嵐は唐突にやってきます。
「まあ……うん、新たな兄さんの一面が見れて良かったと思うことにするよ…」
そう言って苦笑するツヴァイの顔は嫌そうじゃない。なんやかんやお兄ちゃん大好きなのね。私としてはゲームの関係性よりもこっちの方が好ましいので、わだかまりがほぐれて良かったと思う。
終わりよければ全てよしって言うものね、と一人納得していると、
「でもさ、サラ嬢は婚約者がこんなんで良いの? 実の兄だけどなんていうか……サラ嬢に対してヤバくない…?」
ヤバイって……ただサラのことが大好きで、暴走すると心の中の乙女が出てきて、鼻血吹いたりするだけ……そうね、
「ヤバイわね」
確かにヤバかったわ。一部を除き変態じみているとも言うけれど……。
「でも、ちょっと行き過ぎ感はありますが、好まれないよりは良いですわ」
悪役令嬢ルートを辿ると好まれるどころか断罪まっしぐらなのを考えると、このくらいは許容範囲かもしれない。
別に嫌だとも思ってないしね。
「サラ嬢が良いなら構わないけど……ま、幸せそうだしなによりだよ」
幸せそう?
ツヴァイが思いがけない事を言うので、口角でも上がっていたのかと自分の顔を触って確認するが、とっくに表情は変わってしまっていて分からなかった。
幸せ…といえば、幸せなのかしら。断罪ルートを辿る可能性があったものの、ほぼそれは回避されたようなものだし…。
「あーあ、それにしても明日からまた勉強しなきゃいけないのか」
物思いに耽っていると、ツヴァイが大きくため息を吐いた。
「ツヴァイは勉強が嫌いなんですの?」
「んー、好きではないかな。王位に興味ないし、どっちかっていうと身体を動かすほうが好きだし。兄さんの真似してた時は諦めもついてたけどさ」
「じゃあ、辞める?」
半分愚痴とも言える感じでボヤくツヴァイに爆弾を落としたのはレオだった。
「え?」
「勉強。辞める? さすがに貴族としての最低限はやらないといけないけど、他の事を学んでも良いと思うよ」
「他って言ったって…」
「では、剣術などを学ばれてはどうです?」
パっと思いつかないらしく困惑するツヴァイに、そう提案する。
「剣術?」
「ええ、他にも馬術とか…」
元々身体を動かすのが好きなら、そういう方面を学ぶのも良いと思うのだけれど…。
「そっか…。無理だと思ってたけど、そういう方面もアリなのか」
すると、何かが腑に落ちたように呟くとツヴァイはパッと顔を上げた。
「ありがとう、サラ嬢! ずっと王族じゃ無理だと思ってたけど…俺、やりたいこと出来たよ。
兄さん、俺は剣術を極める。騎士団に入るのが憧れだったんだ。騎士団長みたいに強くなりたい。それって、王族でも出来るよ…な?」
覚悟を決めたという強い眼をしたツヴァイは、レオを真っ直ぐに見つめた。それを受け止めるレオは柔らかな笑顔を浮かべて頷く。
「父上は反対しないさ。ツヴァイがどれだけ本気か、ちゃんと伝えればね」
その後、ツヴァイが剣術を学び始めたと私はレオから伝え聞いた。
思いの丈をぶつけられた国王は、快くツヴァイに剣術や馬術、体術といった教師をつけたらしい。
実際、ツヴァイは剣術の才能があったようで、それからメキメキと上達をしていると嬉しそうにレオが話していた。
そしてそこから約一年半の月日が流れ……夏の暑さが過ぎ去り、秋も深まってこようとした頃。
レオと私、そしてアルとツヴァイの4人で市井へ出掛けることも恒例化しつつあり、このまま学園の入学まで平和に過ごせるだろうと思っていた頃。
思いがけない事件が起こった。
「国王陛下に申し上げます! 聖女と名乗る少女の力が証明されました!!」
今回で一部(攻略対象攻略編)が終わりです!
次回から二部に入りますが、ストックの都合で明日と来週の更新はお休みになります。
次回は16日の更新を予定しておりますので、少々お待ちくださいませ。




