st.06 ホーリーデイズ #1日目
『ひゃっほーーう!!きんっもちぃーーー!!!』
火を焚きまくって全速力をだす機関車で斜面を駆け降りる。
『今までは規則だなんだでこんなことできなかったからなーーー!!』
シゴナナはこれでもかと煙を吐き、爆音で動輪を回す。俺は椅子に座って叫びまくる。副機関士は...あれ?誰だっけ?まあいい。そんなことを考えていると、いつの間にか斜面は終わり草原を走っていた。目の前には終わりの見えない鉄橋が。
『かまうもんか!もっとスピードを出すぞーーー!!!』
鉄橋を渡りはじめた途端、後ろの方からぱきっと音が聞こえた。
『なんだぁ?』
パキッピシッパキパキッメリメリメリゴキャッ!
『ああ、なんだ、橋が壊れてるだけか。』
バキバキバキバキバキバキ!!
『逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
機関車にも勝つほどの爆音を上げながら、橋が崩壊を始めていた。
『ヤベェェェェェ!!ゼッタイオチタラシヌゥゥゥゥゥゥ!!!!』
おおごえでさけぶさなか、ふと顔をあげ前を見ると、目の前に橋が無かった。
『うわ、うわ!うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ...あ?」
無理やり目を開け体を起こすと建物の中。便所から小川町が顔を出してきた。
「うなされてましたねー。大丈夫ですか?」
寝起きで鈍い脳みそをフル回転させて事態を把握した。ここはエラール大陸鉃道社の社員寮の中、昨日から入寮した。そして、ベッドで寝てたら持ち前の寝相の悪さで落下したというわけか。
「今、何時だ?」
「10時35分です。」
...は?
「朝飯なら僕が八坂さんの分までもらいましたよ⭐︎」
その瞬間、限界を超えて使っていた俺の脳が爆散した。
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二時間後
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『え〜次はぁ〜、ウィッツ・センブル〜、ウィッツ・センブルで〜ございます。お出口は〜右側でぇす。お降りの方はお忘れ物のないようにご注意くださ〜い。到着で〜す。ドアが、開きま〜す。』
「つ...つつ...ついたあ!!!」
寝起きからわずか二時間、今は12時24分。何をとち狂ったか、俺は街へときている。いや、引っ張られている。
「さすが中央交易都市!人の数も、品物の数も、店の数も!操車場周辺とは大違いだ!!」
隣で小川町が叫ぶ、はじゃぐ、感嘆するの3連単チャンリンシャン。ちくしょう、流石にイラっときたぜ!
「テメーはいーよなー!フツーの二倍飯が食えたんだからよー!」
「ちょ、怒ってんですか?八坂さんが起きてれば食えたんですから。そもそも朝飯は朝9時には閉まりますから、食っても食わなくても同じことです。」
飯がないか見渡すと、何か違和感がした。
...なんだ?この違和感...。なにかかみあっていないような...。
「お!飯屋ありましたよ。昼飯時ですし、食べちゃいましょうか。」
看板を見ると、「ルアメン・ウィルエンデス」と書かれている。店名だろうか?店に入ると意外と質素だった。メニューはない。席に着くと、若い男が冷やを置いた。
「25ダルです。うちはルアメン一筋なんでね、金を払うか払わないかで聞いとるんです。」
(やけに説明的だな)
「じゃあ、払います。三人前。」
ルアメン3つ〜、と叫んで男は厨房に消えていった。
「なあ、ダル...持ってるか?」
「もちろんですよ!ヴィルス社長が『今月分の生活費だ!』っておばちゃんに預けてたみたいで、朝飯ん時に渡されたんです。一人3万5000ダル。八坂さんの分も佐伯が預かってたと思いますが...もらってません?」
不意に佐伯が目を逸らす。その瞬間、椅子を倒しながら立ち上がり叫んでしまった。
「おま!佐伯!やりやがったな!」
「八坂さん!抑えてください!八坂さん!!」
「返せ!金!マネェェェェ!」
佐伯がしぶしぶと麻袋を取り出す。
「へあ!」
奪い返した麻袋の中身を開けると、そこにはきっちり3万5000ダル入っていた。なぜ分かるのかって?それはわからん!何故かコインを見た瞬間、それが何ダルかが一瞬で理解できたのだ!
「お菓子買おうと思ったのに...シクシク...」
「売れない恋愛小説のヒロインみたく萎れるんぢゃない!元はと言えばお前が悪いんだから...」
その横で小川町がまあまあといっていた。
「ほら、ルアメンもできたみたいですし、一旦このことは水に流して...」
「はい、おまちどぉ。」
ゴトゴトと3つの『どんぶり』が置かれた。中を覗き込んだ瞬間、独特なあの濃厚な匂いが鼻の奥をついた。細長い麺、茶色いスープ、そして、極厚のチャーシュー...
「こ、これは...」
「なんていうか...」
『ら、ラーメンじゃないか!!』
名前こそ違えど、まさしくラーメン。しかも濃厚味噌。この世界になぜ味噌とラーメンが存在するのか...と、普通の人なら考えていただろう。しかし、私は異常である。しかも極度の空腹状態ときた。そう、俺は、人目も構わずがっついてしまった。
「や、八坂さん...?そんなに急がなくてもラーメンは逃げませんよ...。」
「もがもがもが!!」
「ちょ!口に入れたまんま喋んないでください!うわツバとんできた!!」
ズゾゾゾゾゾゾッッゾゾゾゾゾッゾゾゾゾォォォォォ......
