st.05 国鉄風味
「その服は向こうの制服だな?入社するからにはこちらの制服と制帽を着てもらう。...規律だからね。ユーウィン!」
呼ぶより前にユーウィンが服を持ってきて机の上に広げた。
「これがエラ鉄の制服だ。」
(その呼び方ほんとにあるんだ...)
制服を見た瞬間、違和感となつかしさが同時に込み上げてきてしまった。
「これは...国鉄の制服!?」
黒の制帽に黒のズボン、そして三つのボタンのついた黒の上着。いつか父の着ていた国鉄服そのものだった。
「なんで...!?」
「40年前、『アクツ・ヨシノブ』という男が君たちと同じように転移してきた。ああ、ちなみに言うとな、君たちのような転移者は結構多いんだよ。」
阿久津由伸!日本では結構有名な鉄道系動画配信者だ。数年前に突如行方不明になり、つい先日捜査が打ち切られたと報道されていたが...まさか40年前のエラールに転移していただなんて...。
「彼がな、こんな惨状なんですから制服とかも諸々取り替えて心機一転、初めからスタートしましょうよ、と自分でデザインしてきてな、社員にも好評だったから変更したんだ。まあ、彼の改革はそれきりになってしまったがね...。」
「なにかあったんですか..?」
「轢かれたんだよ...列車に...。そのまま起きることはなく、プロジェクトは中断された...。」
「なんと...!」
「よし!説明終わり!入っていいぞー」
両開きの扉を大きく開け、勢いよく人が入ってきた。
「どうもー!あくつーよしのぶでぇーす!」
「と言うわけでさっき話してたアクツ・ヨシノブ君だ。」
『いや生きとるんかぁぁい!!』
三人でひっくり返る。
「いつアクツが死んだと言った?」
倒れたソファにへばりつきながら半ば叫びがちに答えた
「いや!さっきの言い方的に!」
「もー勝手に殺さないでくれよー!ただ1ヶ月寝てただけだって!」
「ただとは言うが1ヶ月寝てるのが異常なんだ!」
「まあ、まあ、そんな怒んなよ!『八坂機関士』!」
なぜ俺の名前と職業を!?
「なぜ俺の名前と職業を!?って思ったろ〜。そりゃわかるさ!お前の走らせてるSLに乗ったことがあるからな。
」
俺たちの時間で5年前、俺が運転していた福島のSLの、主要乗務員紹介を覚えていたらしい。機関車の番号とヘッドマークでピンときたそうだ。
「俺はもう70になっちまったが、お前さんはまだまだ若いもんだな。見るからに俺と同世代だろう?ブルトレブームが終焉を迎えた年の生まれってとこかな...。」
「いやー、感激ですよ!一回会いたいと思ってたんです!動画は楽しませてもらいましたよぉ〜!」
「ありがたいもんだねぇ。とりあえず、日本人同士仲良くやっていこうじゃないの。」
話に区切りがついたところで、かねてからの疑問を口にした。
「この国鉄味溢れる改革、絶対あなたの趣味ですよね?」
「あ、やっぱしわかった?いやーやっぱさ!おれ国鉄大好きだからさー!ああ、そうそう、さっきのヴィルスの言葉は訂正させてもらうよ。俺の改革は服装以外にもう一つ成功した。」
窓の外を見ろと言われたので外を見る。
「なんか気づくことはないかい?」
気づくことといってもなぁ、ブルトレが止まってるだけ...ん?ブルトレ!?
「その顔、わかったね。」
「まさか...これ...」
「そう!全ての客車設計書をブルトレに書き換えた!」
『ナニヤッテンダオマエェェェェェ!!!』
ヴィルスを含め、その場の全員が叫んだ。
「設計部は誰も気づかなかったのか!?」」
「あの頃はやることばかりでしたから...。」
「趣味に走りすぎだろ!」
「あははははははははは!!!」
「わらいごとじゃねぇ!!!」
大騒ぎしていると、急にアナウンスが流れた。
『ヴィルス総裁閣下、ヴィルス総裁閣下、至急中央ナビゲーションルームまでお越しください。』
「や、行かなければいけないな。まあすぐ戻ってくるから話の続きはそこで...」
「閣下、この後は仕事が入っております。」
「じゃあ仕事を終えてから...」
「その後は三族議会への出席です。こちらは深夜まで続くでしょう。」
「じゃあ明日...」
「明日はユビィラ地方路線の視察が入っています。...空きがあるのは明々後日です。」
「よしわかった。明々後日に話の続きを。またこの部屋に来てくれればいい。」
ありがとうございましたと一礼し部屋を出ると、ユーウィンに止められた。
「操車場の北門を出ますと左手に社員宿舎があります。本日からご利用できますよう手配致しましたので、明々後日まで宿舎でお休みください。あと、ニホンの金はこちらでも使えるようになっていますのでご安心を。」
「何から何までありがとうございます。...ちなみになんですが、僕たち以外に日本人の社員さんはいるんですか?」
「アクツさん以外はいませんね。」
「そうですか...。」
建物を出るとすでに日は傾きはじめ、街灯で道が照らされていた。長い歩道を歩き北門を出ると、すぐに宿舎が目に入った。
「ここか。」
中に入ればガチ宿舎で、右側にあるカウンターにおばちゃんが座っていた。
「はいはい、例の新入りさんね。部屋ですけどね、男は2人で一部屋ね。女の方は他の人と相部屋。まあここにはいい人しかいないから安心しなね。はいこれ鍵。どっちも二階にありますからね。」
素晴らしいほどにザ・オバチャンな対応。
「ありがとうございます。」
「ご飯ですけどね、食堂が午後七時から午前7時の間でやってますから、その間に食べてくださいね。お風呂はそこを右に曲がって突き当たりまで行くとあるから。男湯女湯ともに24時間入れます。自動販売機もありますのでね、牛乳とかも飲めますよ。あとの細かいことは先輩たちから聞きなさいね。」
『はーい!』
階段を上がって自分の部屋を目指す。
「225...225...ここか。」
その後の記憶はない気がついたら布団で寝ていた。
「なんか...修学旅行みたいですね。」
隣でつぶやく小川町を無視し、そのまま寝入った。
更新遅くなりました!話が一向に進みませんねぇ、どうしてでしょう?




