担子菌戦隊マタンジャー見参!
「マタン。島主様の御前に参れ」
七三君……。御前って何? 私は神仏でも貴人でも無いよ。島を預かって、再開発をしているだけの徒のねーちゃんだよ。
いや、まぁ。一度死んでるから、仏ではあるか。
そんなとりとめない事を考えていると、ヨタヨタと木々の間から巨大茸がやって来ましたよ~ッ!
「島主様。彼等がマタンです。今回は五色揃いました! これは、滅多にない事なのですよッ!」
マタン達は、1M前後の大きな茸でした。でも、どんなに食糧難になっても食べたくない系。
だって私には、カラフルな巨大紅天狗茸にしか見えましぇ~ん。
赤はまだ許せるとしても、青・緑・黄色・ピンクはつぼの色もヤバいですよ。赤は普通(?)に白だから、有る意味メルヘン。でも、青に檸檬色。緑に藤色。黄色に紫。ピンクなんか、黒色ですよ!
しかもこのコ達。柄の部分からビッグな榎茸が、手足として出ています。細いですねぇ。長いですねぇ。……でも、限度が有るだろうッ! どうして潰れないんだよッ! そして、横から出ているから、皆ガニ股に見えちゃうよ。
「マタン達が五種揃った時は、『マタン5』と呼ばれ、特殊な技を出す事が出来るのです」
七三君が興奮気味に申告してくれているけど、キラキラのお目々と握り拳で説明するその姿は、ヒーローショーを見ているお子様の様だよ。
……私には、悪の組織に改造された怪人にしか見えないけどね。
おっ? さりげなく精霊ちゃんが、七三君の乱れたお髪を整えていますね。出来る女つ降りを見せられて、ちょっとジェラシー。私だって、この場に彼が居れば……。
まぁ、それはともかく。
「マタン5かぁ。まぁ、良いんじゃない? 皆と仲良くしてね。……マタン…5。マタンが……五種……って! アレかぁ? うん。アレだよね」
「島主様?」
「精霊君達もマタンが、邪気に犯され無い様に気を付けてね。私もこの島を守るのを頑張るから」
マタンが邪気に侵されるのはヤバい。私はまだキノコ人間にはなりたくないからね。
「ところで、マタン達はどんなお手伝いをしてくれるの?」
「あ…えっと……。実はどちらかと言うと、最終進化を遂げた際が最強の妖精でして……。普段は茸を生やすくらいしか……やっぱり駄目ですよね?」
茸かぁ。椎茸・湿地・榎茸は欲しいな。作り茸や滑子・舞茸・木耳辺りも作れそうね。
「松茸やエリンギも作れちゃう?」
「見本と原木になり得そうな木材が有れば、彼等は何でも作れますが? まぁ、原木に関しては言えば、自身達で木材をそれ用に改良する事も出来ますので、心配は不要だと思います」
「嘘ッ? 本当に? だったら最強じゃん! 節度と程度を守ってくれれば、作ってくれてOKだよ」
茸は色々な料理に使えるからねぇ。えへへ。今から楽しみだなぁ。
「あっ! 人体や環境に影響を及ぼす菌は、くれぐれも飛ばさせない様に言い聞かせてね」
「勿論です。そういう攻撃技は、敵と戦う時に使う物ですよ、島主様。彼等は菌に関してのプロです。安心して下さい」
攻撃技なんだ……。誰と戦っているの? 邪気?
そして、マタン達よ。ポーズは取らなくて良いからね。
「あれぇ、マタンじゃん。このコ達も増えたんだ。島主様に、美味しく食べられなさいよ。主様、じゃあまたね~」
切り株から出ている、枝の切り口部分に肘を乗せて、緑属性のコ達と話していると、水属性の精霊さんが通り掛かり、問題発言を投下して何処かへ行ってしまいました。
いま……なんて言った?
「あぁ、そうでした。五種揃った事に興奮してしまい、すっかり忘れていました。彼等の傘肉は食用です」
「………………」
食えというのか? この極彩色豊かな茸を?
攻撃技として、ヤバい菌を持っている茸を?
いや、紅天狗茸は一部の方々に珍味扱いされているらしいが。でもアレは塩漬け一年以上で、旨味成分を抜きまくったヤツだろう!
うん。『解毒』は持っているよ。紫の薬草で作った、解毒ポーションも持っているよ。でも、ヘタレ代表の私は、食べる勇気を持っていないんだよ~!
「マタン。誰でも良いから、島主様に傘の肉を献上しなさい」
おいッ! 『誰でも良い』って何ッ? いや、選ばれても困るが……。
マタン達も止めなさい! アンタ達が『ぼくの頭をお食べ』をしちゃヤバいよ。
「どうぞ、島主様。彼等の傘肉は美味しいですよ」
榎な腕で傘肉を毟り取り、ヨタヨタとした足取りで、赤地に白いつぼ付きの献上品を持って近づいて来るマタン。
ねぇ、食べなきゃ駄目なの? マタン達よ。そんなに嬉しそうに揺れないで。踊らないで。
「過去にはマタン達の傘肉を巡って、人族同士で戦争も行われたそうです。おかげで個体数自体も減り、更に邪気の影響でモンスター化した者達は、冒険者達に討伐されて来ました」
「島主様はとても運が良いんですね。私共の見立てでも、極上レベルになっていますよ」
ドリアード達の御墨付きも出ちゃったよッ!
でも、そもそもマタン達は、紅天狗茸じゃ無いんだよね? この世界の人達も、食べた事が有るんだよね?
差し出された傘肉を受け取り、こっそり『解析』を掛ける私。まぁ、どちらかと言うと、分析に近いかな?
★ ☆ ★ ☆ ★
『赤マタンの肉。部位・傘』
赤マタンの傘の部分。食用。生食・可能。
つぼの部分にも旨味成分が濃縮されている。美味。
乾燥させて、スパイスとして使う事も出来る。
傘は暫くすると再生する。大体一週間(七日)くらいで、元の状態に戻る。
赤マタンに限らず、マタン自体が妖精の進化した姿である。
食用として使えるのは基本的に傘の部分だけだが、他の部分も薬の材料として使用出来る。但し、精霊の意思は精霊神界に戻る為、その後再生はされない。
★ ☆ ★ ☆ ★
……取り敢えず、食べても大丈夫みたいだね。
でも、やっぱり少し怖いから、いつでも解毒ポーションを出せる様にしてから……いただきます。
うん? 意外と美味しい? どっかで食べた味がする。
う~ん。何だろう? ……アレだッ!
「チーズハンバーグの味だッ! タレ無しで、チーズ入りのハンバーグを焼いた時の味がするんだッ!」
「この肉は、体内の無駄な脂肪を筋肉に変える働きが有ります。また、スープ等の隠し味にも使えます」
おぉ! 無駄な脂肪が筋肉になるのか。甘味の多いこの世界なら、戦争してでも手にいれたい品物だね。
七三君の話を纏めると、色によって味も違うらしい。
他のコ達も傘肉をくれたけど、何か痛々しく見えるなぁ。
貰った物は取り敢えず、マイボックスにしまいました。シアンにもお裾分けしちゃおう。
「えっと……見た目が可哀想だから、ポーション掛けるね」
有無も言わせず、HPの回復ポーションを掛けると、即座に元通りになりました。うん。これで心も痛まない。
やっぱり食わず嫌いは駄目って事なのかなぁ? その土地の物は、一度は食べてみないと失礼だと、聞いた事もあるし。反省。
「では、次の進化妖精を紹介させて頂きます」
えっ? 別の進化妖精?




