第2章:おはよう
第2章:おはよう
「本当に君なのか?……アイリ?」
その日、私はようやく気づいた。アイリの魂が私に繋がっていたのだ。それは私を喜ばせると同時に、恐怖でもあった。最初は信じられなかったが、彼女がかつての自分の身体に戻ったことで、それが証明された。神であった時よりも、彼女はさらに威厳に満ちていた。普段よりも背が高く、大柄で……そして私に一つの約束をしてくれた。
「私のそばにいるときは、いつも自分の本当の姿でいるから」
彼女の顔に小さな笑みが広がった。それを見るだけでも、私の心は温かくなった。彼女の頬に触れたかったが、自分の中にはその勇気など微塵もなかった。彼女を救えなかったのは私なのだから。神様が私の祈りを聞き届けてくれ、アイリを私の側に連れ戻してくれたに違いない。アイリの死からこれほど長い時間が経った理由は、実は私がこの悲しみに耐えられるかどうかにかかっていたらしい。なんとも皮肉なことだ。
その夜、私はアイリと一緒に部屋へと戻った。部屋に入るとベッドに倒れ込み、彼女も私のそばにやってきた。ベッドに腰掛けて微笑んでいる。今度はためらうことなく、彼女の柔らかい頬をそっと撫でた。その滑らかな肌に触れるためなら、私はどんな犠牲だって払う……。あぁ、どうでもいい、彼女はついに私のものになったのだ。違うか? 私の思い通りだ。ゆっくりと小さな身体をベッドの方へ寄せ、丸まるようにして潜り込んできた。もう神様ではない。私のアイリだ。私のものだった。これからもずっとそうだ――彼女さえ望むなら。私はこれ以上引き延ばさず、自分の頑固さを引っ込めてアイリの背中へと寄り添った。彼女も微笑みながら私の腕の中に収まり、ほんのりと頬を赤らめていたが、自分の顔をベッドの布団に埋めていたので、アイリには気づかれなかっただろう。これでよかった。今のところは。
朝になると、彼女はもう私のそばにいなかった。ナラが部屋に入り、朝食を運んできてくれていたからだ。彼女はこれを強制されていたわけではなく、自分がやりたくてやっていることだった。私はこの想いを誰かと分かち合いたかった……。アイリが私に繋がっていることを。しかし、私の胸の奥の声がそれを口に出すなと必死に懇願していた。私は黙り込み、そのままやり過ごした。ナラは微笑み、私もそれに倣った。まるでアイリを裏切ったかのような罪悪感に襲われたが、彼女はそんな人間ではない。自分が信頼している相手に嫉妬するような人ではなかった。あぁ、今日は大イベントの日になるだろう。ナラは少し興奮気味だった。
「どうしてそんなにそわそわしているんだ?」
ナラはすぐに答えた。
「今日、アキラと目が合ったの!」
そう、あの冷酷で利己的な男に片思いをしている親友――いや、正確にはアイリの友人である彼女は、あの呪わしい男に恋い焦がれていた。あの男を相手にするだけでも大変な苦労だろう。
「それがどうしたっていうんだ?」
あの男の名前を聞くだけで私の声は冷たいトーンになり、いつもの調子に戻っていた。しかし、ナラはそんなことに少しも動じず、相変わらず微笑んでいた。
少し声を大きくして、ナラが言った。
「ナラ、今日はフェスティバルがあるのよ!」
「何のフェスティバルが急に湧き出てきたんだ?」
「フェスティバルよ!」
ナラは勢いよく言った。
「冬のフェスティバルに決まっているでしょ!」
彼女は隠し切れない興奮を漂わせていた。そして、ついにその日がやってきた――。フェスティバル係兼ゴミ拾い担当の星野夜(Hoshino Yoru)。あぁ、呪わしい、本当に私なのか!? もちろん、着替えてフェスティバルの準備をしている何人かの生徒たちのところへ向かった。そこで私たちは祭りの飾り付けを行い、料理やデザートの準備は女子たちが担当することになった。
最初の飾り付けのためにダンボール箱を運んだ。レム(Rem)は豪快に3つの箱を両肩に担いで運んでいた。私も負けじと持とうとしたが、結局最後には箱の下敷きになって地面に潰れている自分を発見した。まぁ、自分の身体に過度な負担をかけないように一つずつ運ぼう。箱は校舎の地下1階にあるシェルターに保管されていた。私たちは荷物を抱えながら上へ、そして裏庭へと向かった。裏庭には教師たちの机と椅子が綺麗に配置されていた。上から見ると、机はまるで平行な一本の線のように整然と並んでいた。飾り付けの入った箱を積み上げた後、私たちは箱を開けた。クラウス(Klaus)がすぐに駆けつけ、彼もいくつかの箱を持ってきてくれた。
「センセイ、これは何ですか?」
「あぁ、これらか?」
彼は指示するように話し、そして額の汗を手の甲で拭った。
「これはテーブルクロスと食器類だ」
「これを誰が並べるんですか?」
私は疑念を抱きながら尋ねた。頼むから、神様、この仕事を私たちの頭に押し付けないでくれ……。
「お前たちに決まっているだろう、私がやるのか?」
彼は意地悪そうに笑った。
「冗談だ、早く終わらせてこの仕事をさっさと済ませなさい」
私は深く息を吸い込み、心の中で感謝した。それからゆっくりと飾り付けを進めた。クラウスがテーブルクロスを敷き、皿やナイフ、フォークを並べていった。
