ひとりきり
吉岡の家に向かう前に、むつは寄り道をすると言い駅のロータリーで車を停めた。そして、誰かに電話をかけた。素っ気なくも、電話の相手に車のナンバーだけを言い切った。
何をしようとしてるのかと、祐斗が聞こうとするより先に、助手席の窓をこんこんと叩かれた。見ると、西原が立っていて、さっと後部座席に乗り込んできた。
「おまたー。少しは寝れた?」
「寝れるわけないよな?ま、お互い様だ。可愛い可愛い、祐斗君の為だから」
「あっそ。で、祐斗こっからは道案内して」
「あ、はい。あっちです」
「さめて、左右で言ってよね」
祐斗が指をさしながら言うと、むつは文句を言ったが、くすくすと笑いながら再び車を走らせた。
「あの…何で西原さんが?」
「その吉岡って人を調べるのに協力して貰ったの…その資料は先輩が調べてくれたやつ」
「事件性ありそうだからな。…書いてあると思うけど、その住所の家はもうずいぶん人は住んでないんだよ。一家行方不明、でな」
「いや、でも俺が行った時は電気もついてて綺麗でしたよ…あ、むつさん次を左です」
「はーい。まぁ行けば分かる。…ねぇ祐斗、最近思うんだけど、あたしらって警察の手柄に協力的すぎると思わない?」
「え?いや…そうですか?けど、むつさんも西原さんが出世したら嬉しくないですか?」
「そうだぞーむつ。篠田さんが出世するより恐ろしい事はないだろ?」
西原の言いように、むつと祐斗はそれぞれ違った意味で微妙な顔をしていた。




