st.27 スピーチ
10時間走り続け、ソーリバーに到着した。
「駅員さん!俺たちゃ市民を避難させにきた!もろもろ対応頼んだぞ!!」
「いきなりなんだ!っておい!どこいく!!」
「すまねぇがこっちもやることだらけなんだ!!説明の余裕はねぇ!!」
急いでホームに戻って車掌車に飛び込む。
「佐伯!この列車が避難のための列車だってこと、アナウンス頼む!」
「了解!」
次はキャリアカー!
「全員拡声器もって外でろ!!街に出て避難の案内するぞ!!アスマはドーファンにのって空から頼む!」
『ラジャ!』
全員一斉に駅から飛び出すが、周囲から向けられたのは奇異の目だった。
「我々はエラール大陸鉄道です!!ディングルが攻め込んできます!!ホワイトガッツへの避難ルートを確保したので急いで汽車に乗り込んでくださぁい!!」
「ここは真っ先に狙われます!急いで避難を!!」
その時、1人が叫んだ。
「ニンゲの言うことなんて信用できるか!!」
一斉に沸き起こるブーイングの嵐。
「私たちは嘘は言ってません!ちゃんとホワイトガッツまで送り届けます!!」
「どうだか!!ニンゲはだいたい嘘つきだからなぁ!!」
誰も耳を貸そうとはしなかった。が、
「あーもううるせー!!!」
小川町がいきなり大声を出した。
「俺たちゃニンゲじゃねぇ!!エラ鉄の社員だ!お前らエラ鉄を信用しないか!?するだろう!!毎日乗ってるもんなぁ!!この町でもたくさんの人間が駅に出入りしてる!列車に乗り込んでいる!!それがなんだ!!センメ族だった社員がニンゲに置き換わっただけで信用しなくなるってのか!!」
周囲は静まり返り、小川町の声が響くのみである。
「センメがなんだ!ニンゲがなんだ!そんな時代は終わったんだ!!だから!エラ鉄みたいにどっちも混ざり合ってる集団がある!!確かに社員でも憎しみ合う奴らがいる!」
「それじゃあ信用できねぇじゃねぇか!!」
「だ!が!そういうのはごく少数!!ひとつまみ!!ニンゲとか、センメとか、そういう区別をなくしていこうと、社内でも対策をしてる!俺たちはセンメじゃない!ニンゲでもない!人間なんだ!いつもの駅員も、毎日来る機関士も、俺たちも、人間なんだ!同じ人間として頼む!逃げてくれ!俺たちの列車で逃げてくれ!もう同族で憎しみ合うのはやめてほしい!殺しあうのもやめてほしい!だから!逃げてくれ!お願いだから!」
誰も動こうとはしない。声を上げようともしない。しかし、ただ1人、少年が歩いて来た。
「乗せてくれ。汽車に。いくらでも払うから。」
「ありがとう。無料です。」
少年を皮切りに、たくさんの人が押し寄せてきた。
「俺も!俺も乗せてくれ!」
「家族で逃げたいんだ!」
「生きたい!生きたい!」
「皆さん!これは無料の特別列車です!未来行きの特別列車です!1番線に止まってますから急いで!!10分後発車します!!」
その時、アスマが放送を始めた。
『「私たちはエラール大陸鉄道です。ソーリバー駅2番線に避難用列車が止まっています。ホワイトガッツ行きです。無料でご乗車になれますのでこれに乗って避難してください。これ以降も列車はございます。十分準備を整えてから避難を推奨します。」』
案内を続けていると、小太りの初老の男性が話しかけてきた。
「先ほどは失礼しました。市民を代表してお詫び申し上げます。」
「あなたは...?」
「私はゾルートマン。ここの市長です。」
「あ、これはどうもご丁寧に!」
「いえいえ、先ほどは本当にうちの若い衆が失言をいたしまして、避難ルートも確保していただけたというのに...。」
「てぇ!悠長に話してる場合じゃないっすよ!ディングルがきます!あなたも早く...!」
「...私は最後、逃げる意思のある人が全員逃げてから出ようと思います。それが、市長たる者の務めでしょうから。私からも、汽車に乗るよう促しますよ。」
「頼みます。ゾルートマン市長!」
その後、大量の市民が列車に乗り込んだ。不安げにする者、安堵の表情を見せる者、たくさんいるが、一番多いのは故郷を離れなければならなかった者だった。
「乗客も大変だよな...故郷を離れなけりゃならないって。」
「乗りたいっていう人...最初は少なかったですもんね...」
「それはちょっと違うんだなぁ...。センメとニンゲは敵対関係にある。敵に助けてもらうって...結構勇気がいるもんだ。味方から後ろ指を刺されるかもしれないし、敵に拷問にかけられたりするかもしれない。どっちに転んだって不幸な結末さ。それだけならまだしも、誰がニンゲを信じるか!なんて言い出されちゃったら出るに出られないでしょ。」
「確かに...日本人も似たようなもんですしね...。」
これから10時間後、特に何もなく無事にアイランファクトリアまで運べたのはいうまでもないだろう。
「これで逃げられるのか...」
「今回はこんな列車があって本当に良かったよ!おかげで都会のスシヅメってのも体感できたし...。」
「それは...良かったのか...?」
あるセンメ族の会話であった。




