クエスト32 ここを巣立った後の事
ルーザックには、一つだけ不安があった。ここを巣立つ、卒業した後の事である。いつまでもグドルフの元にいることは、恐らく物理的に不可能である。
だとするならば、今のうちから修行の後の事を考えておかないといけない。だが、ルーザックはそんな雑念に振り回される事なく修行に集中した。
ルーザックの絵空事では、まず、悟りの書を手に入れて賢者になる。それをクリアしてから、勇者の一行に加わる、という従来からのルーザックの考えと大して差はなかった。
ルーザックは、自分の力が必ず勇者の役に立つという確信があったからこそ、その絵空事が描けたのである。ルーザックは語る。
「自分の目標がどこにあるのか、それが明確になっていれば、進路等という単純な問題で、悩む様な事は無くなるだろう。少くとも、今の自分に迷いや憂い等という感情はない。」
ルーザックには、ざっくりした大まかな未来図に自信過剰になっていた。簡単なラフスケッチが書き上がる前は、不安があったが、今はすっかり消えてしまった。将来の事に関して、不安がない人間など、余程の楽天家か、行き当たりばったりの人間しかいない。
だが、ルーザックは違った。綿密な計画を練りながら、あくまでざっくりとしている。それがルーザック流である。自分が何をしたくて、何を為し遂げたくて、そうするために、何がどの程度必要なのかを知っている。だから、未来への自分の軸がブレることがない。
誰から教わる事もなく、10才の幼き日々から自分の事は自分が決めて来た。そんなルーザックにとって、それは、20才になってもそのスタイルは変わらなかった。時は流れていく。
ルーザックがグドルフの元へ来て、早くも2年の月日が立とうとしていた。まだまだ成長途上にいるが、それでもルーザックは2年前の自分とは、大きく違う事が分かった。それは、グドルフの目にも当然映っていた。
グドルフは、ルーザックの将来についてアドバイスは出来るが、強制は出来ない。だから、敢えて口には出さなかった。なぜならそれは、ルーザックが自分で決めて、乗り越えていく事だからだ。だから、グドルフは必要以上の事は言わなかったのである。




