第71話 動き出す魔軍
更新が遅れに遅れて申し訳ありません。
拉致監禁……もとい、急な泊まり込みやらで、ちょっと自宅に帰れませんでして(汗)
主人公の視点 → 宮廷召喚術師の視点となります。
俺は頭を抱えたい気分だった。
咄嗟のこととは言え、百腕巨人ごと、あの召喚術師を灼き尽くしてしまったのだ。
確かに、彼が口にしていた「偉大なる御方」なる言葉など、いろいろと問い質したいこともあった。
だが、それ以前に、同じ人間を死に至らしめたと言う事実が重くのしかかってきたのだ。
小鬼など、人型の魔物を殺すことには耐性ができてはきたが、やはりと言うべきか、魔物と人間では罪悪感がまるで異なる。
『主よ、いわゆる緊急避難というやつです。あまり、悩まれることはないかと』
グランボルグが慰めるように言ってきた。
たしかに理屈ではわかっているのだが、そう簡単に割り切れるものではない。
『それに、百腕巨人と化した時点で、あの者は完全に取り込まれておりました。自業自得とはいえ、いずれにせよ、救う方法は無かったのです』
「そうなんだろうけど……いや、そうだな」
俺は諦めの感情と共に、現実を受け入れることにした。
とはいえ、忘れられるものなら、忘れてしまいたいことではある。
『それについては、主の望み通りとなります。いえ、むしろ、記憶の一部は、今まで通りに封印させて頂きます』
「はい?」
『その、機密保持の為です。創造者より、そのように指示を受けておりますゆえ、我としても、如何ともしがたく……』
「つか、これまでも記憶がとんでいるのは、そのせいかよ」
『はい。あの薬師などは、何か勘違いをしているようですが、これは、言わば“仕様”でして』
「仕様、ねえ」
まあ、俺の記憶にある語彙を使って、わかりやすく説明してくれるのはありがたいのだが、異世界の存在が、そんな言い回しをするのはなんとも興ざめである。
「だったら、オリヴァーさんに、そう言って説明してくれよ。その勘違いとやらが、まともな結果になりそうもないんだが」
『恐れながら、我とコミュニケーションを取れるのは主のみなれば』
「だから、その言い回しを……はあ、ま、いいか」
それにしても、いかにセキュリティのためとはいえ、少し度が過ぎていると思わなくも無い。
元の世界で聞きかじったところによると、仮想通貨なんかで幾重にもパスワードをかけたはいいが、そのパスワードを忘れてしまって、どうにもならなくなったなどという話もあるし、某リンゴの製品なんかでも、一時期は、秘密の質問に対する答えを忘れると大変なことになったそうだし。
「そんなんで、よくまあ、ここまで色々と揃ったよな」
灰色の野良着はともかくとして、補助のベルトに、〈証の短剣〉なる短剣と鞘のセットに、神酒、そして、究極上位種専用の武装ときたもんだ。
『さようですな。その意味では、主の持つ“縁を引き寄せる力”はただごとではありません。さすがは、あの方の――いえ、これ以上は機密に触れますゆえ、ご容赦を』
「あの方? てか、お前、何か知ってるのか?」
『あー、残念ですが、そろそろ神酒も切れる頃ですな。もう少し、熟成が必要かと』
「おい、ごまかすな」
『では、主よ。再び会えますことを』
「ゴラァ、待て……」
グランボルグの、意外に軽いノリであしらわれた俺の意識は、そこで途絶えることとなった。
◇◆◇
盾の城塞。
〈大地の勇者〉率いる土属性魔法の使い手や、鍛冶士を始めとする技術者集団によってバスルの荒野に建造された堅牢な城塞は、その名とは裏腹に、前線基地ではなく後方支援の拠点たることを目的としている。
主に大陸沿岸部をその版図とする連合諸国にとって、内陸部の入り口にあたるバスルはあまりにも遠い。
