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異世界旅客鉄道  作者: こめひこ
プロローグ
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3/8

st.03 峠

 機関車に集まる野次馬に事情を説明していると、男が数人跳んできた。


「見たことのない機関車を動かしてる男というのはお前だな!?」


「は、はい!...多分?」


「多分じゃわからん!どっちかはっきりさせろ!」


 はっきりさせろと言われてもなぁ、まだ目が覚めてから自分の以外の機関車を見ていない。はてさて、どう答えればいいものか...。


「...お前、ここがどこだかわかるか?私たちはなんという星に立っている?」


「...地球...ですか?」


 周りがざわつく。そして、迷惑そうにしながら男が紙を渡してきた。


「お前の身の上はわかった。とりあえずこのまま直進しろ。ポイントがいくらかあるが気にせず進むといい。サーフェンス操車場に着いたら、なぁに、緑のでかい看板があるからすぐにわかる。着いたらそこら辺にいるやつにその紙を見せて『ヴィルス・マッケンジーに会いにきた』と言ったらその後はどうにかなる。ああ、地図はわたしておこう。」


「はい...ありがとうございます...?」


「ま、なんだ、()()()()になれるための試練だとでも思っていればいい。分かったらさっさといきな。お前らのせいで後続車が詰まってる。」


「は、はい!すいません!」


 急いで発車すると、男が追いかけてきた。


「俺の名前はラント・バッサーだ!何かあったら手を貸してやっから名前だけでも覚えときな!」


ーーーーーー

 数分後

ーーーーーー


 汽車は街を少し前に抜けて、今度は川沿いを走っていた。


「...バッサーさん、いい人でしたね。」


 黙々と石炭をくべていた小川町が思い出したように口を開いた。


「少し含みのある言い方をしていたのが気になりますが...。」


 気になることが一つある。人名や地名などからここが日本ではないことは確か。しかし、ラントと普通に会話できたし、人々の会話も理解できていた。何より、さっきラントが渡してきた紙、その文字が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「小川町ぃ...」


「はい?」


「俺たちゃぁとんでもねぇことになってるかもしれんぞ...。」


ーーーーーーーーーーーーーーーー

 小一時間後 ダルガーナ山麓

ーーーーーーーーーーーーーーーー


「山にはよく幽霊とか妖怪が出るって言いますよねぇ。」


「小川町...どうした急に?」


「ほら、『子泣き爺』とか、ネズミーにある『でっかい雷の山』とか『3年峠』とか。」


「最後の例えは違うと思うぞ...」


 加速に気をつけながら走らせていると、いきなり後ろから声がした。


「今...どうなってるの...!?」


 見ると真っ黒な顔をした女が鬼のような形相で八坂たちを睨んでいた!


「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!でたぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「小川町!やっておしまい!!」

 

 号令をかけると同時に女幽霊はちょっと待ってと言い雑巾で顔を拭き始めた。


「私です!車掌の佐伯のぞみですよぉ!」


 拭いたことで素顔が顕になり、その声とも合致した。


「佐伯か!?なんでこんなとこにいんだ!!」


「昨日の業務終えた後、車掌車で寝ちゃって...気づいたらなんか知らないとこ来てて...外見たらでっかい怪獣がいて...今度は気絶しちゃって...。」


 いくらなんでも迂闊すぎるだろ!!


「そんでもって起きたら今度は山走ってたから、人がいる!って思ったけど連絡取れなくて...。」


「...それで炭水車にのぼり石炭の上を這ったから身体中真っ黒だと...。」


「そういうことです!とりあえずこれはどういう状況なんですか!説明してください!」


 そう言ってきたので今まで起こったことを短くまとめて話した。


「じゃあ今からそのウイルス・マケイヌさんに会いに行くんですね!」


「いや、ヴィルス・マッケンジーなんだが...まぁいいか...。」


 そこから少しして峠が見えてくる頃に目の前に分岐が迫ってきた。


「地図だと右にいけば近道みたいですね...」


「んじゃまあ、右ルート行きますか!小川町、レバー倒してきて。」


「では佐伯よ、そのように。」


 なんで私が、とぶつくさ言いながら佐伯がレバーに向かって行った。


「さ!こっからは山下りだ!気をつけて行くぞー!!」


 そう言って()()()()()ハンドルを押し込んだ。


「ちょっ!八坂さん!ハンドル!ハンドル!」

 

「しまっ!」


 遅かった。爆音と共に列車が走り出す。外にいた佐伯は咄嗟に小川町がつかんだが、2人で床に転げた。


「あば!あばばばばばばば!!」


 とてつもない振動が足から伝わる。気がつくと目の前にキツすぎる傾斜が待っていた。


「やばい!!」


 60度はあるだろうか、少なくとも普通の列車では到底通れない。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」


 佐伯が金切り声をあげると同時に、遠心力で後尾車が前に振られた!

 当然ながら全ての車両は繋がっている。後尾車、次の車両、また次の車両と連続して吹っ飛び、運よく炭水車が吹っ飛ぶ前に連結が切れてくれた。


「私の車掌車があぁぁぁぁぁぁああ!」


「やめろ佐伯!死ぬぞ!!」


「あばばばばばばばばばばばば!!!」


 叫びながらできる限り手を伸ばす。


(しめた!)


 今度は思いっきりハンドルを引き戻し、すぐにブレーキ弁を開けた。


キキィィィィィィィィイイイ!!!


 一同、前の壁に叩きつけられた。


「あでぇ...」


 前を見ると吹っ飛んだ車両がレールの上に転がっていた!


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 止まる間もなく突っ込んだが、機関車が車両を蹴散らして終わった。


(この機関車...だんだんおかしくなってきてるような...)


「ってて...あ、八坂さん!あれ!」


 小川町が指差した先に、大量のレールと共に大きな緑の看板が立っていた。その看板にはこう書いてあった。


『この先 サーフェンス操車場』

結構キツキツになっちゃいましたかね...。

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