子供の時期は大切です
「そういえば、アルの方はレオから見てどうなの?」
紅茶とケーキが運ばれてきて、店員のお姉さんの背中を見送る。
ツヴァイ殿下に関してはとにかく会わないと始まらないと判断してそう聞くと、レオはうーん、と首を傾けた。
「僕もそんなにあの子と付き合いが長い訳じゃないんだよね」
「え、そうだったの?」
てっきり子供の頃からの付き合いなのかと思っていたからビックリした。……まあ、年齢的には今も子供だけれども…。
「団長の息子ってこともあってたまに顔は合わせてたけど、あんまり話さなかったし…。あいつが僕付きになったのも半年前なんだよね」
「そんなに最近だったのね」
「そう。まあ、才能は父親からしっかり継いでるし、歳が近いから僕の友達も兼ねてって感じでね。どうせ長い付き合いになるならお互い子供の頃から知ってる方が良いだろうって事で鍛錬と勉強の時間以外はほぼほぼ僕の近くにいるよ」
「え、それってアルも休みがないじゃない!」
レオはもちろん、私も休みという休みはないけど……いくらなんでも10歳の子供には可哀想だわ。
「そうだねぇ…僕らと同じくらいの忙しさだと思う。なるべく子供らしい時間もあげたいと最近は思ってるんだけどね」
「そうね…。私達は立場的にも仕方ないし、それに一応前世も含めたら大人ではあるから良いけど…」
さすがにアルにまで、せっかくの子供時代を無下にして欲しいとは思わない。それだけ彼が将来性があるのだろうが、もっと自由があっても良いはずだ。
「まあ、僕と一緒にいる時はこれから少しずつ休みを取ってもらうことにするよ。今はまだぎこちないけど、タメ語で話すのが慣れれば二人きりの時に気が休まるようになるだろう」
レオの言うことも一理あると、私は頷く。恐らくレオの側にアルを付けたのはレオの立場を固める為だろう。ここで下手にアルに休みを与えてしまえば、騎士団長との関係にも亀裂が入りかねないばかりか、アルを役不足扱いしてしまう危険性がある。
それならば、完全に休むことは出来ないが共に過ごす時間を休息の時間に当てられるのが一番だろう。
「でもまあ…」
ポツリとレオが呟く。
「今の所、僕としては妬けるかな。まさかサラが人タラシだとは思わなかったよ」
「はぁ?」
思わず貴族令嬢が発してはならない声を上げてしまった。
「人タラシって…人聞きの悪いこと言わないでくれる? 誰もタラシてないわよ」
「そうかな? 僕としてはアルがライバルにならないかが心配なんだけど」
「ライバルって……。アルとはまだそんなに仲良くなれてないわよ? 焼き鳥屋の時もだけど唖然とさせることの方が多い気がするし…」
少しでも馴染みやすいようにフランクにしてみたけど……やり方を間違えたかしら? と心配になるくらいだ。
「いや、あれは……うん。サラが分かってないなら
良いんだ」
何かを諦めたようにため息をつくレオ。
「考え過ぎよ。さすがに好意を向けられたら私でも分るわ。そこまで鈍くないもの」
「そうかなぁ」
「そうよ」
現に、レオからの好意は痛いくらい伝わってる。もう少し緩和してくれても良いくらいだけど、嫌ではないのでそこは黙っておこう。
「ところで、さっきアルに何を頼んだの?」
このまま恋愛トークをするのも居心地が悪いので話を逸らすと、ちらりと階下を見たレオがいたずらっぽく笑った。
「すぐに分かるよ」
気になって私も階下を見下ろすが、特に何もない。目の前のレオを見ると、ニコニコと笑っているだけで教えてくれそうもなかった。
「すぐっていつ?」
「もうすぐ」
……拗ねてやろうかしら。そう思った時だった。
「ただいま戻りました」
少しだけ息を切らせて、小さな箱を持ったアルが戻ってきた。
「おかえり。ありがとう、アル」




