よっつのこわい
冬四郎もむつの隣に座り、床に置いてある和本を手に取った。そして、むつの足の間で丸くなっている動物に似たモノが書かれていないか探し始めた。
「空雷?今光ったよね?」
「そこに居る変なのの稲妻じゃないか?」
むつは、ふーん?と言いながら、ぱらぱらとページをめくり、さっさと次の本を手に取った。
「お前、見るの早いな」
「動体視力良いから、かな?っとあった。達筆すぎて読みにくい」
ページを開いたまま、むつは和本を冬四郎の足の上に置いた。ペンライトを持ち、冬四郎は開いたページに光を当てた。
「らい、じゅう…?」
「雷獣って書いてあるな」
「他には何て書いてあるの?」
ぱりぱりと稲妻を放っている動物は、雷獣と名前を呼ばれたからか、顔を少し上げた。それに、気付いたむつが、顎の下を人差し指でかくように撫でている。雷獣は、ぱちっと稲妻を飛ばし気持ち良さそうに目を細めている。
「雷雨の日に雲に乗って空を飛び、墜落すると木を裂くような勢いだとさ」
「そう、雲から落ちちゃったのね。可哀想に。空に戻してあげないと…あいたたたたっ、爪が痛い」
戻して貰えると分かったのか、雷雨がむつに飛びかかり尻尾をゆらゆらさせている。
「ひぃーっ痛い」
喜んで足踏みをする雷雨をむつは持ち上げた。後ろの4本足の爪は長く鋭いうえに少し丸まっている。これが食い込んで痛いようだ。




