st.13 間者
「被告人3名は我らがディングル国内にて諜報行為を行おうとするセンメの間者を国内に輸送し、国家を危機に晒さんとした。よって国家反逆罪を犯したとみなす。この罪状に異義はあるか?」
えーと、なんでこうなってんだっけ?
「はい!はいはい!異議異議!異議しかありません!!」
「異議あり!!」
佐伯と小川町が何やら騒いでいる。
「えーと、もう一人の被告人。あなたから異議申し立ては?とその前に体に刺さっている矢を抜きなさい。」
その言葉を聞いた瞬間にこれまでの出来事が逆再生で脳内に流れ込んできた。
「お、おお、思い出したァァァァ!!!」
「静粛に!一体何を思い出したのです?」
「いやーすんません!法廷に連れてこられたショックで前後の記憶が抜け落ちてたんですわ!それを今思い出しました!とりあえず自分も異議で!自分は間者なんてたいそうなものじゃないし、そもそも列車に乗ってたという間者とも面識がない。」
ここの法廷というのは意外と簡素だ。白壁に囲まれた部屋の中に椅子が3つと裁判官が1人。検察官が1人と書記が1人、警備員が2人。国家反逆罪の割に監視が少ないな...。人が少ないせいか...?
「ではそれを証明するものは...の前にさっさと矢をぬけやボケナスゥ!!!!」
ーーーーーーー
八坂さんが治療室に連れて行かれた。まあ、あそこまで耐えられたのが不思議すぎるくらいだからな...。
「えーじゃあ彼が帰るまでに色々進めようと思います...えー、とじゃあ他のものの異議申し立てを...」
「その必要はない!」
叫んだのは俺だ。
「裁判官、こちらに一つ、書がございます。ご覧ください。」
そう言って懐から四つ折りの紙を取り出して渡した。
「こ!これはぁ!」
「そういうわけで私たちは無罪なのです!というわけでこれでおさらば...」
「なんてえっろい絵であるか!」
渡すの間違えたァァァァ!?
「瑛二...あんたそんなものをいつも...フッ」
い、いや違う誤解だ!
「ここここちらでございますぅ!ししし書はあぁぁぁ!!」
「お、おお、拝見します...。」
今度は間違えていないはずだ...!
「ほうほう、エラ鉄総裁直筆の書ですか...。」
これが使えれば...!
「な!なんと!」
イヤな予感が...
「書を開いた瞬間中からこれまたどエロい絵が...」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!
「瑛二...あんたコレクションを...」
もうだめだ...おしまいだ...
ーーーーーー
「え?釈放?」
医務室から出ると、警備員にそう伝えられた。
「お!八坂さんやっときた!」
「遅いですよもう。」
「な、なあ、釈放って聞いたんだけど何があったんだ?」
「これを見せたんです!」
小川町が紙を渡してきた。
「所有者総裁ガ私物証明ノ書...?なんだこりゃ?」
「これを持っている人はエラ鉄総裁の所有物、直属の部下であるということを証明するものです。って、旅立つ前に渡されましたよね?」
「いや、新しい設定をいきなりぶちこまれても...」
「渡されましたよね?」
顔がでかい...!気迫すごい...!
「...ハイ...」
「所有物って書き方は腑に落ちませんけど、ま、便利なもんですねぇ。」
「そういえば原因になった間者って...」
「そのことなんですけど...」
ーーーーーー
「死刑...ですか...?」
「ええ、センメ族だったので裁判もなく。」
裁判官がにこやかに答えたことに戦慄した。
「せ、センメといってもヒトですよ!?そんなあっさり...それに、間者であるという証拠も...」
「何を言ってるんです?今回やつは変化魔法で姿をニンゲに変えていたそうです。入国するのになんで姿を変えるんでしょうねぇそれが間者であることの証明になりますよ。」
彼は続けた。
「そもそも今回のやつは間者として死刑になったわけではありません。」
「へ?」
「センメ族は国境を超えた時点で射殺する決まりになってます。国内で何をするかわかりませんからねぇ。」
「あんまりだ...!!」
「おっと!それ以上言ったら犯罪になりますよ?この国ではセンメを擁護する、もしくはそれを匂わせる発言をすると処刑です。」
なんなんだ...なんなんだこの国は!!自由にモノも言えないのか!!
「所有者総裁が私物証明ノ書のおかげで間者疑惑は晴れましたが...犯罪が確定すると効力はなくなりますからね?」
確かにセンメとニンゲの間には大きな壁が存在すると聞いていた。しかし、国家レベルで嫌うのか!?共存の考え方が復活してきているのではなかったか!?
「矢の人が帰ってきたら案内するところがあります。なんかデンテル王が詫びたいと言ってまして...晩餐に招待すると。」
断ろうとすると佐伯が口を開いた。
「いえ、結構です。」
「ですが...王のメンツが...」
「結構ですと言ってるでしょう!」
「...僕からもお断りします。王には『お心のみ受け取らせていただきます』とお伝えください。この後も仕事がありますので。」
ーーーーーーーー
「そんなことがあったのか...」
「酷い話ですよ。入国も許されないなんて...」
「そういえば、なんで晩餐拒否ったんだ?」
「断る以外の選択肢あります?自由にモノも言えない国ですよ。落ち着いて飯も食べられませんて!」
「は!同感だな。」
そういえば...
「佐伯、なんでさっきからしゃべんねぇんだ?」
その時、佐伯はふつうに歩いていたが、突如として顔面蒼白となり口を押さえダッシュで駅へ向かい始めた。
「お、おい!待て佐伯!どうした!?」
そのまま大通りを走り抜け、川を飛び越え、駅に飛び込み自分たちの代家車へダイブした。
「おんろろろろろろろ!!!」
「さえきぃぃぃぃぃぃぃ!!!!????」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!気持ち悪りぃ胸糞悪りぃなんだこの国は!!」
あまりの憎悪から言葉が悪くなっているだと!?
「死んじまえ!王も警察も!」
「ちょっとまて佐伯!誰かに聞かれたらやばいって!一旦落ち着こう!な!」
「殺ス!全員殺ス!ブッコロォォォォォ!!!」
幸い誰にも聞こえてなかったようで、佐伯が落ち着いたところで出発することができた。
「ああ!C57-182の機関士さん!帰ってこられましたか!」
「はい。総裁殿の書があったのでなんとか。」
「駅員全員で帰ってこなかったらどうしようか話してたところなんですよ!ここ代えの人員もいませんし!」
「ちなみに俺たちが連行されてからどうなってたんです?」
「牽引車でどうにかホームまで引いて行って乗客とか降ろしましたよ。それ以外は特には。そうそう!連行されるとこ見ましたよ!あなた血みどろでしたねぇ!」
「驚かないんですか!?」
「驚くも何も!この目でセンメが殺されるとこ、何度も見てますから!」
「そうですかそうですか!あっはははは...」
「あははははは...は...」
「...出発準備に入ります...」
「...はい...お願いします...」
出発30分前の出来事であった...。




