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異世界旅客鉃道就労録  作者: こめひこ
ライハト地方編
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10/37

st.10 生還

 ガキッ


「な、なんだぁ?」


 後ろの方で鈍い音がした。


「ッ!?車掌車がッ!」


「いやー素晴らしい肉体美ですなぁ〜。鋼鉄の車掌車にかぶりつく姿もまた良きですなぁ〜。」


「ああ!前回いたのに名前が思い出せない!ってかアンタ客車に帰れよ!?」


 ってそんな場合じゃねぇ!!


「佐伯ぃぃぃ!!小川町ぃぃぃ!!無事かぁぁぁ!?」


 その時!突然車掌車からまばゆい光が放たれた!!


バオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!!


 アースドラゴンが飛び退いて尻餅をつくと、次の瞬間には吐瀉物が奴に降りかかっていた。


『「おえええぇぇぇぇぇぇ!!!!」』


「小川町ぃぃぃ!?」


 なぜ吐いた!?


『「アースドラゴンの!口の中がマジでくせぇんだよぉぉぉぉおおえええぇぇぇぇぇええぇぇ!!!」』


「そんなことより何があった!?」


『「ドラゴンが噛み付いてきた瞬間になんか変な光?が現れて、飛び退いたんですよ!」』


「なんか知らんがとりあえずわかった!とりあえずはこのままキャノンを使って凌いでくれ!」


『「えーとぉ、そのことなんですけどねぇ...かくかくしかじかでしてぇ...」』


「なに!?車掌車の中にしか発射スイッチがなく、そのスイッチを押す佐伯から応答がないだって!?」


『「かくかくしかじかの意味!」』


「仕方ねぇから俺が確認する!一旦待ってろ!」


 ああでも!機関車を放っておくってのは...!


「あのー、私がみてきましょうか?帰るとこですし。」


「いいんですか?ヒューストンさん!?」


 ってかやっと思い出せた!


「ええ、ええ。いいですいいです。じゃ、行ってきますですー。」


 手を振りながら考えた。


(行ってきますってこたぁただいまもあるってことか...?)


 冷や汗がでこを伝った。


ーーーーーーーーーーー


「大丈夫ですか?意識、ありますですか?」


 うーん、一体何が...ってお!?


「誰!?」


「ああ、よかった!このまま気がつかなかったらどうしようかと...あ、申し遅れましたです。私、ジョン・ヒューストンと申しますです。八坂さんに言われて起こしにきましたです。」


「あ、ああ、そうですか...」


「とりあえず客車に帰るとしましょうか。と、その前にこれをあげますです。」


 ヒューストンさんが分厚い本を取り出して椅子の上に置いた。


「これでよっし!みたところこの椅子、アナタの身長にしては座面が低いです。この本置けばちょうど良くなりますです。」


「は、はぁ。ありがとうございます...?」


「それではまた今度。」


 彼はそのまま普通客車に戻って行った。


『「おお!佐伯起きたか!」』


「私は大丈夫!瑛二は!?」


『「こっちゃもうやばいって!早く発射スイッチ押してくれよ!!」』


「わかった!いくよ!」


 拳をスイッチに叩きつける。その瞬間に一筋の閃光が眼球を貫いた!


「まぶし...」


ボァァァァアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!


 ドラゴンの咆哮、いや、無念の叫びがあたり一体に響き渡り、執拗に追いかけてきた恐怖は瞬く間に地平線の彼方へと消えた...。


「お、終わったの...?」


 金属の擦れる音がして徐々に椅子が降りてきた。


「いやー参った参った。死ぬかと思ったぜ全く...」


「お疲れ様!」


『「おうおう!終ったみてぇだな。この後は普通の速度に戻して目的地に行こうと思う。小川町は安全確認頼むぜ。ああ、佐伯はアナウンス頼む。」』


「「了解!」」


 その時、車掌室の扉を誰かがノックした。


「あの...雑巾をもらえないでしょうか...?」


 普通の女性だった。


「どうかされましたか?」


「いえ!あの、息子が...ドラゴンを見たショックで...」


「ショックで...?」


 女性は顔を手で隠しながら言った。


「ショックで...お漏らし...を...!ああ恥ずかしい!顔から火が出るようだわ!!」


「いや出てる出てる!手からだけど火が出てますって!火炎魔法でことわざ再現しないで!」


 雑巾を渡すと女性は笑顔で言った。


「先ほどのはちょっとしたジョークですの。お気に召されました?」


 佐伯が聞いた。


「お仕事は何を?」


「ドルメンニの外交官ですわ!今日はアウシュッシュで仕事があるんです。」


(曲馬団に入った方が良かったのでは...?)


「それでは失礼して...」


 女性が出ようとした瞬間、人が大量に車掌室に雪崩れ込んできた!


「雑巾くれ雑巾!!」


「こっちもだ!!」


「俺んとこにも頼むぜ!!」


「10枚くれ!!」


 後ろからくるものは前の惨状を知らず、前へと行くものは戻ることを知らない。芋洗が如き大混雑!


「ちょっとまって!みなさん何があったんです!?」


 全員が笑いながら叫んだ。


『ツレが酔ってゲロった!!』


 ・・・えーとー・・・まーぢでー?この人数からすると...車内...一体...吐瀉物まみれ...


「雑巾あげるから早く拭きなさーーーい!!!自分たちの服も雑巾にするのよ!!」


『ラジャァァァァ!!!』


「瑛二も!車内の消毒に行って!早く!」


「お、オケオケ!」


『「なんかあったか!?」』


「八坂さん!乗客がさっきの運転で吐いたらしいんです!それもたぁぁいりょうに!!」


『「ふぁ!?」』


「今瑛二も消毒に向かわせてますけど...」


『「ゲロのない車両があったらそこに吐いたやつ以外できるだけ集めろ!次の街まで20分弱だからなんとか辛抱してくれ!」』


 あーもう!なんて日だ!!


ーーーーーー

 数分後

ーーーーーー


『「お客様にご案内します。まもなく、エラール中央北方地方都市、ゲンテル王国ユーゲル市、ユーゲルに到着します。北東の山、エンバス山の湧水と、放牧で育ったユーゲル牛が有名です。ユーゲル駅ではユーゲル市鉄アルヴラ線、ヤマド線にお乗り換えができます。お降りのお客様は、お忘れ物の無いようご注意ください。ユーゲル駅到着です。」』


 放送の終了と同時に汽車がホームに滑り込む。ブレーキを少しづつ弱くして、ゆっくりと停車した。


「あああぁぁぁ!づいだぁぁぁ!!づがれだぁぁぁ!!」


「ほんっとに今回は死ぬかと思った...ってかバリアなきゃ死んでた...」


「二人ともー!お疲れ様ー!」


 代家車から佐伯が出てきた。


「駅員さんがいってたけど、30分早く着いちゃったらしくて...」


「んじゃぁ約束通り甘いものでも食うか!...八坂さん...やっぱりねぇ?」


 おいおいなんだその目は!まさかとは思うが...!

八坂:次回!「とても短い話です!」ぜひ読んでくれ!


小川町:いやサブタイトルテキトーやなぁ!!

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