st.02 草原
八坂さん...起きてください...八坂さん...!
「ん...ああ?」
ぼけぇっとした顔で辺りを見渡す。青い空、白い雲、見渡す限りの緑の草原。見慣れない小鳥は囀り、見慣れない動物が戯れている。
「やっと起きましたか!八坂さん!」
ああ、なんていい景色だろう。
「小川町...」
「...なんです?」
「...ぐっどもぉにんぐ」
その瞬間どこから出したのか、紙のハリセンで思いっきり頭を叩かれた。
「バッドモーニングですよこのやろぉぉぉぉ!!!」
悲鳴を上げながら機関室を転げ回る中、なおも叩いてくる。
「なーにが『ぐっどもぉにんぐ』ですかっ!今どういう状況かわかってんですか!?簡単にいやぁ遭難ですよ!そ・う・な・ん!!」
「わかった!わかったからもうやめてくれぇぇぇ!!!」
「わかればよろすぃ」
そう言ってハリセンをどこかにしまった...。
「とりあえず状況を説明します。」
彼はが話したことの要点だけを箇条書きで記す。
・現在位置は不明であるということ。少なくとも日本国内ではない。
・持ち物はあるし、シゴナナと12系客車は無事であるということ。外傷も見当たらないそうだ。
・会津若松でほとんどなくなっていた石炭と水が増えているということ。
・太陽が西から上がって東に沈んでいるということ。これは意味不明。
「アハ、アハハハハハハハハハハハ!!夢か!俺は夢を見ているんだ!現実でこんなバカなことが...ブヘァ!?」
再度倒れた俺の後ろで、ハリセンを握った小川町が笑う。
「わかりましたか?夢じゃあないことが。」
「ああ、よくわかったよ...。ゆめではないとして、だ。とりまどうする?こんな何もないとこいても埒があかんだろ?」
「まぁーそーなんですけーどーねー...。無闇に進んでも対向車が来たら終わり...」
なんて話をしていたら茂みが揺れる音が聞こえた。
「...なんだ?」
ガササササッ!!
「キケェェェェェェ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
茂みから得体の知れない何かが飛び出してきた!
「なんだこいつ!!」
「気をつけてください!ナイフ持ってます!」
機関室で取っ組み合う。緑の肌に、短く尖った爪。髪は...ない。こんな生物は見たことも聞いたこともない!
「ちからつぇぇぇぇぇ!!!頼む!早く!ハリセン!!」
「は、ハィィィィィィィ!」
小川町がハリセンを出した時だ。
「ギャオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
「こ、今度はなんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
声のした方に顔を向けるとそこには、鯨よりでかい身体、、万物を飲み込もうかというほどの巨大な口、筋肉ではち切れんばかりの足、超強い生物の特徴オールクリアの3連単。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
次の瞬間、怪物は巨大な口をぐわっと開き、呆気に取られている謎生物をバクンと飲み込んだ。
「八坂さん!発進!発進んんん!!」
小川町が窯に石炭を突っ込みながら言う。俺は確認も何もしないで、一心不乱に操作した。
「グギャアァァァァァァァアアア!!!」
怪物の咆哮と同時に列車が動き出したかと思うと、次の瞬間背中は背もたれに張り付き、小川町は倒れた。
「八坂さん!速すぎます!!スピードを落として!!!ってかなんだこの加速力!!!」
「スピードは落とさん!このまま上げ続けるぞ!!怪物に食われて死ぬよりはマシだぁぁぁぁぁぁああ!!!」
怪物は叫びながら後ろから近づいてくる。威嚇しようとして汽笛を鳴らした時だった。
「しめた!あいつ蒸気と煙で前が見えてねぇ!」
汽笛を鳴らしまくっていると、小川町が叫んだ。
「八坂さん!カーブです!カーブゥゥゥ!!!」
言い終える前にカーブに突入する。しかし、車体が大きく外側に振られると思いきや、なんと内側に向かって傾き始めた。
「なんで...なんで機関車に振り子がぁぁぁぁぁぁ...!!」
なおもカーブは続く。怪獣はギリギリついて来れていない。
「よ、よし!このまま逃げ切るぞ!」
「了解です!」
そこから15分ほど鬼ごっこを続けると、目の前に巨大な壁と門が見えてきた。
「よかった!街だ!」
「た、助かったぁ〜...。」
安心するのも束の間、一つ心配事ができた。
「門...あかねぇな...。」
「まぁ、そのうち開きますよ!」
しかし、どれほど近づいても門は開かず、とうとう1キロまで迫った。
「仕方ない!突っ切るぞ!!」
「何バカなこと言ってんです!?爆発しますよ!!」
小川町に構わず、ハンドルを戻した。街がどうなっているかわからない。少しづつスピードを落とし、怪物に触れられないギリギリまでにした。
「掴まれ!しゃがんで衝撃に備えろ!」
這いつくばる小川町。
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
次の瞬間、巨大な門を突き破って街に逃げ込んだ。巨大な門といえど人間からみたらの話。怪物だと入ることができなかった。すぐにブレーキをかけ、停車する。車体の節々が軋み、大きな火花をだし、ピストンが悲鳴をあげる。
「助かった...。」
あまりの爆音に人が集まってくる。降りた瞬間、奇異の目が向けられていることがよくわかり、思わずこういった。
「ああ、皆様こんにちは。えー、俺はただの機関士なのでお気になさらず。」
遅めの更新になりました。学業の方が忙しいので、今後もこのような頻度になると思います。
ちなみに、巨大な壁と門を見て街だと気づくシーンがありますが、なぜ気づいたかというと、門から民家が見えたからです。




