第25話 覚醒する二つの化身
感想欄で朝8時に、との事もありましたが、諸処の事情でこの時間帯でUPします。
主人公以外の視点で始まり、主人公の視点へと続きます。
覚悟を決めて歩みを進めていた私は、ローグと名付けた〈使い魔〉を召喚するコウイチの絶叫を聞いて、思わず振り返った。
おそらくは、あの飛龍もどきで私を逃がそうとしたのだとは瞬時に理解できた。だが、あんな身体で召喚術を使えば、確実に命を落とす。
「この大莫迦もの!」
いくつかの、整合できぬ感情の爆発と共に、そう叫びながら振り向いた私は、その光景に絶句した。
コウイチの腹部――へその下辺りにある魔導点と呼ばれる部位を中心に、見たこともない魔法陣が広がっていた。
そして、コウイチの身体を何かが覆い始めた。と同時に、彼が何かに変わっていく。
彼が召喚すべく呼ばわったのは、飛龍もどきだった。
そして、そこに顕れたのも、これは『飛龍もどき』としか表現できないモノだった。
飛龍を思わせるフォルムで、イザークに匹敵する身長の、人型をした「これ」を何と呼べば良いのか、私にはわからない。
そいつは、ゆっくりと立ち上がると、私を見たようだった。
初めて見る異形の存在だったが、不思議と嫌悪も恐怖も沸いてこない。
それは家族と認めた若者が変じた姿だったからだろうか。
そうだ。これはコウイチに違いなかった。
彼の身に何が起こったのかは不明だが――いや、これこそが、彼の〈勇者〉としての発現なのだろうか。
あまりのことに、思考がまとまらずにいると、コウイチが何かに気づいたように顔を上げた。
はっとしてそちらを見ると、巨大で醜悪な猪の顔をしたものが迫ってくるところだった。
「こ、これが上位猪鬼!?」
やはり、私は知識だけの人間だったようだ。
こんな怪物に触れられたら、いわんや陵辱されるような事になれば、私は瞬時にして気が狂っていただろう。
恐怖と嫌悪に立ちすくむ私の傍を、コウイチがゆっくりと歩き過ぎて行った。
獲物の前に立ちふさがった飛龍のような存在に対して、上位猪鬼は単なる障害物としか感じなかったようだ。
上位猪鬼は何の躊躇いも無く、風の攻性魔法を帯びた咆吼を放ってきた。
自分の獲物も巻き添えをくうことなど、考えもしないらしい。愚鈍とされる猪鬼の性質は、上位種となっても変わらないようだ。
だが、コウイチが変じた「それ」は、背中に折りたたんだ長大な翼を瞬時に広げるや、上位猪鬼が放った風の攻性魔法をあっさりと無効化して見せた。
飛龍も風の魔法を行使する存在である。いや、風の魔法によって自在に天空を駆ける飛龍は、その分野では遙かな上級者と行っても良い。上位猪鬼ごときの風の攻性魔法など、歯牙にもかけないのは当然と言えた。
魔法が通用しないと分かった上位猪鬼は、直接的な暴力に訴えてきた。
即ち、巨大な拳でもって打ちかかってきたのだ。だが、全身を硬い鱗に覆われた「それ」をまともに殴っては、拳のほうが裂けたようだった。
「GuGyaaa」
怒りに地団太を踏む上位猪鬼は、やはり愚鈍な怪物だった。
そんな上位猪鬼に対し、飛龍のようなモノは口蓋を開いたようだった。
「莫迦! やめろ」
私の叫びが聞こえたのか、コウイチは咄嗟に顔の向きを仰角にとった。
世間では誤解されているが、本物の飛龍はブレスを放つなどということは無い。
龍族の中で、ブレスを放つのは真龍に連なる種族だけだ。そして、真龍の力は決して生易しいものではない。
飛龍のようなフォルムをした「それ」が天に向かって口蓋から放ったのは、途方も無い熱量を帯びた輝きだった。
決して至近距離の地上目標に向かって使えるようなシロモノでは無い。
ローグと名付けられた〈使い魔〉が、極めて低出力ながらもブレスを吐くと聞いて、私は内心驚いたものだが、やはり、飛龍のように見えても、その実体は真龍に近しい種族だったわけだ。
あの〈使い魔〉は、その意味でも、名実ともに『飛龍もどき』と言う事になる。
間近で、真龍のブレスを見せつけられた上位猪鬼は腰を抜かしたようだった。
本来なら、ここで一気にたたみ掛けるところだが、コウイチは何か攻めあぐねているように見えた。
彼が現在発現している「それ」は、相手が上位猪鬼といえども、レベルの桁が違いすぎて、かえって手を出しにくいといった様子だった。
たしかに、あのブレスなどの行使は、下手をすれば私は元より、ここいら一帯を巻き込んで焦土としてしまう可能性もある。
