ひとりきり
「むつさん、持っててください」
祐斗はむつに懐中電灯を渡し、板張りされているドアを照らして貰う。その間に、釘が打ってある板を無理矢理剥がそうとした。
苦戦している祐斗を見て、西原が手伝おうと近付くのを、むつが服を引っ張り引き留めていた。
めきめきと音を立てて、釘が抜けたのではなく腐っていたのか板が割れた。祐斗は、少しだけ荒くなった息を整える事もせず次の板に手をかけた。
指に力を入れているから、だんだん指も痛くなってくるし汗も浮かんできた。だが、そんな事を気にしてる余裕はない。
「はぁ…はぁ…」
一旦、手を離した祐斗はドアに両手をついて思いきり板を蹴りあげた。板は割れるでも外れるでもなかったが、ドアには小さく穴が開いた。
「むつさぁん」
仕方なさそうにむつは、ドアと板の間に指を入れドアに足を置いた。足でドアを押しながら板を引っ張ると、板はめきめきと音を立てて割れた。ドアにも穴が開いた。
「むつ、どいてみ?祐斗君と一緒に体当たりしてみる」
西原からペンライトを預かったむつは、後ろに下がった。そして、祐斗と西原は勢いをつけ肩から板にぶつかっていった。簡単にドアはやぶれ、祐斗のそのままドアと一緒に倒れた。
「うわっ…何ここ」
ペンライトを西原に渡し、むつは祐斗を起こしながら部屋を懐中電灯で照した。




