第65話 迷宮の管理者
邪精霊系に分類される呪屍は、外見上は最も忌まわしく、冒涜的とすら言える魔物の一つだが、その実態は、いわゆる「動く死体」とは少し異なる。
どちらかというと、妖鳥や妖蛇などの擬態種に近い存在で、邪精霊が瘴気を集めて人間を模造したシロモノだ。
「あるいは、古代の錬金術師による人造人間の方がもっと近いかな。つまり、腐爛死体に見えるあれらは、人間のできそこないということになる」
鼻と口元を布で覆いつつ、さすがに辟易した表情を浮かべていたが、オリヴァーさんは淡々とした口調で、そんなことを教えてくれた。
たしかに、この迷宮に出入りしたのは、少なくともここ数年では、フィンレイと俺達くらいのものだ。
過去にここで死んだ人間がいたとしても、とっくに白骨化している筈で、あんな腐爛状態であるのは不自然だ。
「オムー文明の魔導学者どもにも、人工的な人間を主題としておった連中がおったな。いくつかの方向から研究しておったが、アレもその一つかもしれん。男女がいたすことをいたせば、勝手にできるものをな」
ノインも鼻をつまみながら、うんざりした表情で、そう言った。
その呪屍も、これだけ大量に出てくるということは、核となる邪精霊も自然発生的なものではなく、オムー文明の技術によって、人工的に生み出されたものと考えた方がよさそうだ。
「魔導的な技術はともかく、ワタクシの品性とは相容れないセンスですわね。本当にお下劣極まりない」
妙に光沢のあるハンカチを、同じく鼻と口元に当てたローラ嬢も、げっそりした表情をあからさまにしている。
つか、そのハンカチは斑土蜘蛛の糸で織られているんじゃないか?
俺が恐る恐る訪ねてみると、ローラ嬢は軽く目を見開いた。
「あら、一目でわかるなんて、さすがですわね。ちょっと前に出回ったのを、全部ワタクシが買い占めましたのよ」
斑土蜘蛛の糸は、伝説的といって良い素材のはずだが、売却後にあまり噂を聞かないと思っていたら、そういうことになっていたのか。
それにしても、引く手あまただっただろうし、金額も天文学的になったはずだが……。
そんな疑問にローラ嬢は、あっさりと応えた。
「転移魔法のノウハウと引き換えでしたけれどもね」
最近になって、ボツボツとアンベルクのあちらこちらに、商人ギルドによって転移魔法のゲートが作られるようになったのは、ローラ嬢のノウハウが元になっているようだ。
ローラ嬢のオリジナルに比べて、魔力の規模が小さく、人間の移動や大量の物資移送は無理な上にバカ高い使用料を取られるので、あまり一般的ではないが、緊急度の高い取引などには、ちょくちょく使われているようだ。
ちなみに、ガイナス導師の店にも、ローラ嬢によって、こっそりと小さなゲートが設置されており、これを使ってホワイトブランデーを引き渡しているのだ。
以前に住んでいた界隈の、例の宿屋兼居酒屋には、ガイナス導師から卸してもらっている。
「まあ、その価値はありましたわ。手触りは極上で、耐久度も極めて頑丈。ワタクシの下着や衣服に、これ以上の素材はありませんもの。それまでは何かと裂けていましたけど、そんなことも無くなりましたの。みだりにお肌を露出するようなハシタナイ真似は、乙女としてどうかと思っていましたけれども、おかげで、無事解消ですわ」
伝説的な素材である斑土蜘蛛の糸は、じつのところ、加工も難しい。
艶があり、つまりは、摩擦係数が極めて少なく、しかも優れた剛性があるので、編み込むのも切断するのも厄介なようだ。
俺の〈使い魔〉であるヴァルガンは、器用にも、あっさりとレース編みなんぞをしていたが、アンベルクの魔導職人が布地にしようと挑戦して、ことごとく挫折したそうで、なんとかできるのは、ローラ嬢くらいのものだったようだ。