真龍とはそのような存在なのだ。
コウイチは少し考え込むようなそぶりを見せ、そして片手を腹部の下――魔導点に当てると、何かを念じたようだった。
次の瞬間、私はまたしても驚くことになった。
再び、あの魔法陣に包まれたコウイチの姿が、瞬時にして一変していたのだ。
それは、既に飛龍と呼べるものではなくなっていた。
振り乱した長髪からは五本の角が生えており、見るからに迫力のある筋肉が全身を鎧っている。彼がヴァルガンと名付けていた大鬼もどきを彷彿とさせる姿だ。
だが、似ているのはそこまでだった。
上位猪鬼を凌ぐほどに大きくなった逆三角形の体躯は、逞しくも、ある種の美しさを感じさせる。
ざんばらな前髪に隠れて顔立ちは不明だが、微かに覗けるあごや口元、鼻筋の造形は端正と言ってもいいだろう。
鬼族と言えば、基本的に醜悪、乃至は不細工であるのが特徴とされるので、「これ」は大鬼と言うよりは、それに近い何かであろう。
つまり、私としては、やはりこれも『大鬼もどき』としか形容のしようが無い。
その形態になったコウイチは、先ほどの返礼とばかりに、凄まじい咆吼を上げた。風の攻性魔法を帯びてこそいなかったが、それは、後ろで聞いている私ですら震え上がるようなものだった。
先ほどブレスを見せつけられた上に、これを真正面からぶつけられた上位猪鬼にしてみれば、たまったものではなかったに違いあるまい。
失禁し、すっかり戦意を喪失した様子であったが、大鬼もどきは容赦しなかった。
ぐいと進み出て、強靱な手で上位猪鬼の頭蓋を掴むと、あっさりと卵のように握り潰してしまったのだ。
大鬼もどきは周囲を睥睨し、他に脅威が無い事を確認するようにも見えた。
そして、脅威が無いと結論づけたのか、張り詰めたものが無くなったかのようにゆっくりと膝をつき、倒れ込んだ。
その身体を三度、あの魔法陣が覆うと、大鬼もどきの身体は光の粒子となって散り始めた。
散りゆく光の粒子の中から、傷一つ無いコウイチの身体が現れたが、それを私が視認できたのは、極めて短い時間だった。
一端は散った光の粒子が、再び彼に纏い付き、次の瞬間には、あの灰色の服に変わったのだ。
「コウイチ!」
私は大きな安堵と共に、彼に駆け寄った。
知り合って、いっしょに暮らし始めてから、さほども経っていない筈なのに、私にとって彼の存在は大きなものとなっていたようだ。
男女間の愛情なるものは理解できないが、彼に対する私の情動は、たぶんそれとは違うものだ。
シャルロッテに対する愛情とも異なるそれは、強いて言えば同胞に対する感情に近いのかもしれない。彼も、そして私も、そのありようは異なるが、この世界では異質な存在であるだろうから。
コウイチを抱き起こした私の顔は、涙で見られたものではなかったかもしれない。
だが、その当人はと言えば、呑気そうに寝ているように見える。
このまま素直に泣き続けるべきか、笑って喜ぶべきか、人の気も知らないでと怒るべきか。
感情と表情の選択に困惑しながらも、私の意識の一部でひどく納得するものがあった。
(そうか。この装備は、その為のものだったのか)
コウイチの召喚対象が、単体では卑小であるのもそれ故なのだろう。であれば、召喚師としての彼は、確かにおちこぼれであるのには間違いない。
彼が本来は何者であるかを確信し、その場に腰を下ろした私は、そっと膝に乗せたコウイチの寝顔に静かに語りかけた。
「…………解読もできないほどに欠損した古文書に、かろうじて名前だけあったのを思い出したよ。そう、確か、魔を鎧いし者だ。員数外の八人目とされた君は、正しくは〈装魔の勇者〉と呼ぶべき存在だったんだね」
そうして、彼を膝枕して、その寝顔を見つめていると、二人分の足音が聞こえてきた。
顔を上げると、エッカルトとイザークが、お互いを支え合うようにして、こちらに歩いてくるところだった。
スキンヘッドの巨漢イザークは例によって無表情だったが、エッカルトは男臭い笑みを浮かべて「よう」と声をかけてきた。
私も笑みを浮かべてそれに応える。
「Cクラスは伊達じゃないね。あれをくらって、よくも無事だったもんだ」
「おうよ、と言いてぇが、正直やばかった。ぶっ飛ばされた瞬間に、治癒ポーションを二、三本飲んだ上に防御用の魔道具を使ってさえ、あちこちの骨がいっちまったよ」
