ちぇんじんぐ
「に、してもですよ。あの時、むつもよく逃げませんでしたよ。俺ならあの宮前さん相手なら逃げたくなりますからね」
西原の意味ありげな言い方に、冬四郎は渋い顔をしてウーロン茶を飲んでいる。車で来ている冬四郎は、呑めないのもつまらないのだろう。
「やっぱり宮前さんて強いんですね‼格好いいですよねぇ、俺もあんな風になりたいです」
むつ(祐斗)が本心でそう言い、にっこりと笑みを浮かべていると、冬四郎もまんざらではないようだった。
祐斗は中身が祐斗であるむつと、でれでれと楽しそうに話をしてる冬四郎を見て、少しだけむっとしていた。
祐斗は山上のタバコの箱を掴むと、冬四郎の額に向けて投げてみた。だが、当たらずにむつ(祐斗)が横から手を伸ばしてキャッチした。そして、箱をあけるとタバコをくわえた。何の不自然さのない動作だった。
むつ(祐斗)も変だとは思わずに、当たり前のように煙を吐き出している。
「あれ?」
むつ(祐斗)は首を傾げている。
「むつは吸うからだろ?身体は覚えてるってやつなんじゃないか?習慣みたいな…そんな事より、むつ‼何で俺に向かって投げたんだよ」
怒られたはずの祐斗は冬四郎を無視して、じっとむつ(祐斗)を見ていた。




