225/1310
よっつのこわい
しゃっという音と共に急に眩しさを感じた冬四郎は、低く呻いた。
「冬四郎さんもむつさんも、そろそろ起きなさいよ。もうお昼よ」
母親の声に冬四郎は、ゆっくりと顔を上げた。親に起こされるなんて、何十年ぶりかの事だった。
顔をあげると、目の前にむつの顔があり、冬四郎は慌てて周囲を見渡した。むつを部屋に運んで、そのまま眠っていたらしい。だが、冬四郎の肩には毛布がかけられていた。
「全く…部屋に居ないと思ったら。相変わらず冬四郎さんは、むつさんが可愛くて仕方ないのね。昨日は遅くまで何してたの?」
「へ?あーいや…何だろうな」
母親にじろっと睨まれ、冬四郎はあははと笑って誤魔化したが、家を抜け出した事はバレている気がした。
「むつさんも起こしなさい。お父さんが話があるって。2人とも書斎に来なさいって」
冬四郎が嫌そうな顔をすると、母親はすくすくと笑って部屋を出ていった。
仕方なく冬四郎はむつを起こした。眠たそうに目を擦っていたが、父親が呼んでると聞くと、急に目を開けて冬四郎と同じく嫌な顔をしていた。




