クエスト33 若き日のあやまち
ルーザックはたった一度だけ、グドルフに説教をされた事があった。
きっかけは単純な事で、あった。魔法力が思ったよりも上昇しなかった事に、腹を立て「もう、後継者なんかやめてやる!」と言って、脱走を図ったのである。
もちろん、グドルフがそれを許すはずもなく、グドルフに連れ戻されてしまう。
「バシン!」と乾いた平手打ちの音が当たりに響き渡った。それも渾身の力で。もちろん、グドルフはルーザックが憎くてそんな事をした訳ではない。そして、グドルフはルーザックにこう告げた。
「ルーザック。今はまだ、修行中なのだ。毎日毎日、目に見える成長ばかりあると、思っていたようだが、世の中そんなに上手くは行かないものだ。今ここで、魔法使いの修行をやめてしまうことは、お前の本意ではないはずだ。そして、こんなことで音を上げるタマなら、ワシはお前を後継者には、選んでいない。この先もきっと、これ以上の困難があることは火を見るより明らかじゃ。なぜ、ワシが得意な魔法を封じて平手打ちしたか分かるか?」
「分かりません。」
「気持ちで伝える為には、魔法なんかじゃ伝わらない。非力な魔法使いでも、老婆心ながらそれなりの痛みはあるだろう。多分。」
グドルフは、甘えを持っていたルーザックを一喝した。もちろん、ルーザックだって、若き日のあやまちだという事はよく、分かっているだろう。だからこそ、順調にばかりは行かないからと言って、匙を投げるのはあまりにも軽率である。と、グドルフは言いたかった。
魔法使いとして大成する事は大切な事だが、ルーザックは今やグドルフにとって唯一無二の弟子であり、後継者だった。困難が向かってくるのは、分かりきっている。それに負けないだけの強さを持って欲しいとグドルフは願う。
若いから許される。弱点はそのままにしておく。グドルフはそれら全てを甘えだと一蹴する。その一方で、ルーザックに今一番足りないのが、本当の強さと精神面の心の充実であると言える。ルーザックにとっては、痛いところばかり突かれる様な気持ちにもなったが、その弱さと向き合わない事には、それ以上先に進めないだろう。




