★人一倍の執着心(レオ視点)
報告を受けた僕らは、謁見の間へと向かい少女がやってくるのを待っている。
今この空間には国王である父上と、母上。そしてその一段下に僕とツヴァイが左右に別れて座り、そして婚約者ということで今回はイレギュラーだがサラが僕の隣に座っている。護衛として僕らの一段下にアルと近衛兵が待機していて、聖女の謁見にしては若干物々しさも感じる。
謁見を許されたということは聖女の力を認められたということ……つまり、ヒロイン本人で間違いないだろう。
隣に座っているサラは緊張しているのか、ドレスの上で両手を握っている。その手の上にそっと自分の手を重ねると、ビックリしたサラがこちらを見上げてヘラっと笑ってみせた。
…………かっわいいぃぃぃ。
ちょっと、私の婚約者が可愛すぎる! 何度でも言うわ、可愛い! ヘラって、ヘラってなに?! そのちょっと照れ臭そうにしてる笑顔反則なんだけど! 今すぐ抱きしめてしまいたい!
……いけない、いけない。今はちゃんと王太子でいないと。笑顔で誤魔化しつつ、内心の衝動を抑え込む。
間もなくやってくるであろうヒロインについてでも考えて、いったん冷静になろう。
そう思って一度、気持ちを落ち着ける。多分だけど、ヒロインは転生者な気がしている。ゲームとは違ったイレギュラーな行動…謁見の申し込み…。
“レオナルド” 狙いか “ツヴァイ” 狙いのどちらかだと睨んでいるが…。
本当はヒロインとはなるべく会いたくなかった。そして、ツヴァイやサラにも会わせたくなかった。
僕やツヴァイに関しては、ヒロイン効果がどの程度働くか予想がつかなかったから。もし強制的になんらかの力が働く場合、なにかしらの対処が必要だと思っていた。
まあ、その程度……僕のサラ愛に比べたら大したことないと思っているけど。
ただ今みたいにサラが不安そうな顔をするのは僕として本意ではない。出来れば会わせないで解決できれば良かったけど……サラはただ守られるだけの令嬢じゃない。それに、今後社交界で関わることも増えてきてしまうのならば僕とサラの仲の良さを見せつけてしまうのも有りかなと。
そろそろ、周りを牽制しておいた方が良いと思うんだよね。
お茶会への出席もそろそろ始まるので、きっと他の貴族の目に触れる機会も増えるだろう。
サラは欲目を抜いても素晴らしい女の子だ。令嬢としての振る舞いをしっかりと身に着け、品行方正。大人からの評判も良い。そしてふわふわのピンク色の髪の毛は綿菓子のように彼女を甘く愛らしく強調し、紫の瞳は常にキラキラと輝いている。
外見の愛らしさはもちろんだが、原作のゲームにはなかった魅力として彼女自身の無邪気さがある。多分本人は気付いてないけれど、完璧な令嬢として振る舞いつつも公の場から離れた時の笑顔は純粋で悪意がなく、水面下で他人を蹴落としあっている貴族の中では珍しいだろう。しかも高嶺の花だと思われるであろう彼女がそんな笑顔を浮かべるのだ。絶対に他の男性が放っておかないと思っている。
僕の婚約者である以上、表立って手を出す輩はいないだろうが懸想するのは絶対に出てくる。心が狭いって思われても構わない。サラには誰も近寄らせたくない。
だから、今回は仲の良さをアピールするには良い機会とも言える。他の貴族に「聖女との婚約よりも、今の婚約者を優先するほど仲が良い」と噂が広まれば、今後僕としては動きやすい。
そんな事を考えていると、近衛兵のひとりが「聖女・アリス様が入場されます」と宣言し、重厚な観音扉が開かれる。
その先には、ブロンドのボブをハーフアップにし、瞳と同じ空色のドレスを着た少女が立っていた。恐らく、ドレスは謁見するのであればと着せられたのだろう。若干サイズが合っていないのかコルセット付近に布が寄ってしまっている。
若干ゲームよりは幼いが、そういえばヒロインってこんな顔だったなぁと思っていると、ペコリと頭を下げた彼女は元気よく頭を上げるとにっこりと笑った。
「初めまして! アリスと言います!」
その礼儀作法を完全に無視した挙動に、近衛兵とアルは凍りつき、僕とサラ、ツヴァイは驚愕で息を呑み、背後からは父上と母上の冷気を感じた。
やばいヒロインを続投しようかと思いましたが、収集つかなくなるので来週に持ち越します。




