st.04 サーフェンス操車場
看板を過ぎ、丘を駆け上がると、目の前に広大な盆地が現れた。
「あれが...サーフェンス操車場!」
レールが円形に配置され、大量の列車が行き来する。一番端にある放射状に広がったレール達は、それぞれ30の地方へと向かうのだという。
『形式番号 C57-182 6番車庫に来れ』
突然横から声が聞こえてきた。しかし、どこを見てもスピーカーのようなものはない。
『形式番号 C57-182 早急に 6番車庫に来れ』
こいつ...脳内に直接!?
「な、なんか呼ばれてません...?C57−182って...」
「ああ、そうだな...進むしかないか...」
いつものようにハンドルを押し込めば、いつものように滑り出す。丘を下って、列車はサーフェンス操車場へ足を踏みいれた。
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6番車庫
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「私が今回整備を担当する。ライクルと呼んでくれ!」
目の前の男がそう挨拶した。薄青の作業着に身を包み、頭にタオルを巻くその姿は整備士を絵に描いたようだ。
「よろしくお願いします。...この機関車...見たことありますか?」
「いや、初めて見る形だ...ああ、そうそう、総裁がお待ちだ。早く行った方がいいぞ!」
「あの、総裁殿はどこに...?」
ライクルは円の中央を指差して言った。
「『エラール中央総合司令センター』だ。」
見るとそこには、都庁に匹敵するほどの大きさの、巨大な円筒形建造物がポツンと置かれていた。
「了解です。それでは、頼みます。」
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エラール中央総合司令センター
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「やぁやぁ!あんたが噂の男かい!ま、とりあえず座って座って!」
目の前の『総裁』は黒のスーツを身に纏い、革靴にメガネという、典型的かつシンプルな服装だった。
「は、初めまして。八坂と申します。」
「まあそう硬くなるな。硬いのは好みじゃない。ユーウィン!カフイをお出しして!」
彼がそう叫ぶと、ユーウィンと呼ばれた男が『コーヒー』を出してきた。
「ありがたくいただきます。...一ついいでしょうか?」
「なんだ?」
「私は今回、『ヴィルス・マッケンジー』という人に会いにきたのですが...」
すると、彼はナニイッテンダオマエという顔でこちらを見、大声で笑った。
「アッハハハハハハ!!!!」
机を叩きながら笑い転げる様を見て、ユーウィンが近寄ってきた。
「客人の前ですよ、総裁殿。」
「ああ、すまないすまない!そういうことなら話は早い!なぜなら、私が君たちの会いたがってる『ヴィルス・マッケンジー』だからだ!」
その瞬間、俺は反射的に叫んでしまった。
「な、なんだって〜!?」
小川町達が笑いを堪える。ちょ、八坂さん、という目でこちらを見てくる。
「ま、まぁ、ノリがいいのは悪いことじゃないぞ...!」
ヴィルスが薄ら笑いを浮かべて言ってきた。
「八坂さん...だ、大事ですよね!そういうのは!」
やめてくれ...
「そ、そうそう!場が和みますし!」
もう、もうやめてくれぇぇぇぇ!!!
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数分後
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「君たちはニホンという国から来たんだろう?」
その聞き慣れた言葉に一瞬、我が目、いや、我が耳を疑った。
「ヴィルスさん...私の母国を、日本を知っているのですか!?」
「やはりそうか、顔が似ていたんでな。」
聞き終える前に捲し立てる。
「ここはいったいどこなんです?ツノの生えた人型の緑の肌の生物はいったい?巨大な怪獣はなんなんですか?