「へぇ、用意周到じゃないか。攻撃は最大の防御って、そっち方面の装備には金をかけなかったくせに」
「例の小鬼討伐騒ぎで懲りたからな。こんな事なら、坊主にも渡しときゃよかったと思ったんだが……その、無事だったんだな」
「この子はこれでも勇者だよ。当たり前じゃないか」
私のその言葉に、エッカルトは複雑な表情になったようだった。
そして、上位猪鬼の死骸に向かって顎をしゃくった。
「こいつも、その勇者殿のしわざかい?」
「さて、どうだろうね」
私がはぐらかすと、エッカルトはその意図をくんでくれたようだった。
「わかった。詳しくは聞かねえが、いずれ話してくれるよな」
「そのうちにね」
エッカルトはひとつうなずくと、イザークに「いくぞ」と言って、そのまま、互いをかばい合うようにして、そこから立ち去っていった。
それを見送った私は、ふと、あることを思い出した。
「そういえば、忘れていたよ。お帰り、コウイチ」
そう言いながら、私は彼の頬に唇を押し当てた。
コウイチが目を覚ましたのは、それから直ぐの事だった。
◇◆◇
なんだか幸せな感覚があったように思え、意識を取り戻した俺が実際に感じたのは、全身を襲う凄まじい激痛だった。
「痛てて」
「大丈夫かい?」
思わず呻くと、心配そうな声が聞こえた。
強烈ではあったが、馴染みのある痛み――たまに全力で運動した後に来る筋肉痛だと言う自覚があったので、そう答えると、今度は呆れたような声が返って来た。
「やっぱり君は鍛錬が足りないね」
目を開けると、声の主――オリヴァーさんの綺麗な顔が、二つの山越しに、覗き込むようにして俺を見ていた。
自分の置かれた体勢が把握できず、一瞬、呆けてしまった。
こ、これって、ひょっとして、オリヴァーさんに膝枕して貰っている?
俺は慌てて起き上がろうとして、再び筋肉痛に呻く羽目になった。
「う~ん、このぶんじゃ、肩を貸しても歩けそうにないね。困ったな。こんなことなら、エッカルト達に残って貰えば……いや、あの二人も辛そうだったしな」
例によって、ブツブツと呟くオリヴァーさんだったが、その中に出てきた名前を聞いて、俺は尋ねずにはいられなかった。
「エッカルトさん、無事だったんですか」
「ああ、イザーク共々、生きていたよ。Cクラスの冒険者ともなれば、魔物に吼えられたくらいじゃ何ともないようだね」
それを聞いて安堵しかけた俺だったが、肝心なことを聞くのを忘れていた。
「あ、あの、上位猪鬼はどうなりました?」
「そこで死んでるよ。ほら」
オリヴァーさんが柔らかい掌で俺の顔をそっと横に向けると、巨大な魔物の死骸らしいものが視野に入ってきた。
「え? 誰が? ああ、エッカルトさん達ですね。凄いな」
「覚えていないのかい? あー、どこまで覚えてるんだい」
そう言われて、記憶を辿るが、上位猪鬼が放った何かに吹き飛ばされて以降のところはよくわからない。
俺がそう言うと、オリヴァーさんは少し考え込んでしまった。
「うーむ。確かに明確な意思に乏しかったようでもあるな。半ば無意識に動いていたと言う事か。だとすると、いささか危険だな。そんな状態で真龍だの、何だのの力を振るわれてはたまったもんじゃない」
今度は、その呟きのほとんどが理解できなかったが、俺は特に気にしなかった。
状況をオリヴァーさんが記憶し、理解しているのであればそれで充分だ。必要があれば、そのうち説明してくれるだろう。
そんな他力本願なことを考えていると、不意に、目の前に輝くものが現れた。麗香が放った光のウィンドウである。
『コウイチさんの装備をトレースして、これを表示しています。十分後に、そちらの状況を確認します』
懐かしい日本語での、麗香からのメッセージだった。
どうやってかは知らないが、この『伝説の布の服』をトレースして、俺の位置を把握しているようだ。
この装備の返却を求められなかったのは、それが理由の一つだったというわけだ。
「ほほう。これが噂の〈光輝の勇者〉からの『めーる』とかいうやつか。この文字は君が持っていた本と同じものだな」
オリヴァーさんは興味津々といった様子で、そのウィンドウを眺めている。
ちなみに、古文書なんかが、じつは日本語で書かれていた……などということも想像してみたわけだが、それほど都合の良いシチュエーションはなかったようだ。
「もうすぐしたら、遠見の魔法で、俺の様子を見るそうです」