いかに希少価値があろうとも、商品化できなければ意味が無い。
流動性の無い資産よりも、金を生み出す技術を選択したルオウ商会――ゴッドリープが取引した相手は、その点では、根っからの商人だったと言える。
そんな会話をのんびりとしている俺達の横で、〈暁の翼〉の面々とトゥーラさんが聖水に浸した矢を次々と放っており、それを受けた呪屍達は、直ぐさま塵のように崩れていく。
ローラ嬢が浮かべている魔法具の灯りには、聖属性魔法も使われているとの事で、その効果が及ぶ範囲に呪屍達は近づけないでいる。
臭気はともかく、バイオなゲームよりもチョロい感じだ。
フィンレイの情報に基づく、事前準備は万端というところだろう。
そんな状況なので、嫌悪感はともかく、危機感は今ひとつだ。
その雰囲気を感じたのか、リーダーであるエッカルトさんが一喝する。
「油断はできねえぞ。フィンレイが言うには上位種の呪王までいるそうだからな」
呪王には聖水程度では効果が無い。
いちおうは、聖属性魔法を込めた魔法筒や、祝福された武具を複数用意してあるが、けっこう高額なので、使わずに済ませられれば、それにこしたことはない。
聖水を含むこれらの装備は、イルゼ嬢の手配で、プレニツァ王都の冒険者ギルドが〈暁の翼〉の到着に合わせて用意したものだ。
通常は全て買い取りなのだが、未使用分は返金するという契約も、イルゼ嬢の手腕によるところが大きい。
「うん、あのポカをやらかすまでは、けっこう優秀で信頼できる窓口だったのよね。それは認めるわ」
弓に矢をつがえながら、マルタがブツブツと呟いている。
そんなマルタに、こちらもせっせと矢を放ちながらエッカルトさんが言った。
「ま、いつまでも根に持つなんざ、お前らしくないからな。そろそろ勘弁してやったらどうだ」
「あのとき、素直に謝罪してくれたら、とっくにそうしていたわよ。なのに、言い訳ばっかりするんだもの」
俺達の世界でも「謝ったら死ぬ」とでもいうような人々がいる。
高級官僚とか、マスコミとか、日本のエリート層には、そんな手合いが多いようだが、その一方で失敗をしつこく追求する輩もいるわけで、どっちもどっちなのだろう。
直接的な被害を受けたのは〈暁の翼〉のメンバとサポートに入った若干名だが、それ以外の、全く面識も無い冒険者の中に、声高にイルゼ嬢の失敗を追求する輩がいるのは事実だ。
義憤にかられてのことか、ギルド側の過失を追求することで、上納金などを負けさせる打算があるのか、その辺りは判然としないが、当事者以外が出張ってきては、イルゼ嬢も素直に謝るというわけにもいかなかったかもしれない。
いわゆる、大人の事情というやつだ。
魔法が存在するファンタジーっぽい世界であっても、人間社会とは世知辛いものなのかもしれない。
そんなことを考えていると、俺の装備に潜んでいるザガードが一際強い警告を伝えてきた。
そして、マルタが緊張した声を発した。
「出てきたわ。呪王よ」
腐爛死体のような呪屍の中から、木乃伊のような外見をした個体が出てきた。
聖水の矢を平然と跳ね返しているところを見ても、上位種である呪王に間違い無いようだ。
だが、マルタは直ぐに前言を撤回した。
「いえ……呪王とも違うわ。本当の実体がある!?」
確かにザガードやガノンの分析でも、あれは呪王とは違うと言う結論になった。
邪精霊系の魔物は、言ってみれば瘴気の集合体だが、こいつは木乃伊さながらではあるが、肉体があった。
しかも、見慣れない意匠の服を着て、手には巨大な鎌がある。
「ん? 面影に見覚えがある。あれは、実装試験体の十四号ではないか」
ノインが驚いたような声を上げた。
「実装試験体って、ここの主だったとかいうやつか?」
