クエスト126 遺書
ピルティンは、テントで休みをとるパーティーメンバーに対して、それぞれの遺書を書くように指示を出した。内容はどんなものでも構わない。が、とりあえず便箋5枚以上をノルマとした。
文字の力は侮れない。少なくとも、これから死ぬかもしれない人間が、紙に今思っているありのままを綴る事は、気持ちの整理になる。
それだけでなく、不思議なまでに、未練や生命への余分な執着が、なくなるのである。人に見せられない様な事でも、自分の気持ちがスカッと整理されれば、それでピルティンが仲間に遺書を書かせた理由は成功だ。
慣れない作業ではあったのかもしれないが、こうしてピルティン達は、明日の決戦に備えて、何のわだかまりもなく臨める事になる。
ルーザックは遺書を書いていて思った。自分は何の為に、誰の為に戦っているのか?人類の為?国歌の為?そう俺は他の誰でもない自分の為に戦っているのだ。自分自身の磨いた実力で、結果として世界が平和になる。それが分かった。
だから、どうと言うこともない。世界を変える事の出来る少数派の抱えるある種の贅沢な悩みだ。冷静沈着に机の前に凛と座った時、筆はオートマティックに動いた。
自分の為に世界を平和にするのと、人類を結果として世界を平和にしたのとでは、天と地程の差がある。どちらがどうということはない。結果としての世界平和は同じだからだ。
しかしながら、今のルーザックにとって大切なのは、ロジックでも、正論でもない。自分がどうしたいかである。世界を平和にする力のある能力を持った人間に与えられた特権とも言えるかもしれない。今のルーザックにとって、越えるべきは唯一人自分自身だったのだ。




