クエスト6 母について
母ウィリザーも、キラーズ家を語る上では欠かせない人物である。
母ウィリザーが、父マイドゥークと結婚したのは、学校の同級生であり、両家の両親が仲良しだった為である。母ウィリザーはウィストハン家という、コルティス村では知らぬ者のいない名家の御嬢様であった。
二人は成人した日に籍を入れ、ルーザックの姉(後に紹介する)を妊娠していた。結婚以来、ウィリザーは、専業主婦として姉や弟やルーザックの育児に専念した。家事も洗濯も裁縫も何をやらせても百点だった。浮気をすることなど有り得ず、ただ家族の為に働き続けた。
そんなウィリザーは、心配症で息子や娘に対して、過保護になる面があった。もちろん、親が子供の事を心配するのは、当たり前の事なのだが。ウィリザーは、育ちが良いためそのような母親になったのだろう。それが、子供達にとしてみれば、うざったいと感じてしまう事が度々あった。
特に、大学全入時代にある世の中で、小学校中退など、一般人として並外れた落ちこぼれだった。そんなルーザックが母ウィリザーにしてみれば、悩みの種でしかたがない存在であった。せめて、高等学校位は出て、まともに働いて欲しかった。エリート志向の強い名門ウィストハン家の血が騒いだのだろう。
教育に関してはルーザックに一番力を注いで来た。自分の子供が、他の子供より劣っている事など、あり得ないと思う伏がウィリザーにはあった。そういう選民思考の強い母だった。と、ルーザックは記憶している。母親として完璧に見えたウィリザーであったが、子供達の評価は皮肉にも低かった。エリートになりそびれた、ウィストハン家の恥さらしと言われた過去が彼女をそのような女性にしたのだろう。
「いちいちうるさいな!わかっているよ。」
これがルーザックの挨拶だ。おはようとか、おやすみとか、当たり前の挨拶はルーザックには、出来ない。ルーザックは、小学校を辞めてから、母親とは一定の距離を取るようになっていた。月並みな言葉には反応しないようにしていた。
黙って呪文を覚えたことも、母ウィリザーにだけは、心配をかけたくないと、黙っていた。とにかく、母親としてのウィリザーの力は認めつつも、人間ルーザックを母親に決められるのは、御免だった。それは、誰しもが持ちうる自我の目覚めだった。
ルーザックは、母に10才のクソガキながらこう言った。
「母さん、俺の道は、俺の手で切り開くから。」
と。