...この世界は...私が前にいた世界なんですか!?」
「八坂さん!そんなに一気に言っても答えられないでしょう!」
ヴィルスは、ゆっくりと話し始めた。
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簡単に言おう。ここはエラール大陸の中央部、角の生えた緑の肌の生き物は魔物のゴブリン。怪獣は怪獣。名前なんてものはない。一種しかいないからな。そして、この世界は君たちのいた世界とは異なる空間に存在している。
この世界には三つの種族が存在する。ニンゲ族、センメ族、プリマリ族だ。君たちは分類上だとニンゲ族だ。ニンゲ族は科学の種族、いや、「逃げの種族」と言った方が正しいな。センメ族は魔法の種族。別名は「攻めの種族」。プリマリ族は最古の種族。プリマリから全ては始まった。
太古の昔、プリマリがエラールに現れた。彼らは魔法を使い、狩りをし、強敵から逃げた。幾千万の年が流れ、やがてプリマリは三つに分裂した。プリマリであり続けたものたち、攻めに特化したものたち、逃げに特化したものたちだ。お前たちの世界では、防御呪文なるものがあると言われているようだが、そんなものは使わない。刺すか避けるか、それだけだ。ああ、一応あるにはあるんだが、な。
攻めに特化したものはセンメとなり、逃げに特化したものはニンゲと呼ばれるようになった。センメは高度な狩りを行い、ニンゲは農耕を始めた。そんななか、プリマリも進化した。彼らは「通常呪文」がセンメ、ニンゲほど使えない代わりに、「神域呪文」を手に入れた...。
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「俺たちはニンゲ族。転移者である君たちは、見た目などがニンゲと類似しているためニンゲに分類されている。」
小川町が手を挙げた。
「あのー、俺も呪文一つ使えるんですけど...あ、ハリセンを出す呪文です。」
「それも逃げの呪文の派生だよ。元々はでかい紙を出して相手の視界を制限する呪文だった。それが複雑化したんだろうな。」
ヴィルスは三人の顔を見て質問がないことを確認すると、一枚の地図を取り出した。
「それでは本題に移ろうか。ここが今俺たちのいるエラール中央総合司令センター。このエリアがそれぞれの種族の居住地域だ。まあ、ここはちょうど真ん中だな。エリアごとに国がたくさんあるが気にしないでいい。」
無数の線をなぞりながら続けた。
「そしてこれがエラール大陸鉃道の路線図だ。」
すごい量の線路だ。放射状に広がった線路はエラール大陸全土をつなぎ、さらに、大陸の外苑を沿うように環状線が続いている。
「その全てを総括しているのがここだ。要するに本社。」
すごいな...ここでほぼ全ての路線に指示を出しているのか...。
「お前、今ここで路線に指示を出しているのかと思ったろう?」
「...はい。」
「指示は列車単位だ。」
え!?と思うと、隣の2人も同じような顔をしていて、佐伯が立ち上がった。
「そんなこと可能なんですか!?この広さですよ!縮尺500万分の1で、50万分の1でかかれたユーラシア大陸くらいの大きさがあるのに!?」
「簡単だ。」
あっさりと言い切った。
「昨今のエラール大陸における鉄道事情はだいぶ芳しくない。」
彼は立ち上がり、歩きながら続けた。
「150年前の悲劇で20億いた人口は一息に9500万人にまで減少し、線路自体も甚大な被害を受けた。列車も消滅、乗務員も死亡!」
窓の前で立ち止まり、延々と続くレールを見つめる。
「今となっては路線のほとんどが復旧したが、それでも人員が足りない。圧倒的に。」
「つまり?」
ヴィルスは八坂たちを見て言った。
「エラール大陸鉄道に加わってくれないか?そうしてくれたらこの異界で生きていける最低限のサポートをしよう。報酬は...まあ、低いがな...。」
この異界で生きていくには、初期費用として莫大な金が必要だ。だが、俺たちは無一文の状態。話を聞くかぎりこの世界の経済は困窮している。そんな中で雇ってくれ、さらには必要最低限のサポートの提供...とてつもなく美味い話である。しかし、美味い話には裏があるとよくいう。まさにハイリスクハイリターン。受け入れるべきか、拒否するべきか...。
「八坂さん!」
長考の内に、小川町が叫んだ。
「僕は、入りますよ。エラ鉄に。」
エラ鉄...
「僕は、日本に帰りたい。生きていればその道が見つかるかもしれない!それに、エラ鉄に入れば大陸中を旅できます!」
「私は...小川町に賛成です。やっぱり、鉄道が好きですし。」
後輩たちに先を越されるとは、『カミソリ八坂』もおちぶれたものだな。(呼ばれたことないが)
ため息を大きく吐き、大きな声で言った。
「しゃぁねぇなぁもう!おめぇらがそんなにはいりたいなら付き添ってやんよ!!」
そろそろ感想欲しい(笑)