従って物資集積の拠点として、まず盾の城塞を構築し、各国との物資流通の交通網を整備する一方で、ここを足がかりとして、前線基地である剣の城塞、槍の城塞、弓の城塞の三つを順次、築いていくというのが、アンベルクの軍務卿たるジークベルト将軍が描いていた当初の構想であった。
バスルからアハンガラン山脈までは遠く、カラクルに至っては遙か彼方という距離だ。
いかな魔物の軍勢とはいえ、この距離と地形を踏破するには一年以上を要するとみられており、こちらも一年をかけて、十分な防衛線を構築するべく、諸々の計画が練られていた。
むろん、本来であれば、たった一年で整備された交通網と三つの城塞を築くなどは無謀の極みであるが、〈七大の勇者〉、とりわけ〈大地の勇者〉の能力があれば不可能では無いと思われていた。
だが、その計画は、思ってもみなかった要因で、完全に停滞することとなった。
「ですから、後方支援の拠点ということは、〈紫の騎士団〉の管轄でしょう」
「いや、全体を統括する〈白の騎士団〉こそ、盾の城塞を管理下におくべきだ」
バスルに至る行軍の間は、それなりに協調していた〈白の騎士団〉と〈紫の騎士団〉、正確には宮廷貴族からなる近衛騎士と、神殿から派遣された神殿騎士が、ここにきて対立したのだ。
軍務卿はうかつにも思い至らなかったようだが、軍事的に物資集積の拠点と位置づけられた盾の城塞を管轄するということは、つまりは、各国からの流通に関わる利権を一手に握ることでもある。
各国の宮廷貴族達と、国家を跨がった組織である神殿との、これは利権を巡っての内部対立であった。
本来であれば、〈白の騎士団〉と〈紫の騎士団〉の旗頭であるレイカとミホが、このような議論に終止符を打つべきなのだろう。
だが、こうした利権絡みの話に口を出すには、彼女達はまだ若すぎた。
あの保護した子供達を人質に取られている格好でもあり、軍事面はともかく、政治的には著しい掣肘を受けていることもあって、こうした局面では彼女達は中立的な立場を貫いている。
「まあ、あの粘り強さと不退転の姿勢を戦場でも見せてくれるなら、頼もしいのかもしれんな」
いつ果てるともしれない、大局から見れば不毛としかいえない議論、いや、議論とも言えない口喧嘩に終始したその日の会議が終わり、盾の城塞の一角に設けられた執務室に戻ったジークベルト将軍は皮肉げな笑みを浮かべて言った。
伝令や後方支援といった、極めて重要ながらも戦功とは縁の無い役割を担うであろう〈白の騎士団〉と〈紫の騎士団〉に配慮した当初の組織構成が完全に裏目に出ており、この二つの騎士団が完全に機能しないことには、他の〈七大の騎士団〉も十分な力を発揮できない仕組みができあがっていた。
例の縄張り意識の件もそうだが、ある方向に動き出した組織の流れというものは、その組織を作り上げた当人ですら、是正するのは極めて困難なようだ。
ジークベルト将軍としても、〈白〉と〈紫〉の二つの騎士団が手元から離れた時点で、伝令や補給に関する検討を参謀達に命じたわけであるが、実務レベルの段階でいろいろと横槍が入り、どうにもならないようなのだ。
かくして、バスルに集結した、モトル、グルイア、ナドラグの東方三ヵ国、西の大国シャンドラ、そして、ズレーニン、トポラ、シュハーザ、セケドといった、プレニツァとカブルーンを除く各国から派遣された兵力は、〈七大の騎士団〉に編成された直後から機能不全に陥っている状態だ。
例外と言えるのは〈黒の騎士団〉だろう。
独立部隊扱いとなっている彼らは、〈冥闇の勇者〉であるタケフミの政治的な影響力を駆使し、神殿や各国の宮廷貴族とも何らかの取引を行った様子で、バスルに集結した諸国連合軍から闇属性魔法の使い手を糾合し、一つの勢力を築きつつあった。
「良きにつけ悪しきにつけ、なかなかの遣り手だという点は認めざるを得んな」
とは、ポルタバ辺境伯の、タケフミに対する評価である。
ちなみに、この広い部屋には、宮廷召喚術師である私以外に辺境伯とドロテア魔術師長がいる。