「うむ。意識の方は、フィンレイの方に移っておるから、その抜け殻じゃな。いや、相当に絞り取ったと言っておったが、それで腐りもせずに残ってのか。というか、フィンレイの奴め、邪精霊が仕掛けてある場所で、遺体をそのままにしたのか」
どうやら、実装試験体の遺体に、邪精霊が入り込んだ、こちらは文字通りの動く死体ということになる。
「うーむ。十四号は、死霊術の被検体でもあったか。魔導学者どもめ、それゆえ、あやつをこのような場所に封じたのか」
ノインが呻るような声で、忌々しそうに言った。
人間や動物の死骸に魔法陣を刻み、邪精霊を取り憑かせて操る禁術は、今では完全に途絶しているが、オムー文明ではそういった研究もさかんだったのだろう。
その実装試験体の遺骸に向けて、ゴットリープが、聖属性魔法の魔法筒を放ったが、それすらも一向にこたえた様子が無い。
高価な武器は、周囲の呪屍を塵に変えただけだった。
「実装試験体の肉体は、大抵が耐魔法仕様となっておる。内部に潜む邪精霊に当てなければ無意味じゃの」
つまり、ローラ嬢の魔法具による効果も通用しないということだ。
そいつは、呪屍が近寄ることもできなかった一線を、悠然と踏み越えてきた。
「はっ、実体があるってことは、剣が届くってことだな」
そう言い放ち、エッカルトさんが祝福された武具――使い切りの聖剣とでも言うべきものを構えると、滑るような足裁きで肉薄し、真っ向から打ち込んだ。
一対一なら、猪鬼でさえ一撃で倒す剣の使い手とは聞いていたが、素人の俺から見ても、その動きは達人の域にあるようだった。
だが、その打ち込みを肩口に受けても、その木乃伊は平然としていた。
「なんだと?」
愕然となったエッカルトさんだが、咄嗟に飛びすさり、木乃伊の繰り出す巨大な鎌を回避したのは、生き残ることを重要視するガイナス導師の弟子だけのことはある。
そのエッカルトさんをカバーするように、今度は戦槌を手にしたイザークが前に出る。
「あやつの着ている服は、ちょっとやそっとの刃物では通らぬぞ」
とのノインの言葉に、祝福の輝きを失った剣を見やりながら、エッカルトさんがぼやくように言った。
「そいつを早く言ってくれよ」
「刃が通らないなら、ぶちのめすだけ」
ボソリと呟いたイザークが、重量感あふれる戦槌を振り下ろした。
驚いたことに、邪精霊が取り憑いた実装試験体は、巨大な鎌の柄で、その戦槌ごとイザークの巨躯を弾き飛ばしたのだ。
「腐っても実装試験体じゃ。身体能力は妾と同等以上じゃぞ」
なぜか、ノインが勝ち誇ったように言っているが、そんな場合じゃないだろう。
そもそも、腐ってるんじゃなくて、干からびてるわけだし。
それはともかく、耐刃性に優れた装備に、Bクラス冒険者ですら凌駕する身体能力を有する木乃伊とは、実装に厄介な存在である。
「では、これではどうかしら」
ローラ嬢がゴツい手をかざすと、太い指に嵌まっていた指輪から、炎が放たれた。
だが、実装試験体の木乃伊が手にした鎌が、それをあっさりと吸収する。
「あれはオムー文明の対魔法用武具じゃな。ローラ殿の魔法具もなかなかのものじゃが、絶対的に魔力量が足りん。その程度では、まず、通用せんじゃろ」
「くぅう、口惜しいぃっ」
ハンカチを食いちぎらんばかりにして、ローラ嬢が無念の声を上げる。
ローラ嬢の場合、魔法よりも肉弾戦を挑んだ方が相当に威力がありそうだが、それを口にしないくらいの分別は俺にだってある。
そのノインも無念そうに言った。
「妾も化身となるわけにいかん。防衛機構が働いておるということは、この施設の管理頭脳は『生きて』おる。聖双角を顕現すれば、妾が九号だと気づかれてしまう」
なんだかよくわからないが、その管理頭脳と会話できないのだろうか。