...数分後
「あー食った食った!じゃあおめぇら、この後買い物も行くからな、さっさと食い終われ...よ...」
佐伯の方を見ると、すでに13枚のどんぶりの山ができていた...。
「ごちそうさまでした!」
ちな、私は1枚である。
「...佐伯よぉ、てめぇ、金は払うんだよな?」
「もちろんですよ!食い逃げなんて絶対にしませんから。」
そういうことじゃないのだが... やれやれ、この分だと生活費3万5000ダルはすぐに消えそうだな...。
「おっさーん!おかんじょー!」
「はいじゃあにいちゃんたちは25ダル。そこのねーちゃんは13枚ぶんで325ダルね。っていつもはいうんだけどね、ねーちゃん気に入ったよ!いい食いっぷりだったから一枚分おまけしちゃる!計300ダルでいいよ。」
きゃーやったーと佐伯が喜ぶ横で、舌打ちをする男が二人。
「いーもんですねー女ってのはッ!」
「おーそーだなお前に同感だよほんとッ」
すこしして店を出ると、通りは人で溢れていた。
「僕たちみたいに飯屋から出てきたみたいですね。」
人でごった返す中、一際人の多い区画が円形にできているのを小川町が発見した。
「なんでしょうあれ?いってみますか。」
人混みを掻き分け円の中心をなんとか覗くと、出店のおっさんに異様な見た目をしている...ヒト...なのかあれは?赤みがかった肌に茶色い髪、そして、頭から生えた鋭い角...明らかにヒトではなく見える。異形、一言でいえば異形の者が罵倒されていた。
「うるせぇな!何度も言わせんなこの魔族!!おめぇなんかに売る品物なんてここにはねぇ!さっさと失せな!!」
異形が地面に頭を擦り付けた。
「そこをなんとか...!お願いします!ここ3日、水しか飲んでないんです!!パンの...パンの一つでいいんです!!」
「だぁかぁらぁ!!おめぇに売るもんはねぇっつってんだよ!!」
なんだこれは...?なぜ...なぜ観衆は助けようとしないんだ...?
「小川町...パンをいくらか買ってこい。」
「え?なんで...」
「いいから!ぐずぐずするな!!」
おっさんは罵倒を続け、ついには蹴り始めた!
「オラ!さっさと消えな!これ以上動かないようなられっきとした営業妨害だ!!警察呼ぶぞ!!」
クソッ!結局こうするしかないのか!
「ま、まあまあおっさん。そうカリカリしてたら心臓に悪いぜ?一旦落ち着こって...。」
「お前、こんなやつの味方でもするつもりか...?ああ、そうか...その服、ニンゲじゃねぇな...。お前もグルだな!?この魔族め!!そんなチンケな変身呪文で俺様の目を欺けると思うなよ!!」
「ちょっとちょっと!いきなりなんだよ!!おれただの人間だぜ!?ほら、ツノも生えてないし肌もどっちかっつーと白っぽいほうだ!!」
「ニンゲのだれがそんな変な服を着るか!!待ってろ!今すぐに警察呼んでブタバコにぶち込んでやる!!」
ブタバコ!?誰がそんなとこ行くか!ちくしょうめ!
「ついてこい!!」
俺は走り出した。異形を引っ張って、人混みを掻き分けて、裏路地に入り込んだ。
「逃げる気か魔族共!?捕まえろ!犯罪者だ!!」
遅い!!たくさんの人が壁になってくれて助かった。たくさんの建物の屋上でに倒れ込んだ俺を、誰かが爪先でこづいた。
「八坂さん...何やってんですか...!?」
「...ヒト助けだ。パンをくれ。」
小川町から受け取ったパンを持って角に震える異形に手渡した。
「...なんのつもりだ...?」
「言ってるだろう?ヒト助け。」
「ニンゲに情けをかけられる義理なんてない!そんなもの不要だ!」
「3日も食ってないんだろう?意地張ってないで食え。あと俺たちはニンゲじゃない。」
気がつくと異形は、口いっぱいにパンを頬張っていた。(意地が緩いな...)
「ふぁあふぉふぁふぇふぁふぃふぁふぁふぃふぉふぉふぁんふぁ!?」
やばい...全く聞き取れん...。固まっていると、小川町が通訳を始めた。
「じゃあお前たちは何者なんだ!?といっています。」
何故分かるんだ...
「そうか...俺たちは簡単にいうと異世界人だ。この世の人間じゃない。よって、俺たちはニンゲじゃない。」
「そうか...じゃあ、ありがとうございました...。無礼をお詫びします。」
いきなりの敬語に少々面食らってしまったが、口を聞いてくれたよかったと思う。
「ですが、ぶっちゃけ助けはいりませんでした。」
「は?」
色々と驚いていると、今度は後ろから声が聞こえた。
「瞬間移動、できるんで。」
うお!びくった!!
「まあ、今日は本当にありがとうございました!パンとか、諸々。」
彼は深々とお辞儀をして、最後に言ってきた。
「僕は、魔族ではありません。センメです。この世に魔族なんていません。覚えといてください。そうそう!僕の名前はピューリッツァー・シュバウト!また会いましょう機関士のお兄いさん!!」
彼は旋風に包まれたと思ったら忽然と消えてしまった。それにしても、なんで俺が機関士だってわかったんだろう?
「それに関してはほら、胸。機関士バッヂつけっぱですよ?」
うお!ほんとだ!ってか何気にこのバッヂ初登場なんだけど大丈夫!?
「じゃあ、ま、疲れたし帰るか!」
そういえば、佐伯のやつはどこいったんだろう?
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その頃
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「このドーナツ美味しい!この串焼きも美味しい!ああー涎がとまらん!あ、おじさーん!この商品ぜぇ〜んぶちょうだい!」
この日佐伯は、一人で食い倒れをし1万ダルを溶かしたという...。
更新遅れました!今回は結構長めですねぇ。
次回、異世界旅客鉄道第7話、ホーリーデイズ#2日目!次回もサービスサービス!!