そのドロテア魔術師長が何かを考え込むふうに言った。
「伝承によれば、過去の戦いにおいて、陣頭で指揮を取る〈光輝の勇者〉を、〈冥闇の勇者〉が文字通りに陰から支えたそうですが」
確かに、人の上に立つ資質に恵まれたレイカと、裏からの策謀に秀でた才能を示すタケフミの組み合わせは、上手く機能すれば極めて強力なものとなるはずだ。
妖艶な魔導師の長は、永らく抱いていたであろう、ひとつの疑問を口にした。
「光と闇は対となるもの。本来であれば、〈火炎の勇者〉と〈氷雪の勇者〉のような関係になると我ら魔導師達は考えておりました。ですが、今のところでは、〈冥闇の勇者〉が好意を示すことはあれども、〈光輝の勇者〉が意に介した様子が見えません。そう、魔法属性の相性が、何らかの要因で上手く噛み合っていないような印象を受けます」
「儂の見るところ、あのレイカという娘は、タケフミでは無く、別の誰かを意識しているようだがな」
無骨一辺倒という外見のポルタバ辺境伯が、男女の細やかな機微に関して口にするのを聞いて、私は危うく「うげ」と叫ぶところだった。
バスルに来てより一緒に過ごすことの多い同門達、とりわけ兄弟子たるマチアスからの、煩わしいまでの『指導』が無ければ、あるいは、そんな無作法を披露してしまったかもしれない。
ともあれ、辺境における武の代表者が意外な詩才の持ち主であると、不肖の弟弟子のバルテルが言っていたのは、単なる与太話などではなかったようだ。
そのポルタバ辺境伯は、一転して散文的な実務者としての意見を述べた。
「ともあれ、このままでは埒があかんぞ。計画は大幅に遅滞しておる。今の段階でさえ、少なくとも、弓の城塞か槍の城塞のいずれかは諦めねばならんというのに」
軍務卿達も、盾の城塞の管轄を〈白の騎士団〉と〈紫の騎士団〉の共同管理という形にするということでお互いの妥協を引き出すことを試みたのだ。
しかし、この案に対しては、宮廷貴族達の消極的賛意は得られたものの、神殿側が一歩も譲る気配を見せなかった為、交渉が決裂して今に至る。
辺境伯はしみじみとため息交じりに言った。
「神殿の上層部も何を考えて……いや、何も考えておらんな、あれは」
治癒魔法の才と、内部の派閥争いだけで要職を得たのが、今の神殿上層部である。
優れた治癒魔法の使い手は、どこでも手厚く遇されてきた為に、外部との調整や妥協など必要も無く、当然に経験も無い。
従って、思考が完全に内向きとなる。
かくして神殿上層部の構成員は、多少の差はあれど、傲慢かつ硬直した――平たく言うと、もの凄く面倒くさい連中と成り果てているのだ。
例えばプレニツァでは、かの名高いアナベラ王妃と当時の神官長が衝突した為、神殿は全てを引き上げたという経緯がある。
アンベルクの神官長であるディートハルトなどは比較的マシなほうだろう。
「何にせよ、要は補給に伴う流通の利権などというものが無くなれば良いのだが……」
そう言った辺境伯の視線を受けて、ドロテア魔術師長が頭を下げた。
「申し訳ございません。かの転移魔法については、未だ目処が立ちませぬ」
魔術師長が口にしているのは、最近になって商人ギルドで使われ出した転移魔法の魔法陣だ。
あの小鬼討伐では、緊急避難の為に転移魔法を封じたプロムベが、ごく少数ながら配備されたが、あれは言わば特注品だそうで、そうそう使えるものでは無い。
だが、商人ギルドには、転移する対象を制限することによって、簡易な転移魔法を実現できる魔法陣が、いつの間にか出回っていた。
その魔法陣を密かに取り寄せ、補給物資の移送に使えないか、宮廷の魔導師達が日夜研究しているのだそうだが、現状では、一度に転移できる量が小麦にして一袋程度で、また三日に一回しか使用できないとなれば、とてもではないが、軍用としては使い物にならない。
