クエスト30 先輩
グドルフは、ルーザックを後継者にする以前に一人だけ後継者として、指導した人物がいた。ルーザックの先輩にあたる、その人物は、魔法のエリートだった。ルーザックとは、大違いだ。
一年程しか持たなかったが、結局価値観の違いで修行に耐えられなくなり、故郷に戻って行ってしまった。だが、グドルフにとってその人物の育成は、学ぶべき事が多かった。
その人物の名はワールイダスと言う。ワールイダスは、メラガディア王国主催の魔法使いNo.1を決める大会で、初出場で優勝を手にした。グドルフの目にも当然止まり、決して恵まれた環境で育った訳ではなかったが、その魔法センスは光るモノがあった。
当然、グドルフの誘いにも応じた。これで世界最強の魔法使いになれると。だが、グドルフの指導はそんなに生易しいモノではなかった。想像以上の修練の厳しさに、ワールイダスは、音をあげてしまう。グドルフは当時の事をこう語る。
「ワールイダスには、根性がなかった。確かに私の指導は少しばかり、行き過ぎだったかもしれない。しかしながら、あの程度の修練で、すら耐えられなくなるのは、ワシの思い違いだったと言わざるを得ない。ルーザックは、ワールイダスに比べれば、魔法使いとしてのセンスは劣るかもしれない。だが、ルーザックは根性と努力する力がワールイダスとは比べ物にならない程ある。ワールイダスには、根性が足りなかったんじゃ。」
グドルフにとっては、初めての弟子だっただけに、何とか形にしてやりたいと思う気持ちはあった。しかし、肝心の本人が音をあげてしまうのでは、グドルフには、何も出来なかった。
それに比べれば、ルーザックは良くやっていた。愚痴の一つくらいあっても良いが、淡々とこなしている。修練を重ねる度に強くなっているのが分かる。しかも、一を言えば五から十はやってくれる。師匠にとって、これほどやりがいのある弟子は中々いない。
ワールイダスとルーザックの決定的な違い、それは"士気"である。やる気のあるなしが全ての大元には存在している。ワールイダスにも魔法使いとして、成長したいという気持ちはあったが、ルーザックのそれは、さらにその遥か上を行っていた。
何故なら、勇者のパーティーに加わりたいというのだから。並大抵の士気がなければ、そんなことは言えない。グドルフもその点に関しては文句のつけようがなかった。
「あれだけのやる気と情熱があれば大成する。」
ルーザックにはそう言わせるモノがあった。ワールイダスへの教育の失敗を糧にグドルフも変わった。
積極的に弟子に接するのではなく、少しだけ距離感を重要視するようになった。その絶妙な距離感で、ルーザックと上手くやっていた。




