お花畑と精霊と蕃笳。
御付きなのか秘書なのか、よく分からないけど、私から離れないシアンを連れて館から一歩出ると。
「うわっ、凄い。花々が乱れ咲き! ねぇ、シアン。見て、綺麗だよね!」
「えぇ、リア様。ゲイル達もやりますわね」
門扉から果樹園迄の間は、色とりどりの花で埋めつくされていました。
ついこの間まで土一面だった場所は、近々お野菜等を植えるつもりでした。けど、先行してゲイル達が植えてくれたみたいです! ありがとう!
朝のゴタゴタの後に、以前からポイントで交換しておいた数々の種を、渡しておいて良かった。
「しかし、渡した種の数より多くないか? 何で?」
いくつか有る小道を通って、檸檬畑に向かいながら、何気に『鑑定』をしてみる。
手前側はハーブ類がメインらしく、途中からは野菜がメインになっていました。
配置に無駄が無い上に、所々に食べ物以外が植えて有るのは、ジーニアスの入れ知恵? なかなかやるわね。私も負けてはいられないよ。
ところで、偶にスペースが空いていて、更地になっているのは、蜜蜂の小屋を置く予定の場所なのかしら?
あと気になるのは、畑の周りのスペース。柵用に空間を開けているのかな?
「リア様。何故檸檬畑なのでしょうか? 手前に有る梨や桃では駄目なのですか?」
「う~ん。ピーチティーも美味しそうだよね。でも、最初はやっぱり、レモンティーが飲みたいからかな?」
のんびり歩いていそうな会話ですが、二人して軽く『速度』を掛けています。
端から見たら、競歩かランニングしている様に見えちゃうかも。けど、通常の速さで歩くと2時間くらい掛かっちゃうんだよね。
実は、シアン達には『距離圧縮』とかは入れられなかったんだ。『条件が満たされていません』と、出ちゃうのよ。……条件って何?
「あれっ? シアン。彼処何か有るよね?」
「何処ですか? あぁ、彼処だけ、中途半端に常緑高木が有りますね。彼方の方に行ってみますか、リア様」
果樹系の一番手前側、『桃』エリアの手前に有る一角。其処だけ変に緑の木々が入り乱れている様な。
「うん。取り敢えず行ってみよう。ジーニアスも付いていて、監修しているみたいだから、変なモノじゃないとは思うけど……。気にはなるしね」
「では、一旦そちらの道に入ってから、向こうへ行きましょう」
シアンの指差す左側の小道? ……中道? に入って、問題のスペースの正面に移動する私達。そこは十字路になっていました。
どうやら緑の一角は、私達の居る道の延長線上に有るみたいです。後ろを振り向くと、館が左手側に在りました。
周りには、お野菜の花々が仄かに香っています。
「取り敢えず、行く。気になるなら見に行く。これだよね?」
「そうですね、リア様。無意味なモノで有ればゲイル達に言って、畑に作り直してもらいましょう」
「……何をしているの? カール、ゲイル、ジーニアス」
「おぉ、丁度良かった。お嬢を呼びに行こうかと、思っていたところだ」
私達が着いた先は、高木と低木が取り囲んでいる、少し広めの更地でした。中には何も植えられていない、ただの土地。
その真ん中辺りで、ゲイル達が土・水・緑の精霊達と一緒に……ん? 緑の精霊?
「初めまして、島主様。僕達は緑属性の精霊です」
私達に気が付いた、七三分けの緑精霊の一人が、私の目の前まで飛んで来て、礼儀正しく御挨拶をしてくれました。えっ? 何で四十五度? 最敬礼だよねソレ?
最敬礼……あっ! 私、この島の代表だったわ。
「僕達については、後で改めて説明させて頂きます」
女の子タイプの緑精霊ちゃんは、男の子達の後ろでにっこりと微笑んでいます。今回は男の子の方が多い? 女の子一人に男の子四人。逆ハーですか?
しかし、相変わらずのゴスロリとフリフリだね。
女の子は緑のゴスロリ衣装ですが、スカート部分は正面の真ん中が開いて、股下三センチ位のフリフリが、内側に付いています。
白いニーソが見えるタイプ。おとなしそうな顔をして、チラリズムを狙ってる? あざと系?
「どうかしましたか、島主様?」
「う……ううん。今回のコも可愛いなぁって、思って……」
「えっ? あっ……いえ。あ、ありがとうございます」
何故か無意味に、二人して赤くなってしまいました。
反省。ラノベの転生ヒロインと違って、このコは逆ハー大好き肉食系女子ではなさそうです。
そして耳の後ろで二つに結わいた髪は、やっぱり毛先がドリルでした。もう諦めました。それより、今回は男の子の方の髪型がめっちゃ気になる。何で七三分けなの? ジェルか何か着けてますか? そしてみんな、相変わらずカラフルな髪色ですね。
「おい! 良いかお嬢?」
「あっ。ごめんごめん。何かな?」
「噴水が欲しいんだ。そうすると水の精霊が、更に活動しやすくなるらしい。次いでに此処を公園にして、休憩が出来る様にしたい」
成る程。公園ですか。良いんじゃない。問題は交換ポイントだけだけど……。
「私個人は全然問題無しだけど、今すぐいるの? 休憩となるとやっぱり、椅子やベンチみたいなモノも必要じゃない?」
「リアお嬢様には、噴水だけで結構でございます。後は私共にお任せください。必ずや、ご満足するモノを作ってみせましょう」
なんだかノリノリのジーニアスを見ていると、逆に心配なんですが……。まぁ、スキルは裏切らない。って事で、自分を誤魔化そう。触らぬ神に祟り無し。
「リア様。おら達勝手に畑を作っんだが、良かったんだべか?」
しゃがみ込んで何かをしていたカールが、こちらを伺う様な目で見上げています。
「うん。有り難うカール。蜂さんが受粉してくれたら、『成長』しようね」
「良かっただぁ。ジーニアスに言われて、種さ殖やしたけど、リア様に怒られるんじゃねぇかと、心配しただよ」
カールの手元をよく見ると、何かがニョキニョキ。花からすると、蕃笳かな?
すると、緑の精霊さんが蜂さん達を連れて来ました。蜂さん達が、アチコチに咲いた花から蜜を集めていますね。
しばらくすると、満足したらしい蜂さん達は何処かに飛んで行きました。
「『成長』……うん。これも良い出来だべ」
「わぁ! トマトだぁ。ねぇ、カール。一つ貰っても良いかなぁ?」
「美味しそうですね、リア様。私も一つ頂きます」
「どんぞ。どんぞ。おらは一つ有れば十分ですから、残りは全部貰ってくだせい」
遠慮なく頂きます。軽く『洗浄』した後、丸かじり。うっま~い。真っ赤に熟した果実はめちゃくちゃ甘く、仄かに酸味を含んでいます。
ふとカールの方を見ると……。
「良し、こんな感じだなぁ。土を被せて『成長』」
カールは『蕃笳』を地ベタで潰して、中身のゼリーを広げた後、土を被せて『成長』を唱えていました。
わぉ! こんな使い方があったのね。
またもや、ニョキニョキと出て来た新芽達。それらを周りの土ごと、精霊達が何処かに運んでいます。
「他にも増やしたいモノが有るなら、いつでも言ってくだせい」
そういう事か、納得した。だから、渡した種以上の畑が出来たのね。
だったら、アレもお願いしよう。絶対喜んでくれるはず。




