st.33 インテル・エッセ
『「皆さまこんにちは!ディングル放送局です!戦線は拡大し、センメ3国への攻撃であったのが、今や6国に及んでいます!連合軍には新たに、ユーズラス、ロタテの2国が加入し、こちらも6国にまで増えました!ソーリバー周辺、コーンドート周辺、ヨンルオポウチ周辺をすでに制圧しており、敵国に甚大な損害を与えております!」』
相変わらずの戦況報道、信じていいのかわからないが、そんなことはどうでもいい。俺たちにとって重要なのは、戦争が続いているかどうかだけだ。それによって今後の足取りがだいぶ変わってしまうからな...。
「隊長!前方に魔物です!」
「おう、だけど大丈夫っぽいな...一体だけだし。」
「ええと、あた!人間ドッグ・・・人のような風体をした犬の魔物。人語をはなせる。顎の力と脚力が強く、生身で襲われたらまず助からない。ごくたまに『お兄ちゃん』と鳴く個体が出現する...」
ヒューストンにもらった魔物図鑑が、意外と役に立っていないのは明らかだろう。だって弱点とか載ってないもん!書いとけよ!
「毎日暇ですねー...走らせ続けるだけで...」
「それが俺たちの仕事だろ?泣き言言うな...!」
誰もいない寂れた駅を通過する。ちなみに言うと、サイ・コールミは出た後で、もう大陸内環線に入っている。サイ・コールミでは余分な客車を切り離し、完全に旅客営業から外れた。
「しかし長いな...大陸内環線は...終わりがいつまでたっても見えやしねぇ...」
「駅間の平均が45キロ、エラ鉄でも指折りですよ。」
そんな話をしながら走っていると、佐伯がご飯を運んできた。
「はい!今日も今日とておにぎりです!」
「うーん、爆弾!いつみても!」
小川町が言うのももっともだ!確かに小型爆弾に見えてくる。
「とりあえず食べ終わったら呼んでね。お皿下げちゃうから。」
「あいよ!ありがたくいただくよ!」
駅を過ぎたあたりから勾配やカーブが多くなり、小川町は忙しなく動き回っている。
「あと10キロで次の駅です!次は停車しましょうよ、休憩がしたいですから。」
「ああ、そうしよう!1日2日、ゴロゴロするかたまには!」
ーーーーー
「ってなわけで今日こちらに停車させておきたいんですが...」
ここは先ほど言っていた駅、フジス駅の駅長室。まあ、机と椅子と棚があるだけの簡素な作りではあるのだが...
「急に言われてもねぇ、ほら、ここって小さい駅ですしねぇ、一面一線プラスで待避線しかないですし...」
「そこをなんとか...!」
駅長はため息をつきながら答えた。
「まあいいですよ。もともと列車の通りも少ない駅ですから、待避線に止めといていいですよ。」
「はー!ありがとうございます!」
「あと!私は手伝いませんからね!他に駅員もいないですから皆さんで転轍機とか動かしてください。」
歓迎はされなかったが、とりあえず一晩の宿は獲得できた...!
その後、いつも通り列車を移動させ、手早くシャワーを浴びてソファに寝転がった。佐伯は食べ歩きに。整備班とアーティーと遊馬はまた改修するようだ。小川町はというと、買い出しついでに散歩に行ったらしい、それでは、現場の小川町さーん?
「はい私小川町!現在フジス市内に来ぃております!」
周囲の視線が痛い...!そりゃそうか...街中でいきなりこんなことを始めたら...!!
とりあえず近くの呑み屋で一息つくことに。実はというと、俺たちがこの世界に来た時は既に9月の暮れ、今は11月になり肌寒くもなってきた。こう言う時よく熱燗でやってたもんだけど...この世界にその文化はあんのかなぁ?
「たいしょーうひとりー!」
「あいよーう!カウンター!」
店内は渋め、日本の呑み屋でよくある...
「ってお前!小川町君じゃないか!?」
「へ?」
「ぃやっぱそうだ!俺だよ!お前、よく仕事終わりに店来てたろ!東風に!!」
ああ!!
「おやっさん!!なんでこんなとこにいんだよ!?」
東京都××区にある居酒屋東風、俺が都内常務だったころ毎日通った下町の小さな居酒屋...!
「店じまいして帰ろうとしたらなんかトラックに轢かれそうになってよ、そしたらそのトラックのライトがやけに明るくて、そのせいでうわー!ってなったらここに来てたんだなぁ。」
「なぁんだ、俺も一緒だよ!」
「今はなんの仕事してんだ?」
「...機関士...。」
「機関士か...!懐かしいなぁ...ところで機関士といえば...」
やばい!おやっさんはすぐに長い話を始めるのだ!
「おやっさん!...最近寒くなってきたねぇ...?」
「おうおう、あっためてるよ!呑みなせぇ呑みなせぇ!」
その後、ちびちびと酒を呑みながら、小1時間おやっさんと話した。この世界のこと、これまでのこと、そして世間話。
「こんな世界で昔の知り合いに会えるとは思わなんだ!また明日も来てくれよ小川町君。」
「そりゃぁ、無理な話だよおやっさん。こちとら仕事で世界巡ってんの!もう常連になんかなれないって!」
「それでもな、次この街寄った時も来てくれや。知人に知らない土地で会うのって、思ったよりすごい安心するぞ?」
「なぁんも、俺だって同じだよ!とりあえずおかんじょー」
「いらんいらん!苦労人から金が取れるかい!サラにしといてやるよ。」
この時俺は、言わなきゃと思ったんだ。こんな人に嘘なんかつけないって、ついちゃいけないって、唐突に、そして激しく、思ってしまったんだ。
「おやっさん...実は嘘ついてた。」
「なんだぁ?」
「俺、機関士じゃなくて、機関助士なんだ...見栄張ってたよ。」
「そんなんなぁ!見りゃわかるだろ!機関士バッヂかついてねぇもんなぁ!」
忘れてたその設定...!
「それでもいいよ。人は誰でも見栄張りたいもんさ。俺だって勘定サラにしたのも見栄だかんな!」
「クっ!あっはっははははは!!」
笑うなー!とおやっさんが叫ぶ。
「やっぱりかなわねぇわ!おやっさんには...!」
その後、買い物を終え代家車に帰ったとき、ふと気がついた...
「財布が...財布がすっからかん...!」
さあどうする八坂一行!このままでは餓死の危機!飢えるが先か、帰るが先か!?この話の顛末はいかぁにぃいぃぃぃ!!
「存在しない読者からお便りが届いたので読み上げます!!」
「急にどうした小川町...?」
「Q八坂さんの性格とか言動って、モデルになった人はいるんですか?」
「Aいます。」
「隊長!?ほんとなんですか!?」
「俺が今作者から受け取った情報によると、作者自身がモデルらしい。なおやつは高校生だ!」
「高校生と隊長がまったく結びつかない...!!」