それを聞いたとき、オリヴァーさんの綺麗な顔に、獲物を見つけた猫を思わせる表情が浮かんだ。
「ほほう。君の義妹さん達がね。これは挨拶すべきだな」
「ちょ、ちょっと待って下さい。何をするんですか」
オリヴァーさんは、俺の頭を膝からそっと下ろすと、おもむろに俺にくっつくように横になった。
「いや、これじゃあ、少し弱いな」
などと呟くと、俺の身体に抱きつき、そのまま、ぐいと引っ張って、俺を自分に乗せるような格好にする。
つか、知らない人が見たら、これは俺が押し倒している図である。
「ちょ、ちょっと。こんなところを見られたら……」
「いやいや、まだ足りないね」
オリヴァーさんは、俺の片手を掴むと、そのまま自分の豊かな胸の押し当て、もう片方の手を、なんとまくり上げたコルセの裾の下に引き込んだのだ。
おかげで、先日とは異なり、彼女がきちんと下着をつけている事は確認できたが……いや、そんな問題じゃない。
「う~ん、下着をずらす……いや、いっそ下着の中に入れた方がいいかな?」
「どっちもよくありません。どういうつもりなんですか!」
身動きできない俺は泣きそうになっていたかもしれない。
これでは、どう見ても俺がオリヴァーさんを押し倒し、よからぬ事を強いている図にしか見えない。
実際には、「やめて、許して、勘弁して」とわめいているのは、のしかかっている俺の方なのだが、あいにくと〈光輝の勇者〉の遠見といえども音声は拾えないのだ。
「それ」は前触れも無く来た。
風の魔法で空を飛んできた鈴音は、その本来の名称――〈天空の勇者〉としての資質を顕してきたのかもしれない。
ちなみに、〈天空の勇者〉は重力を操る能力も兼ね備えているそうで、確かにそういう事でもなければ、風圧だけで巨岩を吹き飛ばすなどは無理のある話だ。
ともあれ、今の鈴音にとっては、もう一人を伴うなど簡単な話だっただろう。
「光一さん」
鈴音の傍らに降り立った彼女は、にこやかに話しかけてきた。
だが、その眼は、相沢の氷結魔法も裸足で逃げ出すほどに、じつに冷ややかなものだった。
あるいは、冷ややかな視線と言うスキルに関しては、麗香以上のレベルにあったのかもしれない。
「教えて下さるかしら? いったい、そのご婦人と何をしていらっしゃるのかしら」
美人は怒らせると怖い。
義妹の美穗といえども、それは例外ではなかった。
だが、一方の鈴音は小首をかしげている。何か不自然なものを感じている風情だ。
「あ、あのね、美穗。こ、これは……」
状況を説明しようとするが、焦って舌がうまく回らない。
そんな俺を見て、オリヴァーさんは何かを我慢するかのような表情だったが、ついに限界がきたようだった。
オリヴァーさんはゲラゲラと笑いながら、それでもそっと俺を自分の上から下ろした。そして、スカートの裾を下ろして身だしなみを整え、二人の〈勇者〉に向かって頭を下げた。
「不愉快な思いをさせて申し訳なかったが、こうでもしないと来てくれないと思ったものでね」
「どういう事かしら」
未だに不機嫌そうな表情を浮かべる美穗に、オリヴァーさんは軽く肩をすくめて見せた。
「治癒魔法の〈聖祈の勇者〉なら、彼の身体がどういう状況か、わかると思うけどね」
そう言われて、俺を見る美穗の瞳に紫色の輝きが宿ったようにも見えた。
「あらあら。これは……」
「見ての通り、彼は全く身動きできない状態だ。自然回復だと時間がかかりすぎると思うんで、一つ、何とかしてやってくれないかな」
美穗は即座に癒やしの力を振るったようだ。
紫色の波動を受けた俺は、それまで全身を覆っていた筋肉通が嘘のように消えたのを自覚すると、直ぐに身体を起こした。
つまり、美穗の嫉妬心(?)を煽って、ここまで来させる為の方便と言うことか。
それにしても、他に方法はなかったものか。
「それで。あなた、誰よ」
そうオリヴァーさんに問いかける美穗の口調には、未だに棘が含まれている。
見知らぬ人間に対する、美穗の一面を見たような思いだ。
「ああ、挨拶が遅れたな。薬師をやっているオリヴァーと言うものだ。エレオノーラから聞いていないかな」
「オリヴァー? だって、男の人だと……えええ?」
それを聞いた美穗はひどく驚いている様子だったが、驚き方が少しおかしかった。
「凄い。この世界の『男の娘』も侮れないわ。本当に女性にしか見えない」
この義妹は何を言ってるんだ?
