★どんな性格してても(ツヴァイ視点)
すみません。予約のつもりがそのまま投稿してましたね(汗)
「そうですわね…。公爵家を利用しても良いんですが、私ならここは手っ取り早く、レオナルド殿下の婚約者という立場を利用させて頂いて、こうしますわ」
そのまま後ろに立って静観していた兄上の元へと歩いていくと、上半身を少し斜めにして覗き込むようにしたサラ・アーガイルは、胸の前で手を組んだ。
「レオ……私、ツヴァイ殿下の人格を否定する人達は有用じゃないし、傍に置いていたらダメだと思うの…。なんとかしてくれる?」
「あああ、可愛い…! なにその小技、あざと可愛いわぁー……」
こてん、と小首を傾け頼まれた兄上は、片手を顔に当てて天井を仰ぎ見た。
さっきも思ったけれど、こんな兄上を俺は見たことがない……。
「何もしなくても可愛いけど、その可愛さを分かっててやるなんて……本当に小悪魔…好きだわー…」
しかもそのままぶつぶつと呟き続けている。
正直、他人だったら「ヤバい人かな」と距離を置くレベルだ……未だにこれまでの兄上と違いすぎて、信じ難い…。
「レーオ、聞いてる…?」
そんな兄上の袖を、ちょんちょんと引っ張るサラ・アーガイル。確かに……顔は悪くない。悪くないどころか可愛いと思う。きっと将来は美人になるだろうと断言できる程だ。そして、一連の所作も……正直グッと来た。
ただ、兄上の反応は異常だと思う。
というよりも今まで王太子として振る舞ってきた兄上とはまったくの別人のようで……。
「レオ、お願い。だめ……?」
「ダメじゃない…」
今まで見たことのない兄上がそう言うと、手の隙間からツ…と赤い液体が流れた。……え、鼻血……?
「あ。やり過ぎましたわ」
やり過ぎた?! え、今の一連でこうなったのか?!
「はい、どうぞ」
そう言ってスッとハンカチを差し出すサラ・アーガイル。その落ち着きように、これが初めてではないのだと俺は悟った。
「ごめんね、ハンカチは新しくして返すよ」
「いえ、大丈夫です。そちらはレオの鼻血用なので」
……うん。慣れてるっぽい。普通は鼻血用のハンカチなんて持ち歩かないからな。しかもドレスの上に来ているボレロの内側にポケットを付けていたのもバッチリ見えていた。普通、女性の服にポケットは付いていないのでわざわざ作ったのだと窺い知れる。
なんなんだ、この二人……。
完璧な王太子と完璧な令嬢と呼ばれるふたりとは思えないくらい、目の前のふたりは…はっきり言おう。残念だった。
どう頑張ってみても完璧なんかじゃない。むしろ変人と言われる部類に入るような奇行だ。おおよそ貴族らしくない。だけど…
良いな。
なんだか、そう思わされた。お互いが飾らず自然体で向き合っている。
「わざわざありがとう」
「いいえ。でも、さすがに私もやり過ぎましたわ。すみません」
「あはは、役得だよ」
このふたりを見ていたら…なんだか、完璧なんて存在しなかったのだと思えてきた。
確かに対外的なふたりは完璧だ。周囲の期待に応えてきた彼らは、けれど、ずっと完璧な訳じゃなかった。
きっとこの姿もこの人たちの一面なんだ…と。
「ふ……はは……あはは……っ」
自然と、笑いがこみ上げてきた。なんだ。俺が見てた兄上は……目指してた兄上はこんなだったのか。
なんだ……「普通」じゃないか…。
「ツヴァイ…?」
「なんだよ…。バカみたいじゃん」
周りに踊らされて、八つ当たりして……怖かっただけなんだ。必要とされてない子供だと思ってたから。
「……あのさ。俺がどんな性格してても、見捨てない…?」
誰にも必要とされなくなるんじゃないかって。優しくしてくれる兄上にさえ見捨てられたら俺は……もうどうしたら良いのか分からないから。
一瞬の沈黙でさえも怖くて、目が床へと向かった。
「見捨てないよ」
でもそれも一瞬で、すぐに温かい声が降ってくる。
「なんで見捨てるの? ツヴァイの性格がどうであれ、弟には変わりないのに」
もうしばらくツヴァイ視点にお付き合いくださいm(_ _ )m




