逃れられるなら…
「本題…。あ、ツヴァ…弟さんのことね。あの後なにか進展があったの?」
危うくツヴァイ殿下。と言い掛けて言葉を飲み込む。さすがに街中で名前を出して話す内容ではない。
「うーん…そうだね。正直なところ、進展という進展はないんだ。というのも、僕らはその…特殊な関係だろう? だからか兄弟仲は悪くないけどやっぱりどこか壁があってね。ここ数日コミュニケーションを取ってはみたけどあんまり手応えはない感じかな」
「そう…」
やはり正室の子と側室の子では周りからの区別もあるのだろう。しかもそれが同い年ときたら嫌でも比べられる。比べられ続けられるっていうのは、本人にとってもストレスな筈だ。
目の前に座るレオ…レオナルド殿下は、次期国王として申し分ない。ゲームの設定通りであれば勉強が出来、それに鼻をかけることのない努力家だ。そして周囲の人間を大切にし、なによりも私が知っているレオには求心力がある。
周りの人間は彼の明るさに惹かれるのだ。多少、人を振り回す節はあるが、相手を尊重してのことだと分かる。だから振り回される相手も不快な思いはしない。
使用人を見ていたら分かる。彼らはレオナルドが何かを頼むと快く応じるのだ。それだけで彼らがどの様な待遇を受けていて、主人をどう思っているのか読み取ることが出来る。
だからきっと……ツヴァイ殿下は頑張っているんだと思う。兄のようになりたいと。なる必要なんてないのに。
「ねぇ…今度、弟さんに会わせてくれないかしら」
「弟に? 良いけど…なにか案があるの?」
「ううん。案って程のものでもないの。ただ、もしかしてって思って…」
それは前世で覚えがあった。役者、という特殊な環境にいたからだろう。比べられるのは常だった。演技力、集客力、顔の良さ、愛想の良さ、ファンサービスの質……。
芝居が出来れば良いというだけの世界じゃない。華やかだからこそ、妬みや嫉みがあった。それは表に出たり抱え込まれていたり…される側であったり、する側であったり。
そういう環境が続くと、心がすり減る。比べられるってことは辛い。頑張って評価されないというのも、心にとても負荷が掛かる。大好きなものさえ嫌いになりそうで、嫌いになりたくなくて足掻いて……。耐えきれなくて、それを辞めてしまえるならそれで良い。
でも…ツヴァイ殿下はそれを辞められない。だから彼もそうなんだと思う。きっと、足掻こうとしている。それなら、私はちょっとしたキッカケを作れば良い。
「上手く行くかは分からないけど、少しだけ私に任せて貰える…?」
もしかしたら……嫌われるかもしれないけれど。
それでも、可能性があるならなんとかしたい。私はそう思ってレオの瞳を見つめた。
「……分かった。でも上手く行かなくても良いよ。サラだけに任せるつもりはないし。もちろん、信用していないとかじゃなくてね」
頷くレオの目は優しい。
「一緒に解決して行きたいんだ。僕らの未来の為に」
少し短めですが、区切りが良いので…。
次くらいにアルフォンソの閑話を挟めればと思います。




