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異世界旅客鉃道就労録  作者: こめひこ
ライハト地方編
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29/39

st.28 人殺し

「それじゃあ、ホワイトガッツまでの輸送お願いします。」


「大丈夫ですって!ここまでくればディングルも手の出しようがありませんから!」


 第1陣から2日、実際にディングルが侵攻を開始した。ソーリバーにはもう避難民はおらず、作戦は一応成功したと言える。現在手前3駅、ゴートン、ダールキント、オポプエからの避難を行なっており、休みなく往復している状態だ。


「じゃあそっちは頼みましたよ。」


「ユートゥー!」


 何度このやり取りをしたことか、毎日同じことの繰り返し。仲間たちも疲弊している。それでも、やらねばならぬのだ、とヒーロー気取りで自分を奮い立たせてハンドルを握る。


「しゅっぱぁつしんこぉう」


ーーーーー


 出発から6時間もう少しまで目的地へ着くというときに、対抗列車とすれ違った。


「ん?あれって...」


 機関車の前にばつ印を組む白旗が2つ...


「ま、まずいことになった...!」


 白旗があるということは、敵ではない敵意はないと知らせていること!敵がいない場所で掲げることはまずない...。


「どうかしましたか?」


「もう...もうディングルがダールキントまで来てる!!このままだとオポプエとゴートンも危ない...!」


「そんな...もう...無理じゃないですか?ダールキントはもう無理なんじゃ!?」


「佐伯!!」


『「なんですか!?」』


「今すれ違ったオルダン号に繋げてくれ!連絡を取る!」


『「わかりました!受話器持って待っててください!」』


 少しして声が聞こえるようになった。


『「はいこちらオルダン。」』


「C57-182だ!ダールキントの状況を教えてくれ!」


『「もうディングル軍が侵攻拠点を築き始めてた。戦闘の開始まであと数時間だろうさ。」』


「避難状況は!?」


『「9割がた避難したよ。でも...まだ残ってる人たちが...」』


「了解!助けに行く!」


『「気をつけろよ!ディングルの連中に絡まれると厄介だ。」』


「忠告ありがとう。まあでも、こっちにはいいボディガードがいるからな!」


『「了解。幸運を祈る。」』


「アスマァいるかぁ?」


『「隊長、なんだ?」』


「非ジョーにまずい事態だ。お前、ドーファンにのっとけ。」


『「えー...やだなぁ...なんか怖いなぁ...」』


「柴さんとアーティーにもしっかり整備しとけって伝えて。」


『「わかった。あとはこっちでなんとかしとく。」』


「頼んだぜ。」


 行きは相変わらずの空気輸送。帰りが1番精神的にも重量的にも重かった...が、それは前までの話。今は...戦場に行く兵士の気分なんて興奮したものではない。ライオンの檻に入るヒヨコ、いつ食われるか、そんな気分だ。


 ラジオが動き出し、陽気なマーチが流れ始めた。


『「ディングル放送局です。本日はとてもいい日になるでしょう。ランブルでの戦況は好調です。敵の魔術師は我らディングルの物理攻撃になす術もなく、戦線は前進しています。本日正午より、ダールキントからも攻撃を開始する予定です。このまま戦線が拡大していけば、さらなる戦果が期待できるでしょう。正午の報道ではヂヂダンの戦況とダールキンとの攻撃について、リアルタイムでお送りしていきますよ!楽しみに待っていてください!」』


「胸糞悪りぃ内容だぜ全く...。」


「WW2の日本もこんな感じだったんですかね...。」


「それよりも問題はダールキントだ。正午って言やぁ俺たちが離れる直後...攻撃をマジで仕掛けられるかもなぁ...」


「...正直...今すぐ引き返したい気分ですよ...」


「全くもって同感だ...。」


ーーーーー


『「ホワイトガッツ行き最終列車です!最終列車です!ディングルが正午よりの攻撃を決定しました!!攻撃が始まると列車は近づけなくなります!!これが最後です!最終列車です!!今すぐ乗り込んでください!!!」』


 停車時間はもって10分!それ以上は街から出るのが不可能になる...。


『「ホワイトガッツ行き最終列車発車します!乗り遅れている方はいませんか!?発車します!!」』


 駅員も避難のため乗り込む。これが本当に最後のチャンスだと悟ったのだろう。


「こっちも駅を守りたいんですけど...真っ先に潰されるでしょうから...命あっての物種ですし...」


「それは...とても残念に...。私たちもしっかり送り届けますよ。」


 タイムアップだ...!


