
「ああ。ちょっとだけ書類を渡しにね。他の者に任せても良かったんだけど、休憩も兼ねて……それよりもふたりとも何故ここに?」
良かった……ちょっと遅かったらすれ違っちゃってたところだわ。
「実はお父様にお願いがあって……」
「お願い? サラが私になにか頼むなんて珍しいね。なんだい?」
「あの、ほんの数日で良いんですの。レオナルド殿下とツヴァイ殿下とアルをうちに招待したくて…」
「ふむ。数日ということは宿泊するということかな? なにか理由が?」
「えっと……」
あ、理由……素直にアリスさんの事話して良いのかしら……。あの場にお父様はいなかったし…聖女様が3人に猛アタックしてるなんて話、信じて貰えるのかしら…。
「アーガイル公爵。僕の方から説明しても?」
「ええ、もちろんです。レオナルド殿下」
どうするべきか困っていると、レオが半歩前へ進み出てくれる。
「実は……アーガイル公爵なら既にご存知かと思いますが、先日聖女を名乗る少女が王宮を訪ね、無事に認められました。そして彼女の強い要望でモーガン男爵家に養子に入るまでの数日間を王宮で過ごすことになったのですが……」
そこまで話し、レオはぐっと声を潜めた。他には聞き取れないくらいの小さな声で続ける。
「彼女は貴族ではない為、我らの常識が全く通じないのです」
「常識が通じないとは……?」
「彼女にとっては婚約者の有無など、関係ないらしいですね」
ピクリとお父様の片眉が上がる。
「アーガイル公爵ならどういう状況なのか察しがつくかと……」
「ええ、そうですね。大体どのような状況か予測できました。ぜひ殿下たちには家に来て頂きたい。大したもてなしは出来ませんが、静かな環境は提供できますからね」
そう言って微笑むお父様は……あら、これは怒ってるわね。素晴らしいほどの社交的な笑顔が物語っているわ。