数を増やすことで補うことも検討しているが、なにぶんにも、禁断魔法である時空魔法の流れにあるものであり、術式も複雑極まりないということで、量産するのも難航しているそうだ。
「その魔法陣も、かのプロムベも、ある魔導職人が造りだしたもので、その人物の協力無しには難しいとのことでしたが……」
話によると、その人物はかなり奇矯な性格の持ち主であったようで、対応にあたった文官の態度にすっかりへそを曲げて、行方をくらましているそうだ。
「天才とは、そのようなものかもしれんな。ともあれ、そやつの行方を捜すことが先決か」
ポルタバ辺境伯は肩をすくめて、その話はいったん区切ることにしたようだ。
「そういえば、カブルーンからの連絡はどうなっておる?」
今度はジークベルト将軍に向かって、未だに兵力を派遣していないカブルーンの状況を尋ねてきた。
「相変わらずだ。先ほど届いた伝書鳩の書簡も、兵力の再編中との一点張りだ」
「ふん、火事場泥棒のような真似をしおった挙げ句に、コテンパンに反撃されたとあっては、面目が無くて出てこれぬのであろう」
巨人族の暴走によって甚大な被害を受けたプレニツァに、カブルーンが進軍したという話は、アンベルクの軍首脳だけに留めている。
カブルーンの行為は、明らかな盟約違反であり、本来であれば諸国連合に諮って懲罰軍を派遣するところだ。
しかし、魔物の軍勢という間近に迫った脅威の前に、お互いに争う時では無いとの、これは被害国である筈のプレニツァからの申し出によって、現状は処分保留となっている。
「あのアナベラ陛下が王太后として王の代理を務めているのか。いや、さすがというべきだな」
一連の事情を聞いた時、辺境伯は感じ入ったようにうなずいていた。
「儂の身内も関係しているようでな。面倒なあれこれを、後になって言ってきおったが、まあ、アナベラ陛下に免じて事後承諾としてやったわ」
そう応えたジークベルト将軍は、複雑な表情ではあったが、どこか嬉しそうにも見えた。
ちなみに、その事後承諾した諸々の中には、ブラーシュ騎士団を支援の為、プレニツァに派遣することも含まれていたそうだ。
このような国家間でのやりとりは、原則として、国王の承認に基づく外務卿の専権事項である。
だが、軍事面に限って言えば、二百人規模――偵察や伝令、治安維持を行う程度の兵力は、軍務卿が独自の判断で国外に派遣できることもあって、これも承諾したということだ。
伝書鳩による書簡は、カブルーンだけではなく、そのプレニツァからも届いている旨をジークベルト将軍は口にした。
「先に申し出のあった、兵力派遣の代替となる物資供出の連絡だ」
「ほう。それは願っても無い話だ。あの連中のおかげで補給も滞っている始末だからな」
思わずといった風情で相好を崩したポルタバ辺境伯だが、すぐに、その太い眉をひそめた。
「といっても、ろくな兵力も無しに荷駄隊を送るわけにもいくまい。厄介な魔物こそおらぬが、プレニツァから、このバスルまでの道程には、小鬼や犬鬼が出没する場所がいくつもあるぞ」
「よろしければ、私が天馬にて護衛を承りますが」
すかさず、私は協力を申し出た。
実を言えば、バスルにいる部隊の中で、もっとも大食らいなのがアンベルクの召喚獣であり、内心忸怩たるものを感じていたのだ。
他の国にも召喚術師、及び、その召喚獣はいるが、総じて小型の妖精猫や紅玉栗鼠といった、つましい餌で事足りる種族ばかりだ。
飛龍や一角獣は戦力としては頼もしいが、そのぶん、とにかく食う。
いっそ、飛龍あたりに補給物資を運ばせようかとも考えたが、飛行距離を考えると、運んだ物資に倍する餌が必要となる筈なので、さすがにこれは断念した。
それなら、天馬で、とも考えたが、誇り高き聖獣に荷駄運びなどをやらせたら、二度と制御下におくことはかなうまい。
