★よろしくはしたくない(レオ視点)
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その大きすぎる叫びは謁見の間に響き渡り、余韻がくわん、と鳴った。
隣でぽそりとツヴァイが「嘘だろ…」と呟いたが、どれに対してか今すぐ聞きたい。
僕としてはその厚かましさと、王族を前にして大声を上げられるメンタルの強さと、あまりにも隠すのが下手なぶりっ子さをまとめてその一言に詰め込みたいのだが、ツヴァイはそこのところどうなのだろうか。
一瞬だけ遠くを見つめてしまったが、意識を戻すと彼女は何かしら話し続けていたらしい。
「なるほど。生家の方では肩身が狭いから養子に入る一週間だけでも王宮で匿ってくれと……それがそなたの望みか」
若干呆れの交じる父上の言葉でなにを喋っていたのかよく分かった。
つまり、家族との別れの時間は必要ないからここで過ごさせてくれと……さすがにそれはつらの皮どころか全身の皮が分厚いのではないか……。
「はい。私の家は貧乏で、特に一番上の私は毎日母親代わりに下の子供の面倒を見たり、家事をしたり……こう言ってはなんですけど両親からまともに育てられた記憶がありません…。それこそ、年頃になったら二十も上の人に嫁ぎなさいって言われてて…っ」
そう言ってくすんくすんと泣き始める彼女は、直前までの事がなければ悲劇のヒロインのようだった。
けれどアレを見て、はいそーですか。と信じる者はここに居ないだろう。
チラリと父上を見ると、小さく頷きが返ってくる。そのままクイッと顎をしゃくると控えていた騎士団長が何やら指示し、側にいた男が会釈をして出ていった。
恐らく、彼女の言い分が本当か調べるのだろう。
「ふむ。……とりあえず今日は生家へ帰りなさい。持ち出したいものなどもあるだろう。仕度をし、明日から6日間、身柄を預かることにしよう」
「きゃあ! ありがとうございますぅっ」
ため息をひとつ吐いた父上がそう言うと、さっきまでの涙は幻覚だったのかというくらいケロッとした彼女は笑顔を浮かべた。
どちらにせよすぐに調べもつかない。そして、この程度の嘘では聖女を王族詐称罪として罰することも出来ない。
ひとまず目に付くところに置いておこうというのが父上の考えなのだろう。
「馬車を用意させるわ。それに乗って今日はお帰りなさい」
母上がうんざりという態度を隠すこともなく告げるが、彼女は気にした様子もなく笑顔のままだ。
「ありがとうございます、王妃さま! じゃあまた明日からよろしくお願いしますね、レオナルド様、ツヴァイ様っ」
何をよろしくされるんだ。何もよろしくしたくない。
語尾にハートでも付きそうな勢いに、顔の半分が引き攣る。
そのまま騎士団長に耳打ちされたヒロインはペコリと頭を下げると、そのまま謁見の間から連れられるように出ていった。
疲れた………。
彼女が出て行くと、部屋の中はグッタリとした空気に包まれた。明日からの事を考えると憂鬱過ぎる…。
僕はひっそりとため息をついた。
次回からまたサラ視点に戻ります。




