クエスト36 グドルフの憂鬱
目標設定を確実にするという点も悩ましい事ではあったが、グドルフを憂鬱にさせる更なる問題があった。
それは、ルーザックの弱点に繋がる大きな問題であった。一般的な魔法使いは、呪文の詠唱速度が、20~30秒の間であるが、これは魔法使いとしての熟練度が上がる程早くなる傾向にある。グドルフ級の魔導士ともなれば、呪文の平均詠唱速度は10~15秒で済む。
ところが、ルーザックは現段階において、呪文の詠唱速度が、平均30~40秒もかかってしまう。つまり、ルーザックは呪文の詠唱速度が、平均より劣るというのだ。
これは、スピードがモノを言う戦闘において致命的な事につながりかねない。グドルフは、どうすれば、ルーザックが呪文を素早く唱えられるかという事を考えるようになる。
もちろん、ルーザック自身も危機感を感じてはいた。しかし、具体的に何をどうすれば、良いか分かっていなかった為、困っていた。2つの呪文を唱える間に、ルーザックは1つの呪文しか唱えられない。このスピード間のなさは致命的だ。
特に回復呪文が必要なメンバーにとっては1秒でも早く、呪文が必要なのに、そのメンバーを救えなくなるかもしれない。
ルーザックはある程度のGPを持ち、呪文の契約も全て終わり、使いこなしている。詠唱速度さえ何とかなれば、魔導士としては即勇者のパーティーに加わっても良いレベルまできている。
それだけに深刻な問題であった。グドルフは座学で、呪文の詠唱速度には個人差があり、生まれ持った、遺伝によるものが大きいとされている。まぁ、確かに父親は力勝りな木こりで、母も普通の人間だから、魔導士になる遺伝子が少なかったのかもしれない。
これを解消するには、持ち前の素早さを上げる事くらいしかないが、それにしても、自力で出来る事など、たかがしれていた。
「スタースイングバンドでもあればのう。」
「何ですか?それ?」
「腕に着ければ素早さを2倍にしてくれる幻のアイテムさ。」
グドルフは、そうぼやいた。スタースイングバンドは世界に数個しかないとされている。だが、どこにあるか皆目検討がつかない。
そんな不確実なものより、魔導士としての練度を上げれば、呪文の詠唱速度は上がる見込みとのびしろはある。まずは、目標とする一般的な魔法使いの詠唱速度20~30秒に達するのが、当面のルーザックの課題であった。