「え? てことはさっきの構図って!? いやん、光一さんが、そんな。でも、それはそれ、これはこれ、よね」
美穗は何かのスィッチが入ったようで、上気した表情になって譫言のように呟いている。
「その手があったのね。そうよ、あの親衛隊の連中も色々とカップリングしてあげているのに、いっこうにデキないのは、形が足りないせいだわ」
美穗が率いる〈紫の騎士団〉。その中枢を占める、見目麗しい美青年や美少年で構成された親衛隊の噂は聞いた事がある。
基本的に二人一組を単位とする中隊規模の組織で、美穗がその編成には非常に力を入れていると……いや、深く考えないようにしよう。
「ええ、わかりました、オリヴァーさん。今後とも光一さんをよろしくお願いしますね」
眼を輝かせた美穗が、オリヴァーさんの両手を取ってぶんぶんと振り回すようにしながら言った。
これには、オリヴァーさんも押され気味な様子だった。
「あ、ああ。その、こちらこそ、よろしく」
そんな美穗を片手で指し示しながら、鈴音がもう片方の手で宙に文字を描いていた。
『美穗ちゃん、思い込みが激しいの』
俺は義妹の、箍の外れた腐女子っぷりを見て、頭を抱えたくなった。
それは、この光景をアンベルク宮殿の一室から見ているであろう長女も同じであったようだ。音声は拾えなくても、長いつきあいから、美穗の表情を見れば一目瞭然なのだろう。
不意に二つのウィンドウが現れ、次のようなメッセージが表示された。
『鈴音。いい加減に美穗を連れて帰りなさい』
『光一さん、一週間後にまた』
かくして、二人の義妹は、さほどの時間を経ずして、再び飛翔していってしまった。
オリヴァーさんは、見る見る小さくなっていく二人の姿を見てため息交じりに言った。
「いやはや、さすがは勇者というところか。何というか、凄いものだね、いろんな意味で」
「ええと、その……スミマセン」
俺は他に言い様がなく、とりあえず謝ることにした。
「できれば、〈光輝の勇者〉と語り合えればよかったが。まぁ、こちらも準備不足だ。まずは君の義妹さん達に顔繋ぎできた事で満足としよう。何より、この場所に〈勇者〉が来たと言う事実が重要だ」
上位猪鬼の死骸を示しながら、オリヴァーさんはそう話を結んだ。
その後、ゴットリープ達の要請を受けて現れた騎士団は、上位猪鬼の死骸を見て驚き、ここに〈疾風の勇者〉が飛来した事実を聞いて感嘆し、全てを納得して魔物の死骸を回収して引き上げていった。
どうも、エッカルトさんとは行き違いになったらしい。
俺としては、オリヴァーさんに色々と聞きたい事もあったが、ひどく疲れてもいたので、その日はそれでおしまいにしたのだった。
読んで頂き、ありがとうございます。
ようやく、タイトルに中身が追いつきました。
わかりにくいタイトルでしたが、要するに異世界ファンタジーでの変身ものを書きたかったと言う……。
なお、本日までは日刊ペースで更新致しましたが、リアルの事情(本業、その他)で以降より、更新速度は一気に遅くなります。(次回は2/7の8時)
ご了承下さい。