 ベルもならない。声も聞こえない。人気のない駅を、列車は出発した。


「この後は無事に帰れるかどうか...」


「僕、一応銃座ついときますね。戦力はあった方がいいですし...」


「頼んだ。くれぐれも無理はするなよ。」


ーーーーーー

 数分後

ーーーーーー


『「銃座、配置完了しました。」』


「オーケイ。佐伯!聞こえるか!」


『「なんですか?」』


「仲間の列車に連絡入れてくれ。ダールキントはもうダメだってな...」


『「わかりました...そのように伝えます。」』


 その時、列車のはるか前方にバリケードが見えた。


「全員に通達!!線路上に障害物を確認!!仕方ねぇ突っ切るぞ!!」


『「そこの機関車止まれぇぇぇ!!!我々はディングル国防軍だ!!!」』


「アスマァ!まだ出るなよ!!」


『「了解!」』


『「そこの機関車!!止まれと言っている!!命令に従わない場合即座に攻撃するぞ!!」』


 止まるもんか止まるのんか止まるもんか!!!


『「ク、クラブマンだ...相手のバトルマシンはクラブマンだ!!軍事用の強力なやつだぜ!!」』


「ドーファンのスペックで足りるか!?」


『「パイロットによる!!」』


『「命令無視!攻撃を開始する!!」』


 クソッ!!なんでこうなるんだよ!!


「アスマァ!出ろぉ!!」


『「ドーファン起動!システム、オールグリーン!!」』


『「ジャッキアップ!!」』


『「お、おお!ガチで持ち上がってるじゃねぇか!!アスマ!頑張れよ!こっちも銃座で頑張るから!!」』


『「今アスマには伝声管だと話せないよ!もう切り離したからね。指示はこっちで行う。連絡することがあったらうちに伝えて!!」』


ーーーーー


 あー、なんで最初の戦闘が職業軍人なんだよ!


「あー、俺もう行くかんな!!」


『「ご武運を!!」』


 練習通り...練習通り着地すれば...!


「うわっ!?」


 すっ転んだ!!


『「そこのバトルマシン!我々はディングル国防軍である!!無駄な考えは捨てて今すぐ投降しなさい!!」』


「こちとら何百人の命抱えてんだ!!簡単に投げ出してたまるか!!」


『「話の通じぬやつめ...!最後のチャンスだ!10数える前にコクピットから降りるんだ!!そうすれば命だけは助けてやる!!10!!」』


 フォース製格闘用バトルマシン クラブマン!たしか...飛び道具は持ってないはず...他にバトルマシンは...なし。足元の人間がうざいけど...あいつさえやれれば!!


『「9!!」』


「先手必勝!!」


 ふくらはぎには魔弾銃がしまわれている。ふくらはぎが外側に開き、手が伸びて取り出す仕組みだ。


「エネルギー充填済み!弾道ヨシ!発射!」


 銃身からビームが飛び出す!!敵は間一髪でそれを避けたが、左前脚の外装にかすった。


「っちぃ!」


『「アスマ!?倒さなくていいんだからね!?次の駅、侵攻対象地域じゃないとこまで汽車が逃げられたらいいんだかんね!?」』


「わかってる...!けど...今回は相手が悪いって!!」


『「このやろう...撃ちやがったなぁ!!もう許さん目にもの見せてくれるわ!!」』


 速い!!ジャンプ力と瞬発力が高すぎる...!


『「全員ターゲットに向かって撃方始め!!ランプ伍長を援護せよ!!」』


 何気に足元の兵士たちのせいで動きずらい...。気が散ってパフォーマンスが落ちちまう!!


『「でりゃあ!!」』


 4本ある足のうち、右前足でラリアットを仕掛けてきた!


「うぐ!」


 そのまま地面に倒れ込み、数メートル土を削った。


『「完全に包囲した!大人しくコクピットを開け!!」』


「開けてたまるかッ!!」


 このマシンのエネルギー源は魔力!!魔力があれば動き続けられる!!そして、魔力が高まれば高まるほど威力も増す!!


「こちとらまだまだ未熟さ...!だけど!生半可な気持ちでやってないんだよ!!」


 サーベルを左腕から取り出し、右腕を180度捻る!!


「職業軍人ごときにやられて...なにが用心棒だぁぁぁ!!!」


 そのまま相手の懐に向かってまっすぐに突き刺す!!


「これで終わりだッ!!」


 そのまま剣を天頂まで振り上げると、クラブマンは倒れこんで動かなくなった。


「終わったか...」


 増援が来るかもしれない...。


「アーティー...今から帰る...。」


『「わかった...準備しとく。」』


 出力を最大限高め、スラスターで敵の残骸から這い出る。


「っ!!」


 モニターの端に、黒く焦げた()()が、スラスターの風圧で飛んでいくのを見てしまった。


「たしか...完全に包囲したって...!」


 翼を展開し、次駅で待つ仲間たちの元へ急ぐ。


「クソッ...!」

「ジャッキダウン!」


 帰還したドーファンが格納されていく。


「アスマ?どうかした?でてきなよ!」


 返事がない...?


「チューブ繋いで!外から操作する!」


 数分後、ハッチを開けるとアスマが転がり落ちてきた。


「どうしたの!?」


「人を...敵とはいえ人を...!なんて...バカだったんだ...!」


 青い機体の一部分、ハッチの真ん中、鮮やかに赤い斑点が、何があったかを物語っていた。

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