約1時間ほどで飾り付けは完了した。その時、ナラが建物の中から出てきた。彼女は様々なクッキーが乗ったお皿を運んでいた。片手で親指についたクッキーのチョコレートを舐めながら歩いている。その背後には、ミル(Mir)、クリヤ(Crya)、そしてニーナが続き、次々とケーキやパン、菓子類を運んできた。私たちはそれらをすべてテーブルに配置し、大部分の作業は庭で完了した。合計で24人の生徒と6人の教師が参加していた。
F-10、F-11、F-12、およびK-1、K-2、K-3クラスの教師たち。Fクラスの生徒は戦士であり、Kクラスは応急処置や医療の役割を担っていた。Fクラスの人数が減るにつれて階級が上がり、Kクラスの人数が増えるにつれて階級が上がっていく。そしてこのフェスティバルでは、階級が上がった者たちが呼ばれ、皆の前で称賛されるのだ。私は森に近い側のテーブルへと向かった。飾り付けの一つを、レムからアキラへの嫌がらせのつもりで放り投げたのだが、キャッチし損ねて地面に落としてしまった。飾り付けを拾い上げたとき、地面にぽつりと真っ赤な血の滴が落ちた。どうやらどこかで出血していたらしい。私は何事もなかったかのように、ゆっくりと歩きを進めた。
茂みの中から聞こえてきた物音に私はギョッとした。足取りに慎重を期す。アイリは私の心の中で危険を知らせ、そこから離れるようにと告げていた。しかし、私は彼女の言うことを聞かず、茂みの間へと踏み込んだ。地面に見つけた髪の毛は、滑らかで、漆黒、そしてまっすぐで清潔だった……。だが、その髪の毛がつながっている頭部と身体の位置がおかしかった。その日、あの悪夢の中で見た太陽が、不気味な赤い色に染まっていた。まるで一つの惨殺された人間をグロテスクに嘲笑うかのようだ。私は胃の腑が持ち上がってくるようなそのおぞましい光景から視線を外し、すぐ近くの木に寄りかかっている別の遺体を発見した。バラバラに引き裂かれ、まるで獣の狩りであるかのように、カモシカを食べるために皮膚を剥ぎ、中の肉をもぎ取ったかのような凄惨なありさまだった。私は冷徹に、表情を変えず、任務の遂行だけを意識した。なぜなら、これに類する多くの遺体をすでに見てきていたからだ――。
そして何よりも私の心を痛めたのは、その凄惨な遺体の一つが、アイリの身体そのものだったという事実だった。私はゆっくりと、いつも着用している手袋を取り出し、周囲から羽毛や髪の毛を拾い集め、血液を数ミリリットル採取して自分のバッグにしまった。アイリは心の中で心配そうな様子を見せていたが、今はいくらか落ち着いていた。
誰かが私を呼んでいた。「夜! 早く来いよ!」
それはニーナの声だった。私はこの女が心底鬱陶しかった。毎日私の後をついてくる……。私は思わず舌打ちをせずにはいられなかった。フェスティバルの会場へと向かうと、数人の男子たちが私に近づき、話しかけてきた。その後のフェスティバルが始まった。誰もが静かに座って食事をし、教師たちが代わる代わるスピーチを行った。私たちはできる限り注意深く聞いていた。こういう場はたいてい重要な発表の場なのだ。私は自分の昇格を待ち望んでいたが、まったくそんな気配はなかった。不機嫌そうな顔をしていると、レムが私の隣に座り、その手を私の肩に回して優しくさすった。私はほんの少しだけ微笑み、目の前のケーキから一口分を口に運んだ。
階級判定の儀式が終わると、教師たちから直接の講評があり、必要不可欠な情報が伝えられた。飲食の時間が終わると、全員がそれぞれの皿を片付けた。フェスティバルの夜が更けると、みんなは自分たちの部屋へと引き揚げていった。
私の夜も同じように過ぎていった。ゴミや飾り付けを片付け、整理する。本来ならナラが手伝いに来るはずだが、周囲には誰もいなかった。体調が悪いのか、確かなことは分からない。仕事が終わると、疲労困憊でベッドに倒れ込んだ。
アイリが心配そうに、か細い声で話しかけてきた。
「夜……その子に気をつけなさい。彼女は信用できない」
私は彼女の方を向き、自信満々の態度を作って言い放った。
「はっ! 私があいつを圧倒してやるさ。それに戦略的に動いている。……誰がこの死体を作ったにせよ、私が必ず突き止めてやる」
アイリは動きを止め、今回は真剣な表情だった。
「あなたに対する戦略は通用しないわよ、夜。自分を大切にして、このことを上の階級の者たちに報告しなさい」
またしても彼女の不安そうな声が聞こえてきた。私は思わず舌打ちをした。彼女にこれ以上心配をかけたくなかったからだ。その不安そうな表情を見るだけで、私の胸が痛んだ。しかし彼女はそのまま眠り込んでしまった。疲労困憊した私の身体は、ベッドが与えてくれる最低限の快適さにすっかりと身を委ねており、生産された乳酸のせいで全身の筋肉に重く負荷がのしかかっていた……。
朝までぐっすりと眠った睡眠は、私をひどくリフレッシュさせてくれた。これほど快適に眠れたのはいつ以来だろうか。ここ二日間、途切れのない深い眠りを取れていたおかげで、以前よりも効率的に作業ができていた。率直に言って、校長もこの結果には満足しているようだった。
寝台から起き上がる前に、私は一枚の紙に現状を書き記して報告書を作成した。そして、
「カミ(Kami)」
という名前の召使いにそれを渡し、その手紙を校長へと届けてもらった――はずだった。