そんなわけで、せめて物資を運んでくるプレニツァからの荷駄隊を支援しようと思ったのだが、ジークベルト将軍は軽く手を振って私の申し出を却下した。
「護衛ならば、ブラーシュ騎士団とプレニツァ兵士からなる混成部隊で充分だそうだ……が、はて?」
プレニツァからの書簡を読み進めていたジークベルト将軍が、不審げな表情となる。
「この日付からいうと、三日前にプレニツァを発ったことになるな。まさか、あのアナベラ陛下が、このような間違いをするとも思えぬが……」
「どうした、ジークベルト」
ポルタバ辺境伯の問いに、将軍は考え込むように言った。
「この書簡によれば、明後日にバスルに到着する予定とのことだ」
「まさか。赤兎馬種を使っても、プレニツァからバスルまで二十日はかかるぞ」
辺境伯が驚くのも無理は無い。
一角獣を全力で走らせても、おおよそ十日はかかる距離である。
荷駄を運ぶ驢馬や、それに徒歩で付き従う兵士の存在を考えると、わずか六日で踏破するなどとは、にわかには信じられない。
だが、プレニツァの中興の祖とも謳われるアナベラ陛下が、そのような間違った内容の書簡を送るなどとは、もっと考えにくい。
私を含め、一同がある種の思考停止状態になったところへ、慌ただしくドアをノックする音がした。
「何事か」
「も、申し上げます」
息せき切ったように、飛び込んできたのは軍務卿麾下にある参謀の一人だった。
その後には、強張った表情の〈光輝の勇者〉も続いていた。
「魔軍の動きに再び変化がありました」
参謀がそう言うが早いか、レイカが遠見魔法を行使した。
彼女の手による光のウィンドウに、遙か彼方ともいうべきカラクルの光景が映し出される。
「む!」
「これは……」
不気味なまでに整然としていた魔物の軍勢が、見違えたように動いていた。
「いつぞやとは様子が違うな」
ジークベルト将軍が言うのは、先日の魔軍の動きだろう。
暦とつきあわせると、カブルーンがプレニツァに進軍し、反撃された頃とも重なるようだが、その時にも整然としていた魔軍が慌ただしく動いたのだ。
ただそれは、ひどく混乱しているようにも見えたのだが、今回の動きはまるで異なる。
これは著しく活発化しているというべきだろうか。
「うーむ、儂には陣形を再編しているようにも見えるぞ」
ポルタバ辺境伯が自分の見解を述べた時、一体の魔物を中心に巨大な魔法陣が展開した。
「あれは!?」
「獅蠍か」
そう、その魔法陣の中心にいるのは、老人のような頭部と獅子にも似た身体に蠍の尾を持つ、上位種とされる中でも、ひときわ強力な魔物だった。
『賢者たる猛獣』とも呼ばれ、人語を解する程度に知能が高く、治癒魔法を含むいくつかの上級魔法を駆使する上に、極めて頑健な身体の持ち主であって、厄介と言えばこれほど厄介な魔物もいないだろう。
その獅蠍を中心として、魔物の軍勢の、おおよそ一割ほどを囲む規模で、魔法陣が展開されているのだ。
「あ、あの魔法陣は!!」
ドロテア魔術師長が、切迫した声をあげた。
「まさか、転移魔法!?」
「〈光輝の勇者〉どの。盾の城塞の外を映し出してくれ」
ジークベルト将軍が咄嗟に出した指示に応じて、レイカがもう一つのウィンドウを開いた。
すぐさま、盾の城塞の前に広がるバスルの荒野が映し出される。
「むう……」
ポルタバ辺境伯の唸るような声を聞きながら、私は目を見張っていた。
荒野の遙か向こう側ではあったが、そこにも巨大な魔法陣が展開されていたのだ。
そして、カラクルの映像から獅蠍達の姿が消えると同時に、新たなウィンドウに、全く同じ魔物達が姿を現した。
「出陣の用意だ。急げ!」
ジークベルト将軍の命令よりやや遅れて、盾の城塞じゅうに危急を告げる鐘が乱打されたのだった。
次回
『第72話 強襲の獅蠍』
4/8 を予定しておりますが、これも少し遅れるかもです。
なにとぞ、ご理解をお願い申し上げます。m(_ _;m




