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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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ひとりきり

日付が変わろうとする頃、三人は駅の近くのファミレスに腰を落ち着けていた。


「…つまり、ね。彼は寂しかったのよ。何の弾みか妻と娘を殺し、自分も死のうとしたけど死に切れなかった。首に傷があったの、気付いた?切り傷があった。彼のお墓はあるから…一人きりの寂しさを感じつつ、とりあえず寿命を全うしたのかしらね?二人居たのは、言うなれば善と悪だね。善の方、立ってた方ね。生き霊に近かったねぇ生きてた頃に切り離された感情の残り物だよ」


むつは欠伸をしてドリンクバーでいれてきた、苦いだけのコーヒーを飲んだ。


「んで、言ってたね。相手を思いやる気持ちがどうのってさ。それを求めてたから祐斗に近付いたのよ、最初に会った時は何でもいいから興味をひきたかったんじゃないかな?」


「で?その気持ちとやらの籠った物を手に出来て満足?めでたし、めでたし」


西原がそう締め括った。祐斗は、そんなむつと西原の様子を見て気付いた事があった。


「西原さん、こうなるの分かってましたね?むつさんから聞いて」


「そうそう。聞いてた、けど何かあるかもって言われてたし祐斗君の初仕事だろ?見ておこうかと」


「むつさん‼西原さんも」


名前を呼ばれた二人は眠そうに目をしょぼつかせ、顔を見合わせて微笑みあっている。端から見れば、お似合いな雰囲気が何だか腹が立つ。


「ある程度、下調べをすれば結果の見えてくる事が多いんだよ。人の事に関してはさ、これ見せてなかったやつ」


悪びれもせず、むつはファイルを渡した。受け取った祐斗は、中身をみて不満そうに唇を尖らせた。吉岡についての事が事細かに書かれていた。きちんと、彼の死亡年月日と墓の場所まで。


「あの家はどうなるんですか?」


「警察が捜査に入って、家主がどうするか決めるんじゃないかな?吉岡さんは…どうなったのかな?それは分からないな。報告書あげるまでに、見極めてくれたら良いよ」


そう言われた祐斗は、甘くしたコーヒーを飲みながら次に時間を作って、吉岡がどうなったのか、何故そうなったのか調べようと決めた。


むつと西原は、思ってる事がそのまま表情に出る祐斗を見て、面白そうに、そして期待を込めたような安心したような目をしていた。


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