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異世界旅客鉃道就労録  作者: こめひこ
ライハト地方編
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34/37

st.32 コマ

 復旧工事にセンメの手伝いが加わってから12日目、最後の1本のレールの固定が完了した。


「線路復旧バンザァイ!!」


『バンザァイ!』


「バンザァイ!!」


『バンザァイ!』


 ただの工事のはずなのに、作業員たちの目には涙すらあった。


「少し前まで全然復旧してなかったのにこの速さって...とんでもねぇな!」


「全長42.33km、フルマラソンよりも長い距離です。」


「そんなに長いのか!?」


 アンマーって石田三成の生まれ変わりなんじゃ...!?


「とはいえこれでやっと先に進めますね...」


「ああ、帰る道も開けたってわけだ...!」


 その時、アスマの怒鳴り声がかすかに聞こえた。


「あ、アスマが落ちてる。」


「え!?どこです!?」


「あー見えなくなったー」


ーーーーー


「ヤサカさん。あんさんがこの線路での初運行ですわ。堂々と行っちゃって下さいな!」


 アンマーが出発作業中に尋ねてきた。


「アンマーさん、この度は本当にありがとうございました...!感謝してもしきれないくらいです!」


「なぁんもそんな大袈裟に言わんでもええですって!こっちゃ仕事をしただけですわ!」


 照れてる照れてる。


「そうだ!こっから北の方で復旧工事、ありません?」


「そーですねー...サイ・コールミ駅からダンレート地方線にのって3駅ほど...」


「それならちょうどいい!!僕らサイ・コールミから大陸内環線に入る予定なんです。よければ乗って行きますか?」


 アンマーは少し考えてから答えた。


「いやいやいやいや!ありがたいんですがねぇ、こっちも色々準備があるんですわ!今回は遠慮させてもらいます。」


「あー、そうですかぁ...!それは残念です...!」


 その時、ホームにベルが鳴り響いた。...この音を聞くのは何日ぶりだろうか...


『「1番線から回送列車が発車いたします。ご利用にはなれませんのでご注意ください。1番線発車いたしまぁす。」』


「それじゃあこれで!」


「えい!また次おうたら酒でも飲みましょうや!」


「しゅっぱぁつしんこぉう」


「お仕事、頑張って下さいね!」


「はぁいそれじゃあまた!」


見る間にホームは遠ざかる。当然ながら人は原子以下に縮小される。それが、どことなく悲しいのだ。これは夢だったんじゃないだろうか、実際には起こっていなかった脳内の出来事...そんな気がしてならなくなる。


「小川町ぃ、お前って、生きてるのか...?」


 しばらくしてから返事が来た。


「へ?なんです?よく聞こえなかったんですが...」


「...いや...なんでもない...」


ーーーーー


 突然だが、俺には共感性がない。...まぁ、こう言ったら異常者、頭のおかしいやつと捉えかねないか...。


 具体的に言うと、目の前の人間が、何を考え、何をし、どのように生きているのか...全く理解できない。時折思う。この世界で生きているのは俺だけで、俺以外は...無。


 簡単に言うと、コマ。人生ゲームのコマ。そして俺は、人生ゲームに放り込まれた人間。...孤独...虚無...何をやっても意味がない...だってただの人生ゲームだから。そもそも自分は生きているのか?現実自体が夢のような気もしてくる。この目で見ているものが、ただの猿の夢であって、文明などは存在していないような...


 話を戻そう。そもそも共感性のある人間ってなんなのだろう。空気をよく読める人間?困ってる人に寄り添える人間?全くわからない。理解不能。


 こんなんだから、国語の授業は苦痛だった。「A君はなぜ〇〇と言ったのでしょう?」知るか!糞食らえだこんなもん!!もとより俺には人間の気持ちなんて理解できない。だけど、言葉を通じてコミュニケーションを図れるのだからまだいい。ただし、教科書の登場人物は違う。有機物と無機物の結晶、命なんてものはない。よく、「キャラクターが勝手に動き出すんですぅ」とかいう作家や漫画家がいるが、いやいやいや!嘘つけ!って思う。


 なぜ人は共感性を求めるのか?長年疑問だったが、成人して少しわかった。安心したいのだ。共感性がある=心の痛みや感動を分かち合える。生物的には痛みが理解できるんだから、隣にそいつがいても安心して生活ができる。と、思うわけだ。逆に、共感性がなかったらどうだろうか?...いや...怖いな...容赦なく襲ってくるなこいつは...ってなる。


 こんな俺でも共感性が微塵もないわけではない。股間がチーン!!ってなってる映像とか見たらすかさずおさえてしまうし、ゴル◯ムとかマド◯ギとかはあんまり見れない。...って言っても意味なんてないのだが...。


 ...ちょっと話は切り替わるが、想像してみてほしい。目の前にあなたの友人がいたとする。そいつは親友だ。幼馴染の親友だ。そいつの私生活、想像できる?ああ、できたか。いやいやそれは間違いだ上っ面を撫でているだけ。朝何時に起きて何をどのようにして朝飯は何を食べて誰とどんな話をして何を考えて靴を履いて何を考えてどこに行くのか!!...想像できるか?できるとしたらお前はニュータイプだ...おめでとう戦争が君を待っている!


 要するに人間は根っこからわかりあうことはできない。俺はそれを常に意識して生きてきた。空気読まない奴がいる?仕方がない人間は分かり合えないから。ひどいことをしてきた奴がいる?仕方がない人間は分かり合えないから。結局最近は共感しようとする努力をやめた。40年来の知識と経験だけでどうにかなるからな。


 これ以上書くと話が余計にこんがらがりそうだからやめておくとしよう。以上で八坂実の回想は一区切り。ここまで話を読んでくれたお前、40代男性の要領を得ない意味不明な独白に付き合ってくれてどうもありがとう。

「隊長...何ぼーっとしてるんです?もうそろそろサイ・コールミに着きますよ。」


「あ、ああ、すまんすまん。ちょっと...考え事だ。」

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