「管理頭脳にアクセスできるのは、管理者だけじゃ。おそらくは、十四号が管理者として設定されておろう。そこに、本来は〈ビブリオ〉の管理者たる妾――九号がいるとばれてみろ。ここの管理頭脳は何らかの非常事態と判断するかもしれん。最悪、この施設は、即時に自爆するぞ」
「じゃあ、ここは退却か?」
俺が尋ねると、ノインが首を横に振った。
「ここの邪精霊は、侵入者を撃滅する守護者として配置されておる。逃がしてくれるものではない」
「では私が」
トゥーラさんが背嚢からベルトを出したが、すかさずローラ嬢が止めに入った。
「ここじゃ天井が低すぎよ」
確かに、あの半人半龍の姿は全高がけっこうある。
このベルトには事故を防ぐ安全設計な仕掛けがあるそうなので、ここで使用することはできないようだ。
「ふむ。準備した武具、ローラ殿の魔法具、ノインの化身、〈鋼龍の騎士〉が全て通用しないか、使えないと、そういうことになるわけだな」
オリヴァーさんが落ち着いた声で、現在の状況を整理した。
「そうなると、残る手段は一つだな、コウイチ」
美貌の薬師が万遍の笑みを浮かべ、俺に声をかけた。
さすがに、ここまで信頼されては、応えないわけにはいかない。
俺は一つうなずいて、前に進み出た。
「ちょ、ちょっと。丸腰じゃない。それにオリヴァーもオリヴァーよ、なに考えてんのよ」
それまで口を閉ざしていたクララさんの慌てる声が聞こえたが、オリヴァーさんの態度は揺るがないようだ。
「彼は〈禍神の使徒〉とも戦おうという〈真なる勇者〉だよ。この程度の相手に敗れるはずがあるものか」
「まあ、コウイチだしね」
「同感です」
マルタやカーヤも、オリヴァーさんに同意しているようだ。
俺が〈真なる勇者〉かどうかはともかく、少なくともオリヴァーさんの信頼には応えたい。
それに、衰弱から回復した俺は、またレベルアップしたような感覚がある。
だから『この程度の相手』なら――。
木乃伊とは思えぬスピードで、邪精霊に憑かれた実装試験体が打ちかかってきた。
俺は咄嗟に右腕をかざし、それを受け止めた。
正確には、俺の右腕から上半身を突き出した大鬼もどきが、その大鎌を、いわゆる白刃取りのような形で受け止めていた。
実装試験体は、即座に引こうとしたが、イザークを吹き飛ばした膂力にも、大鎌の刃を挟んだヴァルガンの両手はピクリとも動かない。
加えて、俺自身も根が生えたように、微動だにしない。
あ、いや、足下から雑草もどきが根毛を地面に打ち込み、俺の身体をがっちりと固定しているので、実際には根が生えてはいるわけだが。
そして、向き合ったこの体制なら、俺の切り札が使える。
「グロム」
俺の胸元に顔を出した角鮫もどきが、高圧の水流を放った。
実装試験体は大鎌で吸収しようとしたようだが、ヴァルガンが、その効果を押さえ込んでいるせいで、対魔法用武具とやらも、効果を発動できない。
つか、そんなことまでできるとは、大鬼もどきの器用さも並大抵では無い。
かくして、角鮫もどきの放った水は、実装試験体の顔面を直撃した。
「GuoOOOOOOOOO」
グロムの放った水は狙い通りに鼻や口に当たり、その圧力で体内に入ったらしく、実装試験体は苦悶の叫びを上げた。
グロムが放った水は、装備品にあった聖水を、全て圧縮して転移させたものだ。
これだけ高密度の聖水を、大量に体内に流し込めば、取り憑いた邪精霊も、そりゃあ、苦しいだろう。大鎌を手放し、のたうち回っている。
俺は腰の物入れから、柄の両方に刃のある、例の短剣を取り出した。
「ザガード」
俺の肩口から姿を現した剣牙狼もどきに、それを咥えさせる。
「ヴァルガン」
俺の右腕にあるヴァルガンが、宙に何かの紋様を描いた。
言ってみれば、エア魔法陣とでも言うべきものだったが、書き終えた瞬間だけ、中空に輝く魔法陣がくっきりと浮かび上がった。
俺を介して完全に同調したザガードが、俺の肩口から飛び出して、その魔法陣の輝きを貫いた。
「聖属性魔法!? でも、あんな陣は初めて見ますわ」
ローラ嬢の驚く声が聞こえたようだが、それには構っていられない。
魔法陣の効果で輝きを帯びた短剣を加えたまま、ザガードが縦横無尽に飛び跳ねる。
たとえ、聖水に苦悶していなくとも、その俊敏な動きを捉えることは不可能だったかもしれない。
ザガードの短剣は、幾度も、実装試験体の額を切り刻んだ。
その傷跡は、また、何かの紋様――魔法陣を構成した。
そして、刻まれた魔法陣が光を放ち、実装試験体の肉体が崩れていった。
「やったか」
安堵の息をつこうとした、その瞬間、無機質な女性の声が響き渡った。
「管理者の消失を確認。管理者の消失を確認」
それを聞いたノインの顔色が変わった。
「十四号の遺体を、そのままにしていたのは、この為か」
無機質な声は、なおも続いた。
バイオなゲームにおける、最終段階での時間制限イベントそっくりだ。
「非常事態発生。非常事態発生。この施設は、まもなく自爆シークエンスに入ります。繰り返します。この施設は、まもなく自爆シークエンスに入ります。代替管理者の登録申請は、それまでにお済ませ下さい」
その通告に、ノインは即座に反応した。
「聞こえるか、管理頭脳。妾は実装試験体の九号じゃ。代替管理者として申請する」
その叫びに、しばらくの沈黙があった。
だが、返ってきたのは、拒否の声だった。
「アクセス者を九号と認識。ただし、該当の実装試験体は、〈ビブリオ〉の管理者として登録済。二重登録はできません」
どうやら、ここにノインがいる点は非常事態だとは見なされなかったようだが、既に非常事態モードなので、何の慰めにもならなかった。
「この施設は、まもなく自爆シークエンスに入ります。繰り返します。この施設は、まもなく自爆シークエンスに入ります。代替管理者の登録申請は、それまでにお済ませ下さい」
なおも、無機質な声が繰り返す。
脱出する時間は、ノインの反応を見る限りなさそうだった。
ノイン以外の面々は、状況に理解が追いついていないのか、オリヴァーさんでさえ呆然としている。
不意に、足下を何かがつついているので、見下ろすと、ザガードが短剣を返そうとしていた。
「こんな時に、マメなやつだな」
ザガードから短剣を受け取り――その時になって、ようやく気がついた。
「ええと、ブラーシュ男爵夫人から受け取った、二つの鞘。あれって、この短剣のものじゃないか」
ひょっとすると、現実逃避なんかで、無関係のことに熱心になる心理状態だったのかもしれない。
ともあれ、俺は別の物入れにしまっておいた鞘を取り出すと、その風変わりな短剣に装着してみた。
案の定、短剣の二つの刃は、ぴったりと、その鞘におさまった。
と同時に、何かがカチリとはまったような感じがした。
「有資格者を認識。有資格者を認識。空席の管理者に、自動的に登録します」
突然、それまで同じことを繰り返していた声が、別のことを言うようになった。
「登録を完了しました。当該施設は、新たな管理者の元に運営を再開します。ご命令をどうぞ」
「コウイチ、ここにいる連中を全員ゲスト登録させろ。急げ」
すかさず、ノインが声を張り上げる。
俺は、反射的にその指示に従った。
「えーと、ここにいる人間を、全員ゲスト登録しろ」
「命令受領。ゲスト登録します。合わせて該当者を防衛機構の対象外とする手続きに入ります」
ノインが安堵したように息をはき、その場に座り込んだ。
それを見た他のメンバーも、安心した様子で、やはり、その場に座り込んでしまった。
こうして、俺の二度目となる迷宮探索は、またしても踏破する前に、事実上、コンプリートとなってしまったのだ。
次回
『第66話 亜空間活用の超絶技巧』
2/18の7時更新




