ひとりきり
祐斗は、じっと依頼用紙を見つめた。何も言わない祐斗を気にしてるのか、むつが気遣わしげに、ちらちら見ていた。
「あのさ…」
ろくに吸わずに灰が長くなったタバコをもみ消し、むつは次のタバコをくわえた。
「仕事の前に言う事じゃないけど。嫌なら辞めても良いんだよ?バイトなんて沢山あるし、将来に役立つかって聞かれたら、度胸はつくよぐらいしか言えないし」
そんな事を言われるとは思わなかった祐斗は、目を見開いてむつを見ていた。
「バイトなのに責任どうの何て言われたくないかもしれないけどさ、やるならどんな事でも最後までちゃんとやって欲しいわけ。あたしとしてはね。無理な事をやらせようとは思ってないよ、出来ると思ってるから任せたいわけで…うん。何か言ってて思うけど、あたしちょっと面倒くさいタイプの先輩っぽい?」
一息に言ったむつは、大きく溜め息をついた。そのひょうしに、タバコが口から落ちた。
「あーっ落としちゃった」
「火つけてなくて良かったです」
拾い上げた祐斗は、長いままのタバコを半分に折り灰皿に入れた。
「ありがと。で、どうする?ここで降ろしてあげても良いけど」
「降りませんし辞めません」
意外なほどに、きっぱりと言い放った祐斗は、少し自分でも驚いてるようだった。
「良かった。…社長と連絡待ってる間に、何かがあってもう辞めたいとか言い出されるんじゃないかとかって色々気になってたんだよね。祐斗が居ないとつまんないし、寂しいからね」
むつが安心したように、笑みを浮かべていた。祐斗はそれを見て、照れたのか耳が熱くなってるのを自分でも分かっていた。




