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よっつのこわい
「うわっ」
雨でぬかるんだ地面に足を取られ滑った。転びはしなかったが、バランスを崩してしまった。
やばいと思った時、腰に手を回すようにしてむつに引っ張られた。後少し遅かったら、確実に雷獣の稲妻が当たっていただろう。
「しろーちゃん、上」
冬四郎は空を見上げた。遠ざかっていた雷雲が、ゆっくりと戻ってきている。普通なら有り得ない事だった。だが、雷獣の稲妻が空に届いたという事だ。そして、これで雷獣の仲間が雲の上に居る事を確信出来た。
後は仲間の元に帰してやるだけだが、投げようにも雷獣に近付く事さえ出来ない。それにまだ、雷雲は真上まで来ていない。
「雷獣にもう1発くらい、雷をあげて欲しいね。そうすれば、仲間が確実に気付いてくれるはず」
むつも同じ事を考えていたようで、稲妻を避けながら、冬四郎に耳打ちした。同じ事を考えていた事に、少し嬉しさを感じたが、それよりもむつの声がかすれている方が気掛かりだった。
「お前、風邪ひいたんじゃないか?」
「いーま、そんな事言ってる場合じゃないでしょ?ばかっ」
確かにそうだった。




