クエスト7 弟について
ルーザックの弟は、テルメジロブスという名前である。
テルメジロブスは兄のルーザックとは、違い次男でありながら木こりのセンスは、父マイドゥークの望む逸材であった事は確かである。
事実、マイドゥークの正式な後継者として、テルメジロブスは、天職を得て生き生きと仕事をしていた。
ルーザックはテルメジロブスのおかげで、家督を継ぐ必要は無くなった。テルメジロブスは、中等学校を卒業すると、直ぐに木こりになった。最初こそ、マイドゥークのマンツーマン指導を受けたが、更なる高みを目指して木こりの専門学校に二年間通った。マイドゥークも、これで、後継者の心配をする必要がないと胸を撫で下ろした。
アホで自分勝手な長男よりも、使える次男の方が、父にとっては可愛いい存在であった。テルメジロブスは、木こりとして生きると決めたその日から、父マイドゥークに溺愛されたのだ。と、同時にルーザックの事に関しては、一貫して、
「自由にやれ。但し人の迷惑をかける様な事はするな。家族に対してもだ。」
という一点を守っている間は何も言わなくなった。ただ、心配症の母ウィリザーは、そんな父マイドゥークの姿勢に、こう苦言を呈した。
「お父さんたら、分かりやすい人だわね。確かにルーザックは、あなたの望む道には進まなかったわ。だからといって、あからさまな態度を見せるのは、よくないわ。そうね、まるで買って貰えなかった玩具の事をくどくど言って、文句をたれていた子供が、玩具を与えられて、その途端手のひらを返して親に媚びを売るのと同じ事だわ。」
もちろん、テルメジロブスに罪はない。人には向き不向きがある。テルメジロブスは、樹を伐る木こりの仕事が好きだった。好きな事を幸せにする事が出来る人間は最高に幸せである。だが、自由気ままに生きている兄のルーザックに対しては、苦言を呈している。
「勝手な事ばっかりして。兄さんはいつもそうだ。」
しかし、その一方で、そんな兄を羨ましく思う事もあった。もちろん、それを口にする事はない。テルメジロブスは、プライドの高い男である。そんなことは口が裂けても言えない。
木こりとして父マイドゥークの背中を追うことになった弟の心中は複雑だ。しかしながら、ルーザックがどうこうではなく、生きていく為に、木こりという職人を目指すのはテルメジロブスが、決めた事であり、賢明な判断であった